前回は、なぜ兄弟姉妹間で相続のトラブルが起きるのか、その理由について解説しました。今回は、不動産と自社株が「負の相続財産」になりやすい理由を見ていきます。

相続人の間で均等に分けにくい「2つの財産」とは?

相続で課税対象となる資産は、預貯金をはじめ、株や投資信託などの金融資産、さらに生命保険や死亡退職金など、実に多様です。

 

こういった資産は、基本的にはそのままの状態でも特に大きな問題につながることは少なく、対策も比較的わかりやすいのですが、「不動産」と「自社株」は違います。放っておくと、相続時に負を招きかねないのです。というのも不動産や自社株は、多くの場合、相続財産として評価額が大きくなるからです。

 

それにもかかわらず、どちらも日常的にその価値を把握しておくことが難しいため、相続を迎えて初めて「納税資金が足りない!」ということで、相続人が途方に暮れるのです。

 

加えてこの2つの財産には、相続人の間で均等には分けにくく、無理に分けてしまうとその価値がなくなってしまう、という厄介な特徴があります。「相続税の納税」と「関係者全員が納得できる分配」という相続最大の課題において、他の財産に比べ、格段に大きな困難を抱えているのです。

 

こういったことから、事前にしっかりとした相続対策を練っておかないと、簡単に負の財産となって、残された家族を苦しめる危険性が本当に高いのです。そんなケースを具体的にご紹介してみましょう。

「先祖代々の土地」は深刻な問題が発生しやすい!?

不動産には被相続人の代で取得されたものがある一方、先祖代々受け継がれてきたものもあります。相続のトラブルについて考えるなら、後者の方がより深刻な問題が発生しやすい、といえるかもしれません。

 

手放せないという思い入れが強い分、収益が悪かったり、活用しづらい物件なのにそのまま承継されていたりする可能性が高いためです。そんな代表例に借地契約を結んでいる貸地があります。古くから借地人が住んでいる物件では、古い契約がそのまま継続されており、賃料も低いままでほとんど更新されていないケースがよく見受けられます。

 

固定資産税などのコストを支払うと、わずかの収益しか残らない、という状態のまま放置されている物件も少なくないのです。ところがそんな土地にもかかわらず、いざ相続するとなると、立地によっては評価額も高く多額の相続税が課されてしまいます。

 

あわてて納税資金をまかなうためにこの土地を売却しようと思っても、借地契約があるため、買い手はほとんど見つかりません。

 

結局、その土地のために、他の優良な土地を手放すことになってしまう、というケースに私たちも何度か出会ってきました。

本連載は、2014年3月20日刊行の書籍『家族と会社を守る「不動産」「自社株」の相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

家族と会社を守る 「不動産」「自社株」の相続対策

家族と会社を守る 「不動産」「自社株」の相続対策

貝原 富美子・澤田 美智

幻冬舎メディアコンサルティング

相続において、トラブルになりやすい二大財産である「不動産」と「自社株」。 税理士として長年、不動産・自社株の相続を専門的に解決してきた著者だからこそいえる、実際にあった事例を交えわかりやすく解決策を提示します…

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