中東ホルムズ海峡における自国のタンカー船などの安全確保について、政府が米国主導の有志連合への参加に関し、結論を先送りする方針にあることを、4日、共同通信が報じた。同海峡は日本の原油調達の生命線となっている。6月13日には、日本の海運会社の船籍が被弾しており、緊張の高まりに伴い船舶の保険料は高騰中だ。昨今では、オペレーティングリースの人気が高まり、船舶への投資案件は増加傾向にあるが、非常時に対する危機管理はなされているのだろうか。船舶投資において知っておくべきリスクについて、改めて検証する。

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ホルムズ海峡問題で船舶戦争保険が急騰!

経済産業省が公表している直近の「石油統計速報」(令和元年7月分)をみると、日本における原油輸入の中東依存度は86.9%と依然高い水準にあり、13,134,829kl(前年同月比102.5%)を輸入している。イランからの輸入に関しては、米国がイラン産原油の禁輸を求め、5月2日に適用除外ルールを撤廃したことから、5月度より停止された。

 

米中貿易摩擦などによる景気停滞懸念から原油国際価格は下落局面にあるが、ホルムズ海峡付近を運航する船舶の保険料率は事件前比で約20倍に上昇、日本の海運各社は荷主企業に負担を要請した。船舶の保険には、船舶保険、船舶戦争保険、船主責任保険(P&I保険)、船舶不稼働損失保険などがあり、ホルムズ海峡での有事の際、該当すると想定されるのは船舶戦争保険となる。投資家にとって、船舶保険料の高騰はどのような影響があるかについては後述する。

 

運航リスクが高まっている…

 

日本の投資家による船舶への投資は、海運会社の船舶調達スキームとして需要があるが、現在では国内案件は少なく、外国の海運会社へ向けてのものが多くなっている。そのため、日本の海運会社が運航する船舶についての報道に関しては、影響は限定的なものといえる。しかし、ホルムズ海峡の緊張は国際的な問題であり、投資する船舶の貸出先が外国の海運会社であろうとも、少なからずの影響が想定される。

 

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船舶投資には、どのようなリスクがあるのか?

船舶に投資する際、代表的なリスクは以下の3つが想定される。

 

① 貸出先である海運会社の信用リスク

② 市況による船舶の資産価値のリスク

③ 為替リスク

 

ホルムズ海峡の緊張が高まるなか、上記にどのような影響があるか考察してみよう。

 

まず①の「貸出先である海運会社の信用リスク」だが、これはリース料の支払いに関するリスクである。運航にかかる保険料が高騰すると、海運会社の顧客である荷主の財政も圧迫され、海運会社の経営も厳しくなる状況が想定される。投資の際には、借り手の財政に関する信用管理をしっかりと行える投資先であるか、確認することが望ましいだろう。また、米中貿易摩擦などの影響で、貿易先が大幅に変更となる状況も想定されるため、海運会社が安定した経営をするためには、柔軟な海運ルートを顧客に提案できる体制が望まれる。

 

②の「市況による船舶の資産価値のリスク」は、投資した船舶を期待通りの価格で売却できなくなるリスクだ。船舶投資において、貸出期間の満了時などに売却する際に、市場価格が大きく下落していることで、投資家が損失を被る可能性がある。ホルムズ海峡の問題を含め、国際情勢による貿易量の増減は船舶の需給バランスに影響し、船価とも関連してくるため、造船の建造量や受注量の推移と合わせて確認しておくべきであろう。

 

③の「為替リスク」について、船舶投資では投資した船舶の貸出に関して、海外の海運会社が借主となることが多いため、ドル建てやユーロ建てなどの外貨建てで、出資や収益の受け取りが行われることが多い。このとき、為替変動で差損を被る可能性がある。ホルムズ海峡関連の情勢は直接的な影響はないであろうが、市場のリスクが高まると上昇する傾向のある「円」の急騰には注意したい。

リース期間が短期のオペレーティングリースが人気

船舶投資のスキームとして人気のオペレーティングリースに関して、影響が気になる投資家も多いだろう。オペレーティングリースは、一度投資をすると、原則、中途解約できず、貸出(リース)期間の終了まで資金を動かせない。リース期間はおおむね10年前後となっている。

 

投資家にとって、リース期間が短いほうが早期に出資金や利益を回収できるため、まれに組成される比較的短期の案件(5年~7年)は需要が高く、人気が殺到する傾向がある。国際情勢の先行き不透明感から、今後、短期の案件に関しては、ますます投資家の需要が高まることが予測されるため、有益な情報をいかに素早く仕入れることができるかの、熾烈な争いとなってくるだろう。

 

 

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