2019年8月分「鉱工業生産指数・速報値」の分析

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

8月分鉱工業生産指数前月比▲1.2%、経産省先行き試算値最頻値▲0.7%を下回る伸び率

 

9月分を先行き試算値最頻値or予測指数で延長しても、7~9月期の生産は前期比減少の見込み

 

経産省の基調判断は「生産はこのところ弱含み」に先月までの「一進一退」から下方修正

 

8月分景気動向指数の一致CI前月差は下降か、基調判断は「悪化」に下方修正の見込み

 

 

(鉱工業生産)

 

●鉱工業生産指数・8月分速報値・前月比は▲1.2%と2カ月ぶりの減少になった。15年を100とした季節調整値の水準は101.5と、19年6月分(101.4)以来の指数水準になった。また、前年同月比は▲4.7%と2カ月ぶりの減少になった。財務省の8月分輸出数量指数は前月比▲4.2%、前年同月比▲5.9%であり、輸出の弱さが反映されたものとみられる。

 

●8月分鉱工業生産指数では、電子部品・デバイス工業、化学工業(除.無機・有機化学工業・医薬品)、無機・有機化学工業の3業種のみが前月比増加。鉄鋼・非鉄金属工業、生産用機械工業、自動車工業等の12業種が前月比減少だった。

 

●経済産業省は基調判断を4月分以降の「総じてみれば、生産は一進一退」から、8月分で「総じてみれば、生産はこのところ弱含み」に下方修正した。

 

●経済産業省の鉱工業生産指数の先行き試算値は過去の修正パターンを機械的に反映させたものだ。8月分の前月比は最頻値で▲0.7%の減少見込み。90%の確率に収まる範囲は▲1.7%~+0.2%だったが、実績は前月比▲1.2%で、最頻値を下回る伸び率となった。

 

●8月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比▲1.4%で2カ月ぶりの減少となった。前年同月比は▲4.6%で2カ月ぶりの減少となった。指数水準は101.1で19年6月の99.8以来の水準である。

 

●8月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比0.0%と横這いになった。前年同月比は+2.7%と10カ月連続の増加となった。

 

●8月分速報値の鉱工業在庫率指数は、前月比+2.8%で2カ月ぶりの前月比上昇となった。8月分の指数水準は110.5、15年基準で過去最高水準だった6月分の109.8を更新した。

 

●大きな動きをチェックするために、鉱工業全体で縦軸に在庫の前年比を、横軸に出荷の前年比をとった在庫サイクル図をつくると、17年10~12月期で「在庫積み上がり局面」に入った。18年1~3月期から7~9月期まで「在庫積み上がり局面」であった。18年10~12月期は、10~11月分までは出荷の前年同月比が在庫の前年同月比を上回り「在庫積み増し局面」に戻ることが一時的に期待されたものの、最終的には10~12月期全体では出荷の前年同期比が+1.1%、在庫が同+1.7%となり、「在庫積み上がり局面」のままであった。19年1~3月期は出荷の前年同期比が▲1.6%、在庫が同+0.2%、19年4~6月期は出荷の前年同月比が▲2.7%、在庫が同+3.0%と推移した。19年7~8月では出荷の前年同期比が▲1.2%、在庫が同+2.7%と、依然として「在庫積み上がり局面」の状態にあることが確認された。

 

 

●但し、業種によっては明るい変化が見られるものがある、電子部品・デバイス工業の在庫サイクル図をつくると、19年1~3月期は出荷の前年同月比が▲2.5%、在庫の前年同月比が+5.5%で「在庫積み上がり局面」であったが、19年4~6月期は出荷の前年同月比が▲9.2%、在庫が同▲9.7%と「意図せざる在庫減局面」に移行した。19年7~8月では出荷の前年同期比が▲4.1%、在庫が同▲11.2%と、依然として「意図せざる在庫減局面」の状態にあることが確認された。

 

 

●鉱工業生産指数の先行きを製造工業予測指数でみると9月分は前月比+1.9%の増加、10月分は同▲0.5%の減少の見込みである。但し、過去のパターン等で修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、9月分の前月比は最頻値で+0.3%の増加にとどまる見込みになる。90%の確率に収まる範囲は▲0.7%~+1.3%になっている。減少の可能性もあると言うことだろう。

 

