2019年6月1日から新制度が導入された「ふるさと納税」において、新制度の基準に合わないという理由で大阪府泉佐野市が指定から除外された問題で、2日、国の第三者機関である「国地方係争処理委員会」が、除外判断の再検討を総務省に求めた。泉佐野市は、旧制度の規定に則った運営をしており、新制度の基準に照らし合わせて不適正とすることは認められないとした。問題となった、ふるさと納税の新制度とはいかなるものなのか?

「ドカ盛り」表記はダメ…となった背景

<「適切な選択を阻害するような表現」としては、具体的には、「お得」、「コ
スパ(コストパフォーマンス)最強」、「ドカ盛り」、「圧倒的なボリューム」、
「おまけ付き」、「セール」、「買う」、「購入」、「還元」、これらに類似する表現
等が考えられる。>

 

※ 総務省「ふるさと納税に係る指定制度の運用についてのQ&Aについて」より(原文ママ)

 

「コスパ最強」、「ドカ盛り」……まるで繁華街かコンビニのお弁当コーナーかのような広告色の強い刺激的な表現が並んでいる。上記は、ふるさと納税を新制度に基づき運用していくために、各都道府県、市区町村に送られた事務連絡からの抜粋である。ふるさと納税がいかに返礼品の過当競争となっていたかが伺える。

 

あくまでも「寄付に対する税控除」をメリットとするふるさと納税制度であるが、実際は返礼品の旨味に多くの人が飛びついた。「どうせ貰うなら、なるべく得をしたい」と考えるのは当たり前の心理であったのか、還元率や換金性が求められるようになり、泉佐野市のような例が出てきた。実際、泉佐野市は平成29年度の実績で納税額135億3300万円と2位の都農町(79億1500万円)を大きく引き離し、1位となっている。

「ふるさと納税」は規制されるほど、お得だったのか?

ふるさと納税は、適用下限額の2,000円を負担することで、それ以上の寄付金(上限あり)に関して、所得税と住民税から控除される。

 

簡単に説明すると、寄付額から2,000円を差し引いた金額を基に計算し、所得税の控除に関しては還付金が戻り、住民税に関してはその余りの分が控除される。

 

寄付をして返礼品をゲット!?
寄付をして返礼品をゲット!?

 

これだけだと何がお得かわかりづらいが、この寄付額に対する「返礼品」が手に入る。これは、ただ持っていかれるだけだった税金分なので、得をしたというわけだ。

 

なので還元率が高いほうがお得であることは間違いなく、ふるさと納税という名が表すように「地方を応援したい」という趣旨よりも、「返礼品の還元率が高い自治体はどこだ?」という視点で選択されるようになった背景がある。ここでも突出して1位となっていたのが泉佐野市で、航空券の購入に使えるPeachのポイントギフトなども返礼品にしていた。

 

ちなみに6月1日からの新制度では返礼割合は3割まで、返礼品は地場産のみ……と規定された。

返礼品にも「税金」がかかる!?

ちなみに、ふるさと納税での寄付行為と返礼品等の提供は、「寄付の対価ではなく別途の行為」とされている……ということを前提にはしつつ、返礼品等の提供に関して、地方団体は以下の義務があるとされている。

 

<返礼品等を提供する地方団体は、当該返礼品等を受け取った場合の経済的利益については一時所得に該当するものであることを返礼品等の提供の際等に、寄附者に対して周知すること。 >

 

※ 総務省「ふるさと納税に係る指定制度の運用について」より(原文ママ)

 

返礼品は「一時所得」と見なされ、年間の合計が50万円を超えると税金がかかることになる。返礼割合は3割までとなったので、よほどの寄付好き(?)ではないかぎり、50万円を超えることはないだろうが、返礼品以外にも一時所得と見なされる所得があり、合算となるので、注意が必要だ。

 

一時所得には以下のようなものがある(国税庁ホームページより抜粋)。

 

(1)懸賞や福引きの賞金品(業務に関して受けるものを除きます)

(2)競馬や競輪の払戻金

(3)生命保険の一時金(業務に関して受けるものを除きます)や損害保険の満期返戻金等

(4)法人から贈与された金品(業務に関して受けるもの、継続的に受けるものは除きます)

(5)遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金等

 

生命保険の一時金に関しては、保険料の負担者が保険金受取人であった場合、満期保険金等を一時金で受領した場合には一時所得となる(年金で受領した場合は雑所得)。懸賞、競馬や競輪などはあまりないかもしれないが、生命保険に関しては気をつけておきたい。

結局、得を感じるのは「富裕層」だけなのか?

ふるさと納税に関しては、「富裕層が得をする制度」というイメージも強い。もちろん富裕層ではなくても使える制度ではあるが、金額が大きいほど、もらえる返礼品の種類も数も多くなり、「やりがいのある」制度となる。ちなみに低所得者の場合、寄付することはできるが、使うと損となることもある。

 

今回、返礼割合が3割までと制限されたことで、お得感が減少したこともあり、わざわざ手間をかけてまで実行する価値を、所得の低い層が感じられるかは疑問だ。もちろん、ふるさと納税の本質は、「生まれ育ったふるさとに貢献できる制度」、「自分の意思で応援したい自治体を選ぶことができる制度」であるわけだから、所得の高低、返礼品の多さで意思決定すべきものではないのだが、そんな性善説に基づくような綺麗事では、現実的には使いづらい低所得層も多いのではないか。

 

手持ちが多いほど旨味が大きいのは、お金周りに関してはだいたいその傾向があり、大きな資産を持っていればローリスク・ローリターンでも、意味がある金額を増やせる。ところが、小さな資産であれば、ローリターンではジリ貧だし、かといってハイリスク・ハイリターンでは失敗したときの破産リスクが高い。

 

ふるさと納税について「富裕層が優遇される制度だ。けしからん」との意見もあるが、お金周りで公平な制度を作ろうとすると、資産の大きい人が有利になってしまうのは仕方がない一面もある。だからといって、その分、金持ちが不利になるような仕組みを作るのは(税金はそうなっているが)、それこそ公平性に欠けるだろう。

 

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