会計学の教授が「株式投資を重視した資産形成」を勧める理由

終身雇用制度は崩壊、預貯金の金利はほぼゼロ、一方で寿命はどんどん延びている…。一体どうやって、老後資金を確保したらいいのでしょうか。選択肢の一つに「株式投資」があります。本記事は、青山学院大学大学院教授の榊原正幸先生が、人生100年時代の資産形成に役立つ、堅実で科学的な株式投資術をわかりやすく解説します。

株式投資で、資産格差の「恩恵を受ける側」に回ろう

本記事の読者の中には、株式投資をまだ始めていない人もいらっしゃるでしょう。そういう方は、ぜひ、今すぐ始めましょう! そういう時代なのです。「そういう時代」って、どういう時代? それには、2つの側面があります。

 

まず1つ目です。1989年末にバブルが崩壊して以来30年間、日本経済は迷走してきたわけですが、この30年間に日本で起こってきたことは、「雇用の流動化」と「格差の拡大」です。

 

日本の雇用は、「流動化」したとはいっても、まだまだ流動性が欧米ほど高くはないですが、それでも、いわゆる終身雇用や年功序列はほとんど崩壊しています。そして、「1つの会社にずっと勤める」ということがむしろ珍しくなってきています。また、「1つの会社にずっと勤めていれば、会社が自分たちを守ってくれるから一生安心だ」ということもなくなっています。そういう時代なのです。

 

そういう時代だからこそ、自分が働くことに加えて、お金にも働いてもらう、「独り共稼ぎ」が必要な時代になっているのです。

 

また、「格差の拡大」も進んだと言われていますが、これは資本主義の宿命です。30年前に比べると、所得格差は明らかに大きくなりました。所得格差の根源的な原因は「資産格差」が拡大したことにあります。であれば、株式投資によって資産を増大させることで、資産格差のプラスの恩恵を受ける側になることが大切です。

日本は着実に「インフレ時代」に向かっている

そして、株式投資をぜひ始めるべき時代であるということの根拠になる2つ目の側面は次のようなものです。

 

2019年初頭の時点で、日本経済は1990年以降長く続いたデフレの時代を抜け出す出口にいます。日本人の多くは、いまだにデフレマインドに侵されていますが、日本は着実にインフレ時代に向かっています。

 

2012年末から始まったアベノミクス以降、2015年4月には日経平均株価が20,000円に達しました。その翌年の2016年には2月と6月に15,000円を少し割り込む局面もありましたが、これが2015年以来の大底と二番底となり、2017年の6月には再び20,000円を超えています。

 

アベノミクス以降の日本政府が何を考えているかというと、「日本をインフレにすること」です。なぜ日本をインフレにしたいのかというと、政府の債務が1,000兆円を超えてしまいましたし、そうなる少し前から、このままではどう考えても国の債務を返済できないと政府が気づいたからです。でもデフォルト(債務不履行)はできない。ではどうするか?

 

政府は、「債務の実質的な価値を減らしてしまえばなんとかなるかもしれない」と考えたのです。それが「インフレ」にしたい理由です。インフレになれば、債務の実質的な価値が減少します。たとえば300万円の債務があったとして、月給が30万円で、ボーナスが1回100万円であれば、債務は月給の10ヶ月分の重さですし、ボーナスを全額充当してそれだけで返済しようとしたら、3回分(1年半)必要です。

 

それが、大幅なインフレになって、月給が100万円で、ボーナスが1回300万円になれば、債務は月給の3ヶ月分となり、ボーナス1回で300万円を全額返済できるようになります。このように、インフレになると理論的には収入額や資産額は増加しますが、債務の金額は変わらないので、債務の実質的な負担が減少するのです。

 