●先行きの鉱工業生産指数を、9月分は先行き試算値最頻値前月比(+0.3%)で延長(ケース1)すると、7~9月期の前期比は、▲1.0%と減少になる。また、9月分を製造工業予測指数の前月比(+1.9%)で延長(ケース2)した場合でも、7~9月期の前期比は▲0.5%とこちらも減少になる。このところ鉱工業生産指数は四半期ごとにみると前期比増減を繰り返している。4~6月期が増加だったこともあり、7~9月期は前期比減少になる状況と言えそうだ。

 

●10月分を前月比(▲0.5%:製造工業予測指数)で、11月分・12月分を横這いで延長すると、10~12月期の前期比は、ケース1で▲1.7%に、ケース2で+0.4%になる。このところのパターン通り、鉱工業生産指数の10~12月期が増加になるかどうか、今後の動向を要注視する局面と言えそうだ。

 

(8月分景気動向指数、一致CIは前月差下降、基調判断は「悪化」に下方修正)

 

●8月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲1.9程度と2カ月ぶりの下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列で、9月30日午前9時時点で数値が判明しているのは、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの7系列で、マネーストック1系列が前月差プラス寄与に、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る、新規求人数、新設住宅着工床面積の2系列では、新規求人数1系列が前月差プラス寄与に、新設住宅着工床面積1系列が前月差マイナス寄与になると予測した。

 

●8月分の一致CIは前月差▲0.5程度2カ月ぶりの下降になると予測する。速報値からデータが利用可能な生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の7系列のうち、9月30日午前9時時点で数値が判明しているのは生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の6系列で、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業の3系列が前月差プラス寄与に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、商業販売額指数・卸売業の3系列が前月差マイナス寄与になることが判明している。残る有効求人倍率1系列は前月差マイナス寄与になると予測した。

 

●一致CIを使った景気の基調判断をみると、3月分では景気後退の可能性が高いことを意味する「悪化」に下方修正され、4月分でも「悪化」だったが、5月分で「景気後退の動きが下げ止まっている可能性が高いことを示す」意味を持つ「下げ止まり」に上方修正され、6月分・7月分も同じ判断だった。「下げ止まり」から「悪化」に再び下方修正されるには、「3カ月以上連続して3カ月後方移動平均が下降、かつ当月の前月差の符号がマイナスであること」が必要である。5月分の一致CIの指数水準は、5月1日・2日の祝日に工場を稼働させた企業が結構あったことなどもあり高水準である。このため8月分では、3カ月以上連続して一致CIの3カ月後方移動平均が下降という条件は満たす。また当月の前月差の符号がマイナスになると予測されるため、8月分の基調判断は「悪化」に転じるものと予測される。

 

●8月分の先行DIは11.1%程度と4カ月連続して景気判断の分岐点の50%を下回ると予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、9月30日午前9時時点で数値が判明しているのは最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの7系列で、全系列がマイナス符号になることが判明している。先行DIは0.0%以上22.2%以下と50%割れとなることが確定している。残る2系列の新規求人数、新設住宅着工床面積では、新設住宅着工床面積1系列がプラス符号に、新規求人数1系列がマイナス符号になると予測した。

 

●8月分の一致DIは14.3%程度と景気判断の分岐点の50%を3カ月連続して下回ると予測する。速報値からデータが利用可能な生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の7系列のうち、9月30日午前9時時点で数値が判明しているのは生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の6系列で、商業販売額指数・小売業1系列がプラス符号に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業の5系列がマイナス符号になることが判明している。残る有効求人倍率1系列がマイナス符号になると予測した。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2019年8月分鉱工業生産指数・速報値について』を参照)。

 

2019年9月30日

 

 

宅森 昭吉

株式会社三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト 

 

株式会社三井住友DSアセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト

旧三井銀行(現三井住友銀行)で都市銀行初のマーケットエコノミストを務める。さくら証券チーフエコノミストなどを経て現職。
パイオニアである日本の月次経済指標予測に定評がある。身近な社会データを予告信号とする、経済・金融のナウキャスト的予測手法を開発。その他、「景気ウォッチャー調査」などの開発・改善に取り組んできている。「より正確な景気判断のための経済統計の改善に関する研究会」など政府の経済統計改革にも参画。「景気循環学会」常務理事。
著書に『ジンクスで読む日本経済』(東洋経済新報社)など。

著者紹介

連載【宅森昭吉・理事・チーフ エコノミスト】エコノミックレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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