大学教授が教える「株式投資で利回り年率20%」を狙う方法

株式投資において「配当重視型の長期投資(パッシブ投資)」は、いわば王道ともいえる手法であり、初心者だけでなく、経験を積んだ熟練者にも適しています。まずは投資対象企業の見極めと、一定の基準に基づいた銘柄の選定法を学びましょう。本記事では、パッシブ投資のメリットと、配当と売却益の両取りで収益を増大させるテクニック、実際に購入する株の選定基準等について解説します。

インカム&キャピタルの両取りで、大きな利回りを期待

これまでの私の著作においても、配当重視型の長期投資(パッシブ投資)の考え方についてはすでに論じてきています。このパッシブ投資は株式投資の王道をいくものであり、初心者にも適している上に、初心者の対極をなす奥義を究めた投資家にも向いていると思います。また、いわゆる「老後のための」株式投資としても有意義なものであると考えています。

 

ここでは、パッシブ投資についてまとめておきたいと思います。

 

パッシブ投資というのは、基本的に配当重視型の長期投資です。ですから、受取配当(インカムゲイン)を中心に据えて投資するのですが、インカムゲインだけではなく、売買益(キャピタルゲイン)も考慮に入れて、それらの両取りを狙います。すなわち、原則的には配当の受取(インカムゲイン)を中心的な目的として投資するので、長期的な投資スタンスを採ることになるのですが、ずっといつまでも保有し続けるだけではなく、一定の高値になった時には売却して、売買益(キャピタルゲイン)も実現させます。

 

詳細は後述しますが、目標の配当利回りは、税込みで「3%~5%」です。3%~5%の配当を受け取りながら、比較的長期で保有し、目標配当利回りのおよそ10倍、すなわちおよそ30%~50%」のキャピタルゲインを得られるようになったら一旦売却して、キャピタルゲインも実現させます。

 

銘柄によっても異なり、長いものでは4年くらいの周期で安値と高値を往復するものもありますが、多くの場合、安値と高値を往復する周期は2年ぐらいです。ですから期待利回りは、2年間で計算すると、

 

「3%~5%」×1年+「30%~50%」=「33%~55%」

 

となります。ここでは「保有期間」を1年、「非保有期間」を1年として計算してあり、配当利回りの「3%~5%」は保有期間である1年分だけで計算してあります。

 

これを複利も加味して年率で換算すると、年率の利回りはおよそ「15%~25%」となります。税引き後で「12%~20%」です。この利回りは「売ってから次に買うまでの非保有期間」も含めた利回りです。保有期間だけの利回りにしてしまえば、「1年で33%~55%」ということになります。

 

インカムゲインとキャピタルゲインの両取りを狙うことで、インカムゲインだけでは期待できない大きな利回りを期待することができるというわけです。

安全性は高いが、配当が減額すれば仕切り直しも必要に

このパッシブ投資は、比較的簡単な理論によって構築されており、手間もあまりかからないので初心者向きでもあります。初心者の方は投資総額も少ないのが一般的なので、配当額はお小遣いみたいな金額にしかなりませんが、初心者のうちから年率の利回りが(税込みですが)15%~25%も達成できれば素晴らしいことです。

 

そしてこの投資法は、奥義を究めた投資家にも向いています。「奥義を究めた」というよりも「老後を迎えたベテランの」投資家向き、といったほうが正確かもしれません。

 

「老後を迎えたベテラン」の投資家は、頻繁に売買することを嫌う傾向がありますし、安定的に配当を受け取って、年金の足しにしたいというニーズもあります。そういった投資家にも向いている投資法です。

 

高配当利回りを根拠として買っていくパッシブ投資は割安株投資の変則形のような投資法であり、長期投資でもあるため投資としての安全性も高いのですが、反面で、留意しなければならない点もあります。それは、「配当額が減額になったら、一旦仕切り直さなければならない」ということです。

 

なにしろ、このパッシブ投資は高配当利回りを根拠とする投資法なので、配当額(注目するのは「予想値ベース」の配当額)が減額になった場合には、原則的に売却して、減額後の配当額を基準にして配当利回りが一定の高さになる株価(すなわち、次の安値の株価)まで下がるのを待ってから買い直すことになります。

パッシブ投資は、基本的に「配当重視型」の投資

パッシブ投資というのは、基本的に配当重視型の投資です。ですから、投資を検討するにあたって重要になるのは以下の点です。もちろん、投資対象企業群は国際優良企業と財務優良企業に限定します。

 

(1)長期間、安定的に配当を支払ってきている企業に限る

(2)配当利回りを基準として買い値を決定する

(3)老後には、まとまった株数を売買することになるので、出来高も重要な要素になる

 

これらの3点について、少しだけ付言しておきましょう。

 

(1)長期間、安定的に配当を支払ってきている企業に限る

 

過去の配当支払実績を調べることから始めます。できれば20年前(1998年3月)くらいまで遡(さかのぼ)って調べられれば理想的です。そのくらい長期間にわたって配当の支払実績が良好であることが必要です。「配当の支払実績が良好」というのは、増配はあっても減配したことがないのが理想ですが、リーマンショック直後の時期(2009年3月期~2010年3月期)は例外として、減配していても仕方がないと考えます。

 

(2)配当利回りを基準として買い値を決定する

 

配当利回りは予想値ベースの配当額を基礎として計算します。目標とする配当利回りは、「3%~5%」です。

 