このようなことから、政府は日銀とタッグを組んで、大規模なインフレ政策に打って出たのです。それがアベノミクスの正体です。そして、その政策は2019年初頭の時点でまだ続いています。2014年から2016年の年初にかけて原油価格が大幅に安くなりましたし、2016年には円高への揺り戻しもありました。そういった国際情勢における逆風が吹いてしまったため、いまだに目立ったインフレにはなっていないので、政府はインフレ政策を続けているのです。

 

そう考えてみれば、生活の色々な局面でインフレ的な動きは出てきています。人手不足を理由に輸送費が値上がりしています。他にも、食料品なども値上がりするものがいくつも出てきています。人々がデフレマインドから抜けきれずにいるうちに、ひたひたとインフレ社会が忍び寄ってきています。近い将来、明らかなインフレになるでしょう。株式投資は、その時のために役立つのです。なぜか?

 

株式には(不動産や金地金と並んで)「インフレ対抗力がある」からです。

 

インフレになると、企業の売上高は増えます。すると、最終利益も増えます。それを反映して株価は上がるのです。上昇過程では何らかのショックがあったり、日本経済の構造変化に対してアレルギーが現れたりして、一時的には株価が下がる可能性はあります。しかし、長期的にみれば、株価というのは物価上昇に連動するのです。

 

そういう時代だからこそ、株式投資をしておかなければならないのです。貯金だけに頼って、その額がいくらか貯まったからといって、単純に喜んでいてはいけないのです。

株を「怖い・難しい」と感じるのは勉強していないから

日本人(特に株の初心者)が株に対して持っているネガティブなイメージを列挙してみます。

 

●株は怖い

●株は難しい

●株はバクチだ

●株は、うさん臭い

●株は額に汗して働いて稼ぐのではないから、よくない

 

それでは、それぞれに対して私の考えをお示しします。

 

《ネガティブイメージ》株は怖い

 

株のことがよくわからないから怖いのですよね。人間は、よくわからないものを恐れる傾向がありますから。ですから、本連載で株のことを勉強してください。勉強すれば怖くなくなりますし、株は勉強すれば儲かるようにできているのです。

 

また、私に言わせていただければ、「株式投資をしていないこと」の方が「怖い」です。なぜならば、先に書いたように、インフレ対抗力のある資産で自分の資産を持っていないことの方が怖いからです。銀行預金では利息もほとんど付きませんし、銀行預金はインフレに連動しませんから、インフレになった時には実質的な価値が目減りします。銀行預金は額面が変わらないので、前に説明した「インフレ時には、債務はその実質的な価値が減少する」というのと同じ理屈で、金額が固定していてインフレに連動しない銀行預金は、インフレ時には実質的な価値が目減りするのです。

 

ですから、自分の資産を銀行預金やタンス預金で持っていることの方が、よっぽど怖いのです。

 

《ネガティブイメージ》株は難しい

 

たしかに株は難しい面もあります。しかし、高度なファイナンス理論や経済理論を知らなくても、株式投資はできます。株は難しいというのは、実はイメージの世界だけの話であって、実際には「おもしろい」ものなのです。囲碁でも将棋でも麻雀でも、一見難しそうですが、やってみるととてもおもしろい。それと同じような感じです。

 

それに、仮に多少は難しいとしても、多少難しいことを体得しなければ、お金は儲かりませんよね。それに、難しいからといって避けていては何も始まりません。そして、株は難しいというのは、理論的に高度なので頭脳が明晰でないと上手にできないといった難しさではなく、「買い時や売り時を見逃さないこと」、「欲張ったり、恐怖に駆られたりしないこと」といった単純な心理面に関することの方がむしろよっぽど難しいです。

 

でも、そういった難しさは、やはり「おもしろい」難しさです。ですから避けるべき難しさではなく、ぜひ体験したい難しさだと思うのです。

 

《ネガティブイメージ》株はバクチだ

 

株はバクチではありません。

 

株は科学です。それに、株はバクチだなんていうことを言うのであれば、人生そのものだってバクチです。仕事選びだって、人との出逢いだってバクチみたいなものですし、どんなに平凡に暮らしていたって、いつ病気になるか、事故に巻き込まれるかはわからないので、人生なんて所詮バクチ的な要素をいくらか含んだものなのです。ですから、バクチがイヤなら人生もやめなきゃいけなくなりますよね。そもそも株はバクチではありませんし、どうしても株がバクチだというのであれば、上述のように、「人生もバクチだから、同じじゃないですか」ということになります。

「額に汗するのではない稼ぎ」も得よう!

