2019年8月分「景気動向指数(速報値)」の分析

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

先行CIは前月差▲2.0、一致CIは前月差▲0.3で、ともに2カ月ぶりの下降

 

一致CI・3カ月後方移動平均の前月差は▲1.03、3カ月連続の下降に

 

8月の機械的な基調判断は4カ月ぶりの「悪化」に転じる

 

 

 

 

 

●8月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲2.0ポイント下降し、2カ月ぶりの下降となった。速報値からデータが利用可能な9系列で、新規求人数、マネーストックの2系列が前月差プラス寄与に、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの7系列が前月差マイナス寄与になった。

 

●8月分の一致CIは前月差▲0.4ポイント下降し、2カ月ぶりの下降となった。速報値からデータが利用可能な生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の7系列のうち、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業の3系列が前月差プラス寄与に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の4系列が前月差マイナス寄与になった。

 

●8月分の一致CIの指数水準は2015年=100として99.3となった。なお、直近のピークは17年12月分の105.3で、足元の水準はそれに比べると6.0ポイント低い。18年で最も高かった4月分の104.1に比べ4.8ポイント低い水準である。また、最近で最も低かった19年6月分の99.5に比べ0.2ポイント低い水準である。

 

●一致CIの3カ月後方移動平均は前月差▲1.03ポイントと、3カ月連続の下降になった。7カ月後方移動平均は前月差▲0.16ポイント下降し、10カ月連続の下降になった。

 

 

●8月分の一致CIを使った景気の基調判断は4カ月ぶりの「悪化」に転じた。最近の、一致CIを使った景気の基調判断をみると、19年3月分では景気後退の可能性が高いことを意味する「悪化」に下方修正され、4月分でも「悪化」だったが、5月分で「景気後退の動きが下げ止まっている可能性が高いことを示す」意味を持つ「下げ止まり」に上方修正され、6月分・7月分も同じ判断だった。「下げ止まり」から「悪化」に再び下方修正されるには、「3カ月以上連続して3カ月後方移動平均が下降、かつ当月の前月差の符号がマイナスであること」が条件である。5月分の一致CIの指数水準は、5月1日・2日の祝日に工場を稼働させた企業が結構あったことなどもあり高水準、このため8月分では、3カ月以上連続して一致CIの3カ月後方移動平均が下降という条件は満たしやすかった。また8月の前月差の符号がマイナスになったため、8月分の基調判断は再び「悪化」に転じた。

 

●米中貿易戦争の影響で年明け以降に生産が急減したことなどから、3~4月分と2カ月連続で「悪化」となった。その後、新車販売を含む耐久消費財出荷などがプラスに寄与して「下げ止まり」に戻っていたが、10月の消費税増税前の8月分で景気後退の可能性が高い可能性を示す「悪化」に戻ってしまった。ヒストリカルDIの直近までの動きなどからみて、実際のところは、まだ景気後退局面入りはしていないと思われる。しかし、単純にシグナルをみて、景気後退局面で消費税増税を行ったのではないかという見方も出てこよう。

 

●「悪化」から「下げ止まり」に上方修正されるには、一致CI前月差が上昇、かつ一致CIの3カ月後方移動平均の前月差がプラスに変化し、プラス幅(1カ月、2カ月または3カ月の累計)が振幅目安の+0.90以上になることが必要だ。過去の数字が変わらないことを前提に、仮に一致CI前月差9月分・10月分・11月分が3カ月連続で各々+0.7ポイント上昇すると11月分で3カ月後方移動平均の3カ月の累計が振幅目安の+0.90を上回る+0.93になるが、直ぐに「下げ止まり」に戻ることはなかなか厳しい状況と言えそうだ。

 

 

●8月分の先行DIは11.1%程度と4カ月連続して景気判断の分岐点の50%を下回ると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、新設住宅着工床面積1系列がプラス符号に、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの8系列がマイナス符号になった。

 

●一方、8月分の一致DIは14.3%程度と景気判断の分岐点の50%を3カ月連続して下回ると予測する。速報値からデータが利用可能な生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の7系列のうち、商業販売額指数・小売業1系列がプラス符号に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の6系列がマイナス符号になった。

 

●10月24日発表予定の7月分景気動向指数・改訂値では、先行CIに新たに実質機械受注(製造業)が加わる。機械受注の発表日は10月10日である。また在庫率関連データが10月15日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。

 

●8月分景気動向指数・改訂値では、一致CIは所定外労働時間指数が新たに加わる。7月分速報値の発表日は10月8日、改訂値に使われる確報値の発表は10月23日である。また、生産指数関連データなどが10月15日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。

 

●9月分の先行CIの採用系列で速報値からデータが利用可能な9系列中、現時点で数値が判明しているのは、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの3系列である。このうち日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの3系列が前月差プラス寄与に、消費者態度指数1系列がマイナス寄与になることが判明している。9月分の先行CIは上昇に転じる可能性が現在のところ大きそうだ。

 

●また、9月分の先行DIでは、数値が判明している消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列は、東証株価指数1系列がプラス符号に、消費者態度指数、日経商品指数、中小企業売上げ見通しDIの3系列がマイナス符号になることが判明している。9月分速報値段階の先行DIは11.1%以上66.7%以下になることが確定している。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2019年8月分景気動向指数(速報値)』を参照)。

 

2019年10月7日

 

 

宅森 昭吉

株式会社三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト 

 

株式会社三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト

旧三井銀行(現三井住友銀行)で都市銀行初のマーケットエコノミストを務める。さくら証券チーフエコノミストなどを経て現職。
パイオニアである日本の月次経済指標予測に定評がある。身近な社会データを予告信号とする、経済・金融のナウキャスト的予測手法を開発。その他、「景気ウォッチャー調査」などの開発・改善に取り組んできている。「より正確な景気判断のための経済統計の改善に関する研究会」など政府の経済統計改革にも参画。「景気循環学会」常務理事。
著書に『ジンクスで読む日本経済』(東洋経済新報社)など。

著者紹介

連載【宅森昭吉・理事・チーフ エコノミスト】エコノミックレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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