一般論として、優良企業の配当利回りは、3%であれば良好であり、6%というのは異常に高い水準であることが知られていますので、目標の配当利回りを「3%~5%」としたのです。

 

昨今では、配当利回りが6%を超え、7%に達する例もみられますが、やはり「配当利回りが5%を超え、6%や7%に達するもの」は、長期的に観れば買いのチャンスになることが多いです。

 

2019年9月17日現在、日経平均株価が22,000円を少し上回っており、その時点での日経平均採用銘柄の配当利回りが2.16%ですから、、それのおよそ1.5倍~2.5倍を目標としているといった感じです。

 

(3)老後には、まとまった株数を売買することになるので、出来高も重要な要素になる

 

老後というのを、ここでは「70歳以降」と定義します。老後における運用資産総額の理想は「2億円」です。巨額すぎると思われる方もいらっしゃるかと思いますが、理想は高く持った方がよいので、ここではあえて2億円としました。また、現時点で50歳未満の方であれば、70歳というのは20年以上先のことですから、このくらい目標を高くしても十分に実現可能だと思います。

 

そして、投資対象は5銘柄くらいに分散しておくのがよいでしょう。そうすると、1銘柄あたりの投資額は4,000万円となります。1株の株価を概ね2,000円とすると、株数は「2万株」となります。

 

高配当利回りとなる安値を狙って株を買う場合、何回にも分けて丹念に買い下がっていくことが多いですから、買う場合には意外と出来高のことは心配しなくてもいいことが多いのですが、問題は売る時です。

 

売る場合には、目標の高値圏になったら、比較的まとまった株数を売りに出さないとうまく売れないことが多いのです。たとえば「2万株」を売る場合、できれば一気に売りたいのですが、一気に売ると株価が下がってしまうことが懸念される場合には、「1万株ずつ2日に分けて売る」ことも視野に入れることになります。1日に1万株をうまく売ろうと思った場合には、その銘柄の1日の出来高は少なくとも5万株は欲しいところです。

 

ですから、「1日の出来高が5万株以上」というのが、銘柄選別の基準のひとつになります。

安定高配当の銘柄を選別する「4つの基準」

以下の4つの基準で銘柄の選別をします。

 

(1)EPSが安定的(リーマンショック直後の2009年と2010年を除く)

(2)安定株主率が高く、安値における配当利回りが概ね3%以上

(3)配当額が高額(1株当たり30円以上)で、配当額のブレが少ない

(4)1日の出来高の平均値が概ね50,000株以上(国際優良企業については、この出来高基準の代わりに、「配当性向が20%以上のもの」とします)

 

国際優良企業については、1日の出来高の平均値を求めるまでもなく、十分な出来高があるので、(4)の出来高基準は採択せず、その代わりに「配当性向が20%以上のもの」を選別基準にしました。

「買い値・売り値」は配当利回りで決定する

(1)買い値の決定

 

パッシブ投資における買い値は、配当利回りで決定します。買い値の配当利回りを何%とするのかは、銘柄によって異なります。詳しくは第3節で説明しますが、基本的には、各銘柄の配当利回りを過去10年~20年分調査して、「配当利回りの点からみた安値圏」を割り出し、それを買い値とします。目標配当利回りの大枠のメドは「3.0%以上」とします。

 

(2)売り値の決定

 

パッシブ投資においては、売り値も配当利回りで決定します。

 

(1)に述べたように、買い値を決定するための配当利回りは銘柄によって異なるのですが、売り値もこの「買い値を決定するための配当利回り」に依拠して決定します。

 

たとえば買い値を決定するための配当利回りが「3%」だとします。その場合、売り値はこの利回りの10倍をメドとします。すなわち、上昇率が(3%の10倍の)「30%」になったら売りを検討します。税込みで年額「3%」の配当を期待して買ったので、その10倍のキャピタルゲインが得られる水準まで株価が上がったら、「10年分の配当を先取りできるようなものなので、一旦売るのが良いだろう」というのが売却の根拠です。また、過去の事例分析の結果からも、この「10倍基準」が妥当であることがわかっています。

 

そして、注意しなければならないのは、どこから「30%」上がったら売るのかという「上昇率の計算の起点」についてです。これについては、自分が買った株価から計算しがちですが、そうではなく「結果的な最安値」を起点として計算します。

 

たとえば買い値を決定するための配当利回りが「3%」で、配当額が30円だとします。その場合、買い値の目標株価は(30円÷3%=)1,000円になります。株価が1,000円になったら買うわけですが、その後、株価が下がって、結果的には900円が最安値だったとします。この場合、売り値は「結果的に最安値となった900円」から「30%」上がったところ(900円×1.3=1,170円)です。自分の買い値の1,000円の1.3倍(1,300円)ではないことに注意が必要です。

 

 

榊原 正幸

青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科教授

 

青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科教授

専攻は会計学。1961年、名古屋市に生まれる。1984年、名古屋大学経済学部卒業。1990年、名古屋大学大学院経済学研究科博士課程修了。1997年、東北大学助教授。2001年、レディング大学よりPhDを授与される。2003年、東北大学大学院教授を経て、2004年から現職。

著者紹介

連載会計学の教授に学ぶ、堅実な資産運用としての「株式投資」ノウハウ

本連載は、投資を促したり、特定のサービスへの勧誘を目的としたものではございません。また、投資にはリスクがあります。投資はリスクを十分に考慮し、読者の判断で行ってください。なお、執筆者、製作者、PHP研究所、幻冬舎グループは、本連載の情報によって生じた一切の損害の責任を負いません。

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