《ネガティブイメージ》株は、うさん臭い

 

これこそ、イメージだけ! の話ですよね。

 

株式市場というのは、「資本主義社会の根幹となる仕組み」のひとつであると認識されています。すなわち、資本主義社会において株式市場は非常に重要な役割を担っているのです。それをうさん臭いと言ってしまったら、「資本主義社会はうさん臭い」ということになってしまいます。

 

株で儲けている人をみると、人は妬(ねた)ましい気持ちになって、うさん臭いと切り捨てるのかもしれませんが、多少は妬まれてもいいから、「株で儲けている人」になっちゃった方が良いのではないでしょうか。「妬む阿呆に、妬まれる阿呆。同じ阿呆なら妬まれなきゃ損、損」くらいの気持ちで、株の達人になっちゃった方が、豊かな人生です。

 

《ネガティブイメージ》株は額に汗して働いて稼ぐのではないから、よくない

 

株は、たしかに額に汗して働いて稼ぐものではないです。手に汗握る興奮を味わうことは多いですけど。そして私は、「額に汗して働いて稼ぐ」ことをひとつも否定していません。それは素晴らしいことですし、できれば健康なうちはずっと働いた方が良いと思っています。

 

ですからズバリ、「株は副業」なのです。それが株式投資の位置づけです。

 

本業をきちんと持っていただいて、額に汗して働いて稼いでください(私も大学教授という本業を持っています)。そして、「額に汗するのではない稼ぎ」も得てください。

 

ちなみに、株式投資で稼ぐことは、上達すればたしかにバリバリの肉体労働よりは楽ですし、頭脳労働的な側面が大きいので、どうしても「株は額に汗して働いて稼ぐのではない」と思われがちです。しかし、本気で株式投資に向き合う場合は、調査と分析にかなりの時間と労力を要しますから、実は株式投資は不労所得ではなく、れっきとした「額に汗して働いて稼ぐ」ことなのです。

 

以上、特に初心者の方や多くの方が持っていらっしゃる株に対するネガティブなイメージに対して、「経験者は語る」といった感じで真実をお伝えしてみました。ここに書いたように、株式投資は今のご時世、ぜひオススメです。株式市場が上昇基調であろうと下落基調であろうと、そんなことは関係ないのです。ライフワークとして株式投資に向き合い、長期の資産形成の手段として実践し続けていくことをオススメします。

 

 

※本記事は、『現役大学教授が実践している堅実で科学的な株式投資法』(榊原正幸著、PHP研究所)から一部を抜粋し、人生100年時代の資産形成に役立つ、堅実で科学的な株式投資術を紹介したものです。

 

 

榊原 正幸

青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科教授

 

青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科教授

専攻は会計学。1961年、名古屋市に生まれる。1984年、名古屋大学経済学部卒業。1990年、名古屋大学大学院経済学研究科博士課程修了。1997年、東北大学助教授。2001年、レディング大学よりPhDを授与される。2003年、東北大学大学院教授を経て、2004年から現職。

著者紹介

連載会計学の教授に学ぶ、堅実な資産運用としての「株式投資」ノウハウ

本連載は、投資を促したり、特定のサービスへの勧誘を目的としたものではございません。また、投資にはリスクがあります。投資はリスクを十分に考慮し、読者の判断で行ってください。なお、執筆者、製作者、PHP研究所、幻冬舎グループは、本連載の情報によって生じた一切の損害の責任を負いません。

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