2019年10月からの消費税増税で気になるのが株式投資に対する影響。直接的な影響を中心に、どのくらいのインパクトがあるのかを増税前に確認しておきましょう。
そもそも株式投資に消費税ってかかるの?
あと半月ほどに迫った消費税率の8%から10%への増税。個人投資家として気になるのが、株式投資に対してどのような影響があるのかだと思います。
そもそも株式投資に消費税はかかるのかどうか、ご存知ですか?「そんなの、気にしたことすらない」という方が大部分だと思いますが、良い機会ですので知っておきましょう。
株式の売買をはじめ、有価証券の売買は、消費税の非課税取引となっています。つまり、株式を買っても売っても、消費税はかかりません。
したがって、例えば540円の株を売買するとき、この540円は税込みであって税抜きは500円…ということではありません。また、540円が税抜きで、それに消費税8%が加算されて583円で取引される、ということもありません。
ついている株価そのもので、消費税は関係なく取引がなされます。
株式投資にかかる手数料は?
ただし、株式売買そのものには消費税はかかりませんが、証券会社に支払う売買手数料には消費税がかかります。
例えば、楽天証券の現物取引で100万円の取引をすると、「487円+消費税」の売買手数料がかかります。これが消費税8%だと38円の消費税がかかるところ、消費税10%になると48円の消費税です。
つまり、消費税率のアップにより、消費税込みの売買手数料は10円増えることになります。
とはいえ、1回の取引で手数料が10円増える程度では影響はほぼないと言ってよいでしょう。さらには、手数料の増加の分だけ譲渡益(=売却益)が目減りします。その結果、譲渡益に課される税金が減少します。
譲渡益の税率は20.315%ですから、株取引で譲渡益が生じることを前提とすれば、消費税増税により増加する金額の、およそ80%(1-20.315%=79.685%)が実際の負担増となります。
配当金や分配金は?
では、上場株式の配当金や、ETF(上場投資信託)やREIT(リート:上場不動産投資信託)の分配金に対しての消費税はどうなっているのでしょうか?
配当金が1株100円で、100株保有しているならば配当金合計は100円×100株=1万円です。この配当金には消費税はかかりません。
ですから、1万円が消費税込みであり、1万円÷1.08=9259円が消費税抜きの金額、という考え方はしません。もしくは1万円が税抜きの金額で、それに8%の800円を上乗せした1万800円の配当金を受け取れる、ということもありません。
配当金にはそもそも消費税はかからないわけですから、消費税増税の影響もない、というのが結論です。
信用取引の各種コストは?
最後に、信用取引にかかる各種コストに対する消費税についても見ていきましょう。
信用取引には次のようなコストがかかります。
・売買手数料
・買い方の金利
・貸株料
・逆日歩(品貸料)
・事務管理費
・名義書換料
このうち、消費税がかかるのは売買手数料、事務管理費、名義書換料です。
例えば楽天証券の場合、事務管理費は1カ月ごとに1株当たり税抜きで10銭かかります。また、名義書換料は権利確定日をまたぐごとに、1単位当たり税抜きで50円かかります。
いずれも、消費税率が8%から10%になることによって、2%相当のコスト増となりますが、これらの手数料自体が大きな額ではないので、それほど気にする必要もないと思います。
なお、そもそも利息には消費税はかかりません。そのため、買い方の金利や貸株料、逆日歩のように、金利の性質を持つものについては、消費税がかからないことになっています。
消費税の増税により、株式投資のコストが少し上昇するのは間違いありません。ただ、それが運用成果に大きな影響を与えるとはいえず、軽微なレベルにとどまる、というのが結論です。
したがって、消費税増税は気にせず、今まで通り株式投資を続けていって大丈夫、というのが筆者の考えです。
足立 武志
足立公認会計士事務所
※本記事は、2019年9月13日に楽天証券の投資情報メディア「トウシル」で公開されたものです。