豊かな老後のために、30代はどんな過ごし方をすればいいのでしょうか? 人生における30代は何事においてもチャレンジできる時代。本記事では、充実した30代を過ごしながら、老後への備えも行う秘訣を伝授します。※本記事は、青山学院大学大学院教授の榊原正幸先生が、人生100年時代の資産形成に役立つ、堅実で科学的な株式投資術をわかりやすく解説します。

30代は「仕事」と「結婚」が重要テーマ

ここでは、老後対策について年代別に考えていきます。私の拙い人生経験から「人生を生き抜く処世術」のようなものも書いてみます。すなわち、「老後対策」ということを念頭に置いて書いていきますが、人生を悔いなく生きるための考え方というようなことについても、年代別に思いつくままに書いてみます。私の個人的な価値観(偏った価値観?)に基づく部分も散見されるとは思いますが、何かのご参考になればと思い、忌憚なく書き進めてみます。

 

30代は「仕事」が軌道に乗り始める時期であり、また「結婚」を真剣に考える時期でもあります。女性の場合、20代で結婚する人も多いと思います。すでに結婚している人は、結婚生活も軌道に乗り、子育てが始まったりもしているでしょう。

 

私は、30歳で結婚し、36歳のときに第一子を授かりました。私の場合、大学院の修士課程で1年留年してから、博士課程後期課程(ドクターコース)に進学して、それから名古屋大学経済学部の研究助手(国家公務員)に就任しましたので、就職したのは29歳でした。

 

働き始める時期はかなり遅かったのですが、それでも30代では仕事をうまく軌道に乗せることができました。32歳から2年半ほど海外留学も経験しましたし、36歳になる少し前には東北大学の助教授に就任しましたので、30代で、まさにゼロからかなりいい感じで仕事を軌道に乗せることができました。

どんな世界でも、30代は「チャレンジング」な時代

仕事をし始めるのは、早い人ですと15歳からです。すなわち、中学校を卒業してすぐに働くわけです。一般的には、18歳か22歳で高校か大学を卒業して働く人が大半でしょう。また、大学院に進学したり留学したり、はたまた浪人や留年をしたりして、25歳を過ぎてから働き始める人もいます。

 

このように、働き始める時期は人それぞれですが、だいたい共通していえることは、「30歳までは下積みの時代だ」ということです。

 

もちろん、ごく一握りの人、たとえばプロスポーツの世界で活躍する天才的な人たちは、その才能と努力によって早くから大活躍し始め、10代や20代で燦然と光を放つ人もいます。しかし、それはやはりごく希な例で、普通の人々は「30歳までは下積みの時代だ」と肝に銘じておいたほうがよさそうです。

 

そして、30代というのは、仕事の意味では大きな飛躍の年代だといえます。30歳までの間にきちんとした下積みを積んでおくことで、30代の10年間では大きく飛躍を遂げることができます。いってみれば30代は「チャレンジする年代」であり、それが実を結びやすい年代だと思うのです。

 

私は32歳になった年の秋から35歳になる少し前の春までの2年7カ月をイギリスで過ごしました。イギリスで大学教員の仕事をしながら博士号を取るという「チャレンジ」の旅に出たのです。

 

海外留学を始める時期としてはかなり遅かったと思いますが、仕事上のチャレンジという意味では、いい時期に開始できたと今では思っています。このようなわけですので、私の場合は35歳まで下積みの時期が続いたのですが、それと同時に、30代は「捨て身のチャレンジ」ができる年代でもあると思います。

 

そして、その海外留学を終えて、浜松短期大学(現:浜松学院大学)に1年だけ奉職し、東北大学からヘッドハンティングされました。異例の抜擢でした。東北大学に着任したのが36歳になる少し前の春でしたから、30代ではまさにゼロからの飛躍を遂げたわけです。

 

また、2001年2月、私が40歳になる少し前に博士号の最終審査を終えて、イギリスのレディング大学から博士号を授与されました。博士号の授与式(卒業式)は2001年の7月で、6月生まれの私は授与式の日には40歳と1カ月になっていましたが、この博士号を得るという作業も30代でなし得た大きな仕事のひとつでした。

 

私の場合は大学教員(研究教育者)という少し変わった世界で生きてきて、その中での経験談になりますので、やや特例的な経験に基づく話にはなりますが、どんな世界でも30代が「チャレンジング」な時代であり、仕事上の「飛躍の年代」であることは共通しているのではないかと思います。

