足元で持ち直し傾向にある原油価格(2019年9月)

中東情勢緊迫化が相場を押し上げも、先行きは不透明/デイリーマーケットレポート

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 調査部
足元で持ち直し傾向にある原油価格(2019年9月)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供するデイリーマーケットレポートを転載したものです。

原油価格は持ち直し傾向

サウジの石油施設への攻撃が背景

 

■北米の代表的な原油価格であるWTI原油価格は、9月に入ってから、持ち直し傾向にあります。

 

■9月14日にサウジアラビア(サウジ)の石油施設が攻撃され、日量570万バレルの生産が停止したうえ、復旧についても不透明感が残ることが背景です。

 

(注)データは2018年1月5日~2019年9月25日。ともに週次データ。リグ稼働基数は2019年9月20日まで。 (出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
WTI原油価格と北米のリグ稼働基数 (注)データは2018年1月5日~2019年9月25日。ともに週次データ。
   リグ稼働基数は2019年9月20日まで。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

OPEC産油量は低位推移

需給引き締まりが意識されやすい

 

■9月11日に公表された石油輸出国機構(OPEC)月報の9月号によると、OPEC加盟国の原油生産量は低位で推移しています。8月の生産量は日量で前月比▲13.6万バレルとなる2,974万バレルでした。

 

■2019年の世界の原油需要は日量9,984万バレルと予想されています。需給の均衡にはOPEC加盟国で3,061万バレルの供給が必要とみられますが、原油生産量が現状の2,974万バレル程度で推移すれば、2019年は需要が供給をやや上回りそうです。

 

■このように、もともと原油需給の引き締まりが見込まれていたなかで、サウジの生産の半分程度が停止したことから、復旧に時間を要する場合、原油価格への上昇圧力が増していく可能性があります。

 

(注1)需給バランス=供給-需要。  (注2)単位は百万バレル(日量)。  (注3)2018年は実績。2019年、2020年はOPECによる予想。ただし、2019年と2020年のOPEC生産量は全体の需給が均衡するとの仮定のもとでの弊社算出値。  (注4)四捨五入の関係で、OPEC、非OPEC供給量の合計は必ずしも全体の供給量と一致しません。  (出所)「OPEC月報」のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
世界の原油需給見通し (注1)需給バランス=供給-需要。
(注2)単位は百万バレル(日量)。
(注3)2018年は実績。2019年、2020年はOPECによる予想。ただし、2019年と2020年のOPEC生産量は全体の需給が均衡するとの仮定のもとでの弊社算出値。
(注4)四捨五入の関係で、OPEC、非OPEC供給量の合計は必ずしも全体の供給量と一致しません。
(出所)「OPEC月報」のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

中東情勢は不透明感強く、今後の動向に注目

■サウジは生産能力が9月末までには攻撃前の水準まで回復するとしており、すでに回復したとの報道もある一方、復旧には数カ月程度かかるとの指摘もあります。

 

■また、サウジや欧米諸国は、イランが主体的に攻撃に関与したとの見解を示しており、関与を否定するイランとの対立が先鋭化しています。

 

■現状では米国やイランが軍事行動に出る可能性は低いとみられるほか、米中貿易摩擦などに起因する世界的な景気減速懸念が意識されていることなどから、原油価格が今後持続的に上昇していく公算は小さいと考えられます。とはいえ、不透明感は強く、状況を注視していく必要がありそうです。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『足元で持ち直し傾向にある原油価格(2019年9月)』を参照)。

 

 

(2019年9月26日)

 

関連マーケットレポート

2019年9月17日 サウジの石油施設が攻撃され、原油生産が停止

2019年8月28日 軟調に推移する原油価格(2019年8月)

 

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