認知症になったら困る…「大家さん」が検討すべき対策とは?

人生100年時代といわれ、相続対策の前から被相続人となる親や祖父母の認知症リスクが高まる中、賃貸不動産等の承継においてどのような対策を実施するのが有効なのでしょうか。本記事では、認知症大家対策アドバイザー岡田文徳氏の著書、『大家さんのための家族信託®』(プラチナ出版)から一部を抜粋し、著者自身で実践し体験した、令和時代にふさわしい賃貸業の承継策を紹介します。

認知症対策から承継者対策までトータルで行う家族信託

今、認知症対策として、家族信託という注目されている方法があります。また、家族信託は資産の承継者対策としても、非常に有効な方法です。この家族信託を用いることにより、今までぶつ切りにされていた相続対策を認知症対策から承継者対策までトータルで行うことができます。

 

大家さんにとっては、画期的な方法です。現にわが家では、祖父の認知症、相続の経験から、両親が認知症対策を行いたいと私に話してきました。さまざまな方法を調査した結果、家族信託が一番しっくりきたようですので、家族信託を利用して、認知症対策から承継対策までトータルで行いました。

 

家族信託を組むには、まず契約書を作成する必要があります。契約書の内容は、近い将来のことからいまだ生まれていない子どものことなど、多岐にわたるところまで考えて、作成していきます。両親の意向と実際に家族信託でできることをふまえながら、契約書を作成していきます。こちら側が気づいていないこと、司法書士の先生も気づいていないことが出てきます。そのため、司法書士と契約書の内容をこと細かく何度も修正しながら作成していきました。このような経験から、家族信託の契約書を作成したことがない士業の先生よりも私のほうが実務的なことを理解していると思います。

 

私は、もっと大家さん側に寄り添う人間がいても良いのではないかと考え、現在では、相続対策をトータルでコーディネートしています。大家さんの気持ちは大家さんが一番わかるという思いで、サポートしています。このように書くと、不動産会社や士業の先生が悪いというように聞こえるかもしれませんが、決してそうではありません。実際には、不動産会社や士業の先生に依頼しないと進まないことがほとんどです。誰が良いとか悪いとかという話ではないと思います。

今までの相続対策では、各対策がぶつ切りに⁉

家族信託では、どのようなことができるのか、理解する必要があります。現在考えられる主なものをあげます。

 

①認知症対策

②資産の分割対策

③承継者対策

④管理上の不動産の共有解消

⑤障がい者対策

⑥ペット対策

 

その他にもさまざまな対策に家族信託を用いることができると、専門家が日々、研究をしています。大家さんにとっては、①から④に関する対策がメインになると考えられます。また、①から③の対策が人生100年時代に必要なる相続対策になります。

 

それでは、今までの相続対策と家族信託を用いた場合でどのような違いが出てくるのかを説明していきます。今までの相続対策では、各対策がぶつ切りになっていました。たとえば、

 

・遺産の分割対策としての遺言書

・認知症になってしまってからの法定後見

・亡くなってからの遺言執行

・次の世代に移ってからの二次相続対策

 

これらがぶつ切りになってしまうと、対策をしようと思っても、自分自身で一つ一つ対応する必要があります。

 

しかし、家族信託を用いると、トータルでカバーすることが可能です。

 

・遺言機能による分割対策

・認知症対策

・信託財産の次世代への移転

・次世代に移ってからの二次相続対策

 

を行うことが可能です。

 

[図表]
[図表]

 

大家として必ずやっておくべき認知症対策だが…

まずは、大家さんとして必ずやっておくべき、認知症対策についてお話をしていきます。認知症になってしまうと、契約事項ができなくなります。契約事項ができなくなるということは、銀行口座からの引き出し、不動産の売買契約、賃貸借契約、管理委託契約、修繕、設備導入など、不動産に関するあらゆることができなくなります。契約事項ができなくなってしまうと、誰が困るのか? ということが重要です。

 

・大家さん

・不動産管理会社

・入居者

 

大家さんは、入ってきた賃料を使うことができません。修繕、原状回復など賃貸業において必ずやらなければならないことができなくなります。

 

賃貸業専業である場合には、生活に支障が出てきます。トラブルがなければ問題ありませんが、トラブルが起きた場合には、対応する必要があります。対応できない場合には、最悪入居者が退去することも考えられます。退去されてしまうと、賃料が入ってこなくなりますので、売上が減ることになります。

 

不動産管理会社は、トラブルがない時には全く問題ありませんが、未来永劫にわたり、トラブルが起きないということはあり得ません。トラブルが起きた場合には、大家さんに連絡し、判断してもらわなければなりません。

 

しかし、大家さんが認知症で対応できない状態になってしまえば、管理会社は何も対応することができません。しかも、入居者からのクレームがあったとしたら、対応する必要があるにもかかわらず、まったく対応することができません。大家さんが認知症であり、クレームに対して対応することができないということは、入居者にとっては、まったく関係のないことです。管理会社は、大家さんと入居者の間で板挟みになってしまいます。板挟み状態で何も対応することができない物件に、あえて力を入れて管理しようとは思わないでしょう。

 

入居者は、不動産で修繕が必要になった場合には、管理会社に連絡をします。クレームに対応してくれれば、問題ないと思いますが、クレームに対応しない場合には、最悪退去することになります。現在は、賃貸住宅が過剰に供給されている状態ですので、退去して、新しい住居に引越しすることが可能です。退去時に、クレームに対応してくれなかったということで、何かしら大家さんに要求してくる場合も考えられます。

 

つまり、大家さん、管理会社、入居者の誰も得しないということがおわかりになると思います。

 

それでは、家族信託を行うことによって、次のことが可能になります。

 

・賃貸業を続けることができる

・大家さん、不動産管理会社、入居者の全員が得をする

 

大したことなさそうですが、次回から、家族信託を行った場合と何も対策をしなかった場合とを比較していきたいと思います。

認知症大家対策アドバイザー
株式会社ディメーテル代表取締役社長
日本不動産総合研究所研究員 

1985年東京生まれ、東京育ち。2010年東京大学大学院工学系研究科化学生命工学専攻修士課程修了。2010年コニカミノルタオプト株式会社入社(現コニカミノルタ株式会社)。2016年株式会社ディメーテル設立。メーカーの研究員をしていたところ、会社の都合により望まない異動を命じられ、家業の大家業を引き継ぐ。そのころ祖父が90歳を超えて軽い認知症になり、入院した時に銀行口座からお金が下ろせないという経験から、両親と認知症対策を行うとともに、不動産の賃貸経営ノウハウや人脈も含めた資産承継の対策を行い、自身の経験をセミナー等で大家さんたちに発信し始め、のべ1000名以上の大家さんに認知症対策の重要性を伝えている。認知症対策の専門家としてテレビや専門雑誌からのインタビューや取材依頼も多い。

著者紹介

連載親や祖父母が突然認知症になる前に!大家のための「家族信託®」活用法

大家さんのための家族信託®

大家さんのための家族信託®

岡田 文徳

プラチナ出版

「家族信託」や「民事信託」に関する本はたくさん出ていますが、家族間の賃貸業の承継に特化した唯一書です!「なぜ大家さんにとって家族信託は有効なのか?」自分自身で実践し体験した著者が、令和時代にふさわしい賃貸業の承継…

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