 

また逆に、この30代という「チャレンジング」な時代を有意義に過ごさなければ、よりよい40代はやって来ないのではないかと思います。30代という「チャレンジング」な時代を有意義に過ごすために、今から30代を迎える方は、「捨て身のチャレンジ」を計画してみてはいかがでしょうか。また、すでに30代を過ぎていらっしゃる方は、各位の30代のときのことを思い起こしていただき、やり足りなかったことはなかったか、それは今からでも挽回可能なのかを考えてみるのも有意義だと思います。

決まったペースで貯金を続け、それを「投資」に回そう

☆「老後対策」との関連で30代の「仕事」について考える

 

30代というのは、はっきり申しまして、まだ老後のことなどは考えられない年代であろうと思います。また、年金不安などから老後のことを憂いはするでしょうけれども、まだピンとこないというのが本音なのではないでしょうか。

 

老後のことよりも、今現在の仕事に関する基礎固めと、さらなる飛躍に全身全霊を傾けていればよい年代です。仕事に邁進し、よりよい仕事をすることで、仕事上での立身出世を遂げておくことが何よりの「老後対策」にもなると思います。30代で基礎固めと発展を成し遂げておけば、よりよい40代・50代の展望が開けてきますので、それが何よりの老後対策なのです。

 

しかし、「お金」の面で、もし何らかの老後対策をしておくとしたら、それは、「本多静六(ほんだせいろく)式の蓄財法」をできるだけ早くからやっておくことくらいでしょう。これは、私自身がまったくやってこなかったことからの反省でもあるのですが、早い時期からの蓄財も、ないよりはあったほうがやはり心強いと思うのです。

 

「本多静六式の蓄財法」というのは、「毎月の決まった収入のうちの4分の1と臨時収入の全部を貯金する」というものです。そしてそれで株式や不動産の底値を買って増やすのです。

 

現実には、「毎月の決まった収入のうちの4分の1と臨時収入の全部」を貯金するというのは難しいかもしれませんが、「毎月の決まった収入のうちの10分の1と臨時収入の半分を貯金する」というくらいのことはやっておいたほうがいいでしょう。

 

たとえば、月給の手取りが30万円で、賞与が手取りで50万円という場合、毎月3万円と賞与で年2回25万円(年間合計50万円)を貯金するということになりますので、年間で86万円の貯金ができます。

 

そして肝心なことは、それを「投資に充てる」ということです。この投資は長期投資を前提としていて、最低でも年率で10%(税引き後)の利回りが得られるように投資します。そうすると、10年後には次のような金額になることになります(1万円未満の端数は切り捨ての概算)。

 

1年目に貯めた86万円:86万円×1.1の9乗=202万円

2年目に貯めた86万円:86万円×1.1の8乗=184万円

3年目に貯めた86万円:86万円×1.1の7乗=167万円

4年目に貯めた86万円:86万円×1.1の6乗=152万円

5年目に貯めた86万円:86万円×1.1の5乗=138万円

6年目に貯めた86万円:86万円×1.1の4乗=125万円

7年目に貯めた86万円:86万円×1.1の3乗=114万円

8年目に貯めた86万円:86万円×1.1の2乗=104万円

9年目に貯めた86万円:86万円×1.1=94万円

10年目に貯めた86万円:86万円

 

合計1,366万円

 

このようにして計算すると、10年で1,366万円ですが、20年ではなんと4,900万円にもなります。しかも、20年の間にはいくらかの増収もあるでしょうから、それを加味すれば、20年間に貯まる金額は、もっと多くなります。50歳の時点で4,900万円以上の蓄財を持っていれば、かなり安心できると思います。

 

以上で述べてきたように、30代は仕事上で飛躍を遂げる年代であるというのが第一です。そして、もし可能ならば「本多静六式の蓄財法」にならってコツコツと蓄財しておけば、なおよいと思います。堅実な株式投資の実践を開始する時期も30代が理想です。

 

30代でやっておくべきこと

1.仕事上で飛躍を遂げる

2.コツコツと蓄財しておく

3.株式投資を始める

 

 

榊原 正幸

青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科教授

 

 

本連載は、投資を促したり、特定のサービスへの勧誘を目的としたものではございません。また、投資にはリスクがあります。投資はリスクを十分に考慮し、読者の判断で行ってください。なお、執筆者、製作者、PHP研究所、幻冬舎グループは、本連載の情報によって生じた一切の損害の責任を負いません。

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