「親の仕事観」で、子どもの「将来の年収」が決まるワケ

貧富の差がますます激しくなる日本。子どもが将来稼げる人になって欲しい、というのは、親にとって切なる願いともいえますが、「良い仕事に就け」と闇雲に伝えるだけではいけません。それよりも、親の「仕事観」を伝えることが重要です。そこで本連載では、公認会計士林總事務所代表・林總氏の著書『年収1000万円 「稼げる子」の育て方』(文響社)より一部を抜粋し、令和時代を生きぬく子どもの育て方を解説します。

仕事観を「言葉」で示さなければ伝わらない

教育観やお金の使い方については、親自身の生活態度そのもので見せていこう、というのが私の考え方です。では、「仕事観」はどうでしょうか。

 

最近では、小学生のうちからキャリア教育がさかんにおこなわれるようになっています。これは、歓迎すべき動きですが、やはり子どもにとって、もっとも身近なサンプルは親です。

 

●自分は仕事というものをこうとらえている

●仕事でこう成長できた

●今日、仕事でこんなおもしろい人に会った

●今回のプロジェクトではこういう発見があった

●上司にこういうことで褒められた

●部下がこんなふうに成長してくれたのがうれしかった

 

こんなふうに、親自身が日々の仕事のなかで得た手ごたえや喜び、実感を、どんどん話していくべきです。自宅で仕事をしている人でない限り、実際にどんな仕事をどのようにやっているかは、親が話さないと知るすべがありません。こればかりは「背中で語る」ことができないのです。

親の仕事へのリスペクトが子どもの「仕事観」をつくる

ある大学の授業で、学生に保護者インタビューをさせたそうです。そのなかでひとりの学生が、「自分が小中学生のころ、父は週末、ほとんど家にいなかった。ひとりで何を遊んでいるのだろうとずっと思っていたが、実は当時、父は仕事に関する勉強や調べ物で週末はいつも図書館にこもっていたというんです。そんな父を改めて尊敬するとともに、いかに自分が父の仕事のことを何も知らなかったかを実感しました」と書いていたそうです。

 

ほかにも多くの学生が「今回のインタビューで、親がどのように仕事と向き合ってきたかをはじめて知った」とレポートに書いていたといいます。子どもは親が家にいる姿しか見ていないのですから、言葉で伝えていかないことには、職業や役職、肩書きなどから推し量るしかなくなります。

 

仕事の内容ややりがいを具体的に知らないと、「課長になったから偉い」「大きい会社に勤めているから偉い」「医者だから偉い」、もしくは「平社員だからたいしたことがない」「小さい会社だからダメだ」という観点でしか仕事を見ることができなくなってしまうのです。そして親への尊敬の気持ちも芽生えません。これは本当に悲しいことです。

 

親の仕事をリスペクトできない子どもは、「仕事は自分を成長させてくれる楽しいものだ」という健全な仕事観を自分のなかに持つことができません。

 

「親や世間を見返すために官僚になってやれ」「大きい会社に入れば恥ずかしくない」というのが学びのモチベーションになれば、目先の結果は出るかもしれません。しかし、長いスパンで考えると幸せな人生に結びついていくとは、私には到底思えないのです。

「勉強しなさい」ではなく、「仕事の楽しさ」を伝える

仕事観を育てるというと、具体的にどの職業に就くかを決めたり、特定の会社に就職したりすることがゴールだと考えがちです。それはまったく間違っています。人生のピークは22歳ではありません。就職後の人生のほうがずっとずっと長いのです。

 

幼いころから、仕事の尊さ、仕事の喜びを、どんどん子どもに話したほうがいいと思います。お金を稼ぐ、稼ぎ続けるということは、昨日よりも今日、今日よりも明日と、ずっと成長し続けるということです。それは人間の喜びにほかなりません。

 

自ら挑戦し→成果を出し→その成果を仲間と分かち合う喜びを得る→さらに新しい挑戦をする

 

この成長のサイクルを味わえるのが仕事の醍醐味です。働くことによって自分を成長させることを「楽しい!」とポジティブにとらえられる子どもは、強い。どう強いかというと、どんな市場でも「稼げる人材」になりうるのです。

 

もちろん、仕事は楽しいことばかりではありません。高いハードルに挑戦し続け、自分を成長させていこうとすれば、当然ながらその過程には大変な苦労がつきまといます。しかし、それは「働くことはそれほど楽しくないけれど、お金のためにがまんしよう」という大変さとは、まったく種類が違います。子どもに、どちらの人生を選択してほしいかといえば、私は圧倒的に前者です。挑戦が、さらなる楽しい仕事を呼びこむということを、折に触れぜひ話してあげてください。

 

こうした仕事観を伝えることなく、勉強でいい点を取ること、スポーツでいい戦績を収めること、有名な会社に入ることだけを目標としてしまうと、いざ働き始めてから、「親のすすめる会社に入ったけれど、まったく好きではない」「安定しているといわれて公務員になったけれど、自分には向いていない」と挫折感を味わうことになります。

 

「勉強しなさい」と100回言うよりも、「仕事が楽しくてたまらない」と伝えるほうが、どれだけ効果があることか。「お父さん、お母さんの仕事はこんなふうにおもしろいんだよ」「こんなプロジェクトに挑戦したけど、すごく勉強になった」「弁護士と協力して、こんな仕事をしてるんだ。物事にはいろんな見方があるってことを学んだよ」と親自身の仕事の喜びを語ることのほうが、よっぽど子どもの学習意欲を刺激し、職業選択していく際の助けになります。

 

悲しいかな、「仕事の喜び」を語れない親こそが、「いい大学に入れ!」「いい企業に入れ!」と類型的なモノサシで、子どもを追い詰め、子どもの未来を狭めているような気もします。

「価値のある仕事」を選ぶことの重要性を伝える

私自身は、仕事から得た実感を、日ごろから子どもたちに話してきました。公認会計士の資格をもって、監査、税務、コンサルティングなど、さまざまな仕事をしてきましたが、なかでもコンサルティングには大きなやりがいを感じました。

 

経営者にとって会社というのはわが子同然です。懸命にアイディアを出し、会社の経営をよくすることで、うまく窮地を救うことができたときは大変に喜ばれます。何年経っても盆暮れの挨拶をしてくださる、義理堅いクライアントも少なくありません。こんな経験を通して、「人に喜ばれることを仕事にしたほうが楽しいよ」と、子どもたちに伝えてきたのです。

 

勘違いしてほしくないのは、これはあくまで私自身の「価値」を子どもに伝えたにすぎない、ということです。人によって「楽しい」「やりがいがある」と思うことは違いますよね。だからこそ、自分が「価値」を置いているものにしたがって、仕事を選ぶことの意味を教えてあげてほしいのです。

 

「価値」抜きで、給料や会社の規模、安定性など目先のことにとらわれて仕事を選ぶと、10年後、20年後、「いったい自分は本当は何がしたいのか」と悩むことになります。人生の満足度が、著しく低下してしまうのです。

 

「価値」ありきで仕事を見ていくことの大切さを、子どもに伝えましょう。

仕事だけでなく、業界全体を見渡せる「視野」を持つ

ただし、「自分が価値を置いているものを仕事に」といったときに、その仕事で、マネープレッシャーのない暮らしが長期的に可能かどうか、冷静な目を持つことを伝えてください。この連載のタイトルに「稼げる子」という言葉をいれたのも、好きなことで食っていける人こそが、プロフェッショナルだと考えているからです。

 

「好きなことを仕事にしたい」という子どものなかには、「洋服が好きだから」とアパレルショップの販売員になったり、「体を動かすのが好きだから」とジムのトレーナーになったりするケースもあります。

 

親としては、「好きなことがあるならそれでいい」と思う気持ちもあれば、「店長やマネージャーになってから先のキャリアパスが描きにくく、長く働き続けるのが難しい仕事だから賛成しにくい」と感じる部分もあるのではないでしょうか。

 

子どもは、どうしても仕事を業界・業種全体でとらえることができません。アパレル業界なら、自分が接したことのある販売員という仕事しか目に入らないのです。

 

しかし、アパレルには、デザイナー、パタンナー、広報PR、バイヤー、営業企画など、さまざまな仕事があります。業界全体に目を向ければ、商品企画を専門におこなう会社もあれば、アパレルブランドからPRを専門に請け負っている会社もあります。語学力があれば、外資系ファッションブランドで活躍することも可能です。

 

また、服に限らずものづくりが好きなのであれば、シェフやパティシエ、伝統工芸の職人などを目指し、将来は店を持つ、という選択肢もあります。

「年収1000万円」への道はひとつではない

年収1000万円へのアプローチは無数にあります。わが子が勉強が苦手でも、会社で働くことや資格取得に興味がなくても、がっかりすることはまったくないのです。

 

子どもが好きなこと、得意なことに的を絞り、「選択と集中」を実践していきましょう。「高学歴→大企業」という偏差値路線以外のルート例を、少し紹介してみます。

 

年収1000万円へのアプローチは無数にある
年収1000万円へのアプローチは無数にある

 

●シェフやパティシエになって、自分の店を持つ

 

単身フランスにわたり、現在は国内外で「パティスリー・サダハル・アオキ・パリ」を展開する有名パティシエの青木定治さんは、勉強はまったくダメだったものの、小学校低学年のころから、家でクレープを焼いたり、ババロアをつくったり、肉を焼いたりして、人を喜ばせるのが好きだったといいます。

 

パリで1号店を出店した際には、「東京の人間がフランス菓子やフランス文化を触ったらどうなるのか」をテーマに、抹茶のクリームをかけたエクレアなどをラインナップし、商品は軒並み完売していきました。フランスで学んだお菓子作りの技術を、世界からの注目度の高い東京の感覚で表現してみせたのです。また、青木さんは成功の秘訣を問われ、「あいつにチャンスをやろうと思わせる愛嬌が大事」とも答えています。

 

●商業高校、工業高校、農業高校などで専門技能を身につける

 

商業高校や工業高校は、一般的には普通科の下に位置付けられてしまいますが、本来は専門知識・技術を身につけるのにうってつけの場です。私の知人に名門国立大学でシステムと会計を専門に教えている教授がいるのですが、ある年大学と大学院を通じて首席で卒業したのは、プログラミング能力に長けた商業高校出身者だったそうです。

 

●販売職で得た経験を生かし、ファッションプロデューサーやカメラマンになる

 

一時期アパレルショップの「カリスマ店員」が話題になりました。彼女たちがその店の洋服を着ると、そのコーディネートが飛ぶように売れたといいます。彼女たちは、いまどうなっているのでしょうか。

 

タレントとして活動しながら、コスメやアパレルブランドのプロデュースなどを手がけるファッションプロデューサーになっている人もいれば、ファッション業界でスタイリストやカメラマンとして活躍している人もいます。一瞬のブームで表舞台から姿を消しているのかと思いきや、販売で培ったセンスや人脈を生かしながら、上手に自分の可能性を広げていくことに成功しています。

 

●農家で希少性を追求する

 

静岡のあるたけのこ農家は、年商1億円を誇ります。通常、たけのこは、生える年と生えない年があり、たけのこ農家は経営が安定しないのが普通でした。それを、この農家では年間300日以上、山に入って収穫と手入れをし、安定供給を可能にしたといいます。鮮度にも徹底してこだわり、夕方に掘ったものを宅配便で届けているそうです。

 

そのほかにも、

 

●美容やファッションの知識・経験を生かして、美容家やイメージコンサルタントになる

●掃除や片付けについて自分なりのノウハウを編み出し、コンサルタントやアドバイザーとして起業する

●自分の得意分野を生かしてブロガーとなり、ファンを獲得して広告収入を得る

●リラクゼーションサロンやネイルサロンなどの分野で独立開業し、チェーン展開する

 

など、専門性を活かして年収1000万円を達成できる可能性は多岐にわたっています。稼げる仕事というと、高学歴が集まる金融業界やコンサル業界ばかりに目が行きがちですが、どんな仕事でも、人より抜きんでることができれば、チャンスはそこここに転がっているのです。

 

 

林 總

公認会計士林總事務所 公認会計士/明治大学特任教授

 

公認会計士林總事務所 公認会計士 明治大学特任教授(戦略管理会計、原価管理、経営分析、管理会計ケース)

昭和49年中央大学商学部会計科卒業。外資系会計事務所、国内監査法人を経て開業。経営コンサルティング、管理会計(主として原価計算)システムの設計導入コンサルティング、講演、執筆活動をおこなっている。 主な著書に『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』(ダイヤモンド社)、『正しい家計管理』(WAVE出版)、『ドラッカーと会計の話をしよう』(KADOKAWA)など多数。

事務所 東京都千代田区九段北4-1-1九段一口坂ビル2階
電話番号 03-3263-2533
FAX番号 03-3263-2886
E-MAIL  a1231wood@r4.dion.ne.jp

著者紹介

連載令和時代をどう生きる?年収1000万円「稼げる子」の育て方

年収1000万円 「稼げる子」の育て方

年収1000万円 「稼げる子」の育て方

林 總

文響社

「18歳(大学入学時)が人生のピーク」では切なすぎる! 学歴より資格と専門性。好きな仕事で食える人間を育てるために、親ができること。 重要なのは、子どものころから「生産性と希少価値を高める教育」をすること、そ…

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