rとlの違いもわかるように!子どもの「英語耳」を育てる方法

赤ちゃんには、あらゆる音声を同等に聞き分ける能力がありますが、一つの言語を聞かされることで、母語以外の音声を聞き分ける能力を失っていきます。しかし、赤ちゃんのときから英語の歌や絵本読み聞かせCDや、英語のアニメ等を活用して、自然に英語のヒアリングを取り入れることで、英語を聞き取る能力は保たれるのです。本記事では、子どもが本来持っている英語を聞き取る力を育てる方法を見ていきます。

聞き取り・発音力は幼いときが勝負!

生まれたての赤ちゃんの頭の中には、「日本語」「英語」という区別があるわけではありません。その代わり、あらゆる音声を同等に聞き分ける能力があります。しかし、母親や父親、周囲の人の話し声を耳にしているうちに、次第に母語以外の音声を聞き分ける能力を失っていくのです。

 

例えば、日本語の「ア」と英語のaは同じ音であるように聞こえるかもしれませんが、実は異なる種類の母音です。赤ちゃんは生後6カ月ほどで、母語以外の母音を聞く力が消失し、「ア」もaも同じように「ア」としか聞こえなくなります。

 

日本語の「さしすせそ」や「かきくけこ」の子音と英語のsやkの音も実は異なるものですが、生後10カ月ほどで、子音への感受性も消えてしまいます。日本人の場合よく引き合いに出されるのが、英語のrとlの区別がつかないということです。母語以外の子音への知覚を失った結果、rもlも日本語の「らりるれろ」の子音として認識してしまうようになるのです。

 

日本語は子音の後に必ず母音が入る言語(「ん」は例外)であるのに対し、英語は子音を連続させることができるということを意識したことはあるでしょうか。例えば、train(電車)という語を発音するとき、英語ではtとrの子音が連続し、間に母音が入りません。日本語を母語とする人の場合、これを日本語の規則に合うよう脳が修正し、tの後に「オ」という母音を挿入して、to-re-i-n(トレイン)という音として解釈します。こういった聴覚の最適化は、生後14カ月ごろには完成してしまうという研究があります。

 

英語の母音や子音が聞き取れるような「英語耳」は1歳2カ月までにつくっておく必要があります。それを過ぎると、子どもは、日本語向けに最適化された耳を通して、「慣れない音」として英語を聞くことになってしまいます。

 

赤ちゃんはまず聞き取ることから始め、それを自分の口で発話することを身につけていきます。生後3カ月から半年で、うなり声、「ばぶばぶ」「あうー」という声を上げるようになり、1歳ごろには単語を発音できるようになります。「これ、ちょうだい」といった「二語文」を話し始めるのが1歳半ごろ、それ以降、言語能力は急速に発達し、4歳ごろには比喩や類推を理解するようになります。

 

このような言語発達の過程において、英語の音を正確に聞き取ることができなければ、自分で正確に発音することができません。「rとlの区別ができなくても、それなりに通じるはず」と思っている人もいるかもしれませんが、実はこの思い込みが、日本人の英語を通じにくいものにしてしまっています。

 

英語の発音には最低限のルールがあり、rとlの違い、sとthの違いなどは、その基本ルールの一つです。文法、語彙などは成長してから努力してそれなりに補うことも可能ですが、聞き取り、発音に関しては、幼いころに身につけないと、習得するのに大変な遠回りをすることになります。

 

私が日本の早期英語教育について調査を行った際、インド人の子どもたちが多く通い、教師もインド人ばかりのインターナショナルスクールを訪問しました。インドでは多くの人が日常的に英語を話すことができますが、その発音は独特で、例えばthの音がdに近くなったり(thingが「ディング」に)、wの音がvになったり(waterが「ヴォーター」に)という特徴があります。

 

幼児期にインド系のインターナショナルスクールに2年通った日本人の子どもが、のちにイギリス系のインターナショナルスクールに転園した際、インド英語の特徴が抜けるのに半年かかったとのことでした。最初に耳にし、身につける音とはそれほど強い影響力を持つのです。英語の音を吸収するのが早い就学前の子どもでも半年かかったのですから、それよりも成長した子ども、もしくは成人がいったん身についた音を矯正するのはどれだけ大変なことか、想像していただけるのではないかと思います。

すきま時間を使って、毎日必ず英語を「浴びせる」

0歳から2歳くらいまでは、子どもは大人の選ぶものを受動的に受け入れていることが多いでしょう。この時期は英語の歌や絵本読み聞かせCDを聞かせたり、英語のアニメや映画を見せたりして、普段の生活の中に自然に英語のヒアリングを取り入れていきます。

 

基本的に1日2〜3時間は英語に触れていてほしいと思いますが、勉強とは異なり、「1日のうちにこれだけのことをやらなければならない」と決まっているわけではありません。ひまを見つけては英語の音を聞いてもらうようにして、それを積み重ねていくことです。

 

大切なのは、毎日続けることです。「今日は英語に触れなかったから