利用者の利便性を考えれば「窓口割引型」の一択
前回に引き続き、CS向上に効果がある方法について見ていきます。
【14】ペット保険は「窓口割引型」に対応する
CSの観点からは、前回説明したようにペット保険については「窓口割引型」に対応している保険会社と提携することが望ましいといえます。まず、確認しておくと、ペット保険には大きく「立替請求型」と「窓口割引型」の2種類があります。
「立替請求型」は、保険利用者がいったんは動物病院で治療費の全額を支払い、後日、保険会社に保険金を請求して払い戻しを受けるタイプのものです。一方、「窓口割引型」は、病院の窓口で、保険加入を証明するカードなどを提示することにより、保険による給付分を差し引いた額だけ支払うものです。治療額のうち保険でカバーされる部分は、保険利用者ではなく、動物病院のほうで後日請求することになります。
このような二つのペット保険の中身を見比べてみた場合、保険利用者にとって利便性が高い仕組みとなっているのは、明らかに「窓口割引型」です。「立替請求型」は、保険利用者がわざわざ自分で必要な書類を用意して保険会社に請求しなければならないのに対して、「窓口割引型」は病院で支払った段階で精算がすんでいるので、以後の手続きがまったく必要ないからです。
このように「窓口割引型」のもつ「余計な手間がかからない」というメリットの大きさを鑑みれば、保険利用者は自然と「立替請求型」ではなく「窓口割引型」に対応している動物病院を選択するようになるはずです。したがって、「窓口割引型」は、保険を利用している常連の飼い主を逃がさないようにするための大きな強みといえるでしょう。
作業の合理化で待ち時間を短縮し、CS向上につなげる
【15】待ち時間を短くする
診療や会計の待ち時間を短くすることは、顧客満足度を高めるうえで非常に効果があります。動物病院ではなく、「人間」の病院に関するアンケートですが、株式会社メディネットが平成24年11月から平成25年4月の間に13病院で実施した「病院満足度調査」(4681人に実施)では、病院に対する不満な点として、多い順に以下のような項目が挙げられています(括弧内の数字は回答者の割合です)。
①診察待ち時間(22.2%)
②駐車場(17.2%)
③会計の待ち時間(16.7%)
④診察・予約時間への配慮(8.0%)
ご覧のように、この調査では、外来患者が診察待ち時間、会計待ち時間に対して強い不満をもっていることが明らかになっていますが、おそらく、動物病院に関して同様のアンケートを行ったとしても、同じような結果になるはずです。
待ち時間が長いことは、「いらいらする」という待たされていること自体に対する不満のほかに、「長々と待たされた割には診察時間が短かった」という形で診療に対する不満を引き起こすおそれもあります。また、待たされることは飼い主だけでなく、ペットに対してもストレスをもたらすおそれがあるでしょう。
このように、待ち時間が長いことが、CSに反することは明らかです。では、「待ち時間」を短くするためには具体的にどのような対策が考えられるのでしょうか。
まず、個々の診療や会計にかかる時間を、作業の合理化により短縮することが必要となるでしょう。たとえば、電子カルテを導入すれば、カルテの記載時間を大幅に削減することが可能となります。また、患者の待機時間を減らす工夫も求められます。具体的には、パソコンやスマートフォンなどを使って予約を入れ、自宅で順番待ちをして、診察時間が近づいたらクリニック・病院に向かえばよい――そのような仕組みを整えるのも一つの手です。
さらには、電光掲示板などを使って、待ち時間の「見える化」を図ることも大切です。「あとどのくらい待たなければならないのか」が正確にわかれば、待つことのストレスは少なからず軽減されるでしょう。
【一般の方が考える「診察待ち時間」の限界】