●米レポ金利が先月急騰しFRBは臨時の資金供給でこれを抑制、ただ、この措置は11月まで継続。
●金利急騰の主な理由はFRBのバランスシート縮小による超過準備の急減や金融規制とみられる。
●金利抑制でQE再開なら、流動性相場に回帰し株高も、今月のFOMCでの手掛かり有無に注目。
米レポ金利が先月急騰しFRBは臨時の資金供給でこれを抑制、ただ、この措置は11月まで継続
レポ金利とは、金融機関同士が国債などを担保に、短期金融市場で資金を貸し借りする際の金利です。9月25日付レポート(関連記事:『米短期金利上昇は警戒すべきシグナルか?』)で解説した通り、米国では9月中旬以降、このレポ金利や、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利(金融機関同士が無担保で翌日物の資金を貸し借りする際の金利)が、連日急騰する事態が発生しました。
これを受け、米連邦準備制度理事会(FRB)は9月17日以降、臨時措置として、金融機関に対し国債などを担保に資金供給を行うシステムレポを実施し、金利上昇の抑制に努めました。その結果、レポ金利とFF金利の上昇傾向に、いったん歯止めがかかりました(図表1)。ただ、10月10日までの予定だったシステムレポは、11月4日まで継続されることとなり、FRBは金利の操作に苦労しています。
金利急騰の主な理由はFRBのバランスシート縮小による超過準備の急減や金融規制とみられる
レポ金利などの急騰理由として、主に次の2つが考えられます。1つは、近年のFRBのバランスシート縮小で、超過準備(金融機関がFRBに預け入れ義務のある所要準備を超える余剰資金、FRBが1.8%を付利)が急減し、金融機関によって超過準備にバラつきが生じたことによるものです。つまり、超過準備が依然潤沢な金融機関は市場に資金を出し渋り、そうでない金融機関は資金の調達意欲が強いため、金利は上昇しやすくなります。
もう1つは規制によるものです。米国では金融機関のリスクを測る指標として「流動性カバレッジ比率」が導入されています。これにより、金融機関は高品質の流動資産を、30日間の厳しいストレス環境下で必要とされる流動性以上に、保有することが求められます。超過準備は高品質の流動性資産ですので、金融機関は余剰資金を市場に出すよりも、超過準備で保有した方が、比率が改善します。そのため、比率が集計される四半期末毎に、金利は上昇しやすくなります。
金利抑制でQE再開なら、流動性相場に回帰し株高も、今月のFOMCでの手掛かり有無に注目
以上を踏まえ、レポ金利などの上昇を抑制する方法として、①臨時措置であるシステムレポを常設化する、②金融規制を修正する、③超過準備を増やす、などが挙げられます。①については、具体的な制度設計から実際の運用開始までにはかなりの時間を要すると思われます。②についても、規制の内容自体を修正することになるため、慎重な議論が求められます。
③の具体的な手段は国債の買い入れですが、月間の買い入れ額次第では、過去の量的緩和(QE)と同程度のものとなります。欧州中央銀行(ECB)に続き、FRBもQE再開となれば、流動性相場への回帰と、株価の押し上げ効果が期待されます(図表2)。ただ、このQEの目的は景気刺激ではなく超過準備増加にあるため、やはり相応の議論が必要と考えます。金利上昇の抑制方法については、10月29日、30日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、何らかの方向性が示される可能性があり、注目したいと思います。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米レポ金利の上昇が「株高を促す」のはなぜ?仕組みを解説』を参照)。
(2019年10月8日)
市川雅浩
三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト