原油価格は持ち直し傾向
サウジの石油施設への攻撃が背景
■北米の代表的な原油価格であるWTI原油価格は、9月に入ってから、持ち直し傾向にあります。
■9月14日にサウジアラビア(サウジ)の石油施設が攻撃され、日量570万バレルの生産が停止したうえ、復旧についても不透明感が残ることが背景です。
OPEC産油量は低位推移
需給引き締まりが意識されやすい
■9月11日に公表された石油輸出国機構(OPEC)月報の9月号によると、OPEC加盟国の原油生産量は低位で推移しています。8月の生産量は日量で前月比▲13.6万バレルとなる2,974万バレルでした。
■2019年の世界の原油需要は日量9,984万バレルと予想されています。需給の均衡にはOPEC加盟国で3,061万バレルの供給が必要とみられますが、原油生産量が現状の2,974万バレル程度で推移すれば、2019年は需要が供給をやや上回りそうです。
■このように、もともと原油需給の引き締まりが見込まれていたなかで、サウジの生産の半分程度が停止したことから、復旧に時間を要する場合、原油価格への上昇圧力が増していく可能性があります。
中東情勢は不透明感強く、今後の動向に注目
■サウジは生産能力が9月末までには攻撃前の水準まで回復するとしており、すでに回復したとの報道もある一方、復旧には数カ月程度かかるとの指摘もあります。
■また、サウジや欧米諸国は、イランが主体的に攻撃に関与したとの見解を示しており、関与を否定するイランとの対立が先鋭化しています。
■現状では米国やイランが軍事行動に出る可能性は低いとみられるほか、米中貿易摩擦などに起因する世界的な景気減速懸念が意識されていることなどから、原油価格が今後持続的に上昇していく公算は小さいと考えられます。とはいえ、不透明感は強く、状況を注視していく必要がありそうです。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『足元で持ち直し傾向にある原油価格(2019年9月)』を参照)。
(2019年9月26日)
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