「海外事業展開の手段」として利用が拡大
2019年上期のM&A件数を、M&A仲介サービスのストライク(M&A Online編集部)が集計した。上場企業の適時開示(上場企業に義務付けられた「重要な会社情報の開示」のこと)をもとに集計されたものである。このうち、経営権の異動を伴うM&A案件(グループ内再編を除く)が対象。
2019年上期(1~6月期)のM&Aは394件となり、前年同期を67件上回った。上期として2年ぶりに増加に転じ、2009年以来10年ぶりの高水準に達した。
少子・高齢化に伴う国内市場の縮小やサービス業を中心とする人手不足を背景に、シェア拡大や労働力の確保、海外事業展開の手段としてM&Aを利用する動きが広がっている。下期に向けては米国と中国との貿易摩擦や国内での消費税増税など懸念材料も多い。ただ19年上期のM&A件数が、高水準だった18年の件数を上回ったことから、市場では「19年は暦年でも過去最高を更新する」との期待が浮上している。
上期の取引金額トップはポータルサイト国内最大手、ヤフーの子会社化を5月に発表したソフトバンク。日本ペイントホールディングス、第一生命ホールディングスがこれに続いた。
2019年上期のM&A開示件数のうち、海外案件は86件と全体の2割強を占め、日本企業による海外企業買収が66件、日本企業の現地子会社の売却が20件だった。日本企業による海外企業買収は前年同期より19件増え、取引金額が100億円超の大型案件も7件増の29件となった。
◆海外案件が全体の2割、取引額は減少
上期のM&A件数は、2009年に約440件に達していたが、リーマン・ショックに端を発した世界的な景気後退のあおりで2010年は100件以上落ち込んだ。2012年に370件まで持ち直したが、以降は300件台前半でおおむね推移していた。
上期を締めくくる6月単月は、前年同月を15件上回る47件だった。6月は全上場企業の3分の2を占める3月期決算会社の株主総会集中月であることから、例年、M&Aを手控える傾向があり、年間を通じて最も少なくなるが、過去10年で12年、11年に次ぐ3番目の多さだった。
上期M&Aの取引金額は約2兆1000億円(公表分を集計)で、前年同期の約8兆9000億円に比べて6兆8000億円減少した。前年同期に武田薬品工業がアイルランド製薬大手のシャイアーを6兆円以上の巨費で買収する案件(2018年5月発表)が含まれていた反動が出たとみられる。
1000億円を超える「大型M&A」は6件
◆取引額トップはソフトバンク
上期中、1000億円を超える大型M&Aは6件(前年同期は8件)だった。金額トップはポータルサイト国内最大手、ヤフーの子会社化を発表(5月)したソフトバンクの4565億円。ITと金融を融合したフィンテックなど非通信分野を強化するのが狙いとみられる。
これに次ぐのが日本ペイントホールディングスによる豪州の塗料大手デュラックスグループの子会社化。買収額は3005億円。日本ペイントはこれまで欧米や中国の有力塗料メーカーを相次ぎ買収し、グローバル展開を進めてきた。2017年には約700億円で米ダン・エドワーズを傘下に収めたが、今回の豪社買収は同社として過去最大となる。
日本電産によるオムロンオートモーティブエレクトロニクス(OAE、愛知県小牧市)の買収は国内企業同士として1年ぶりの1000億円級の大型M&Aとなった。OAEは1983年にオムロン車載電装事業部として発足し、2010年に分社化した。日本電産はCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)に代表される自動車業界の技術革新やビジネスモデルの変革に対応する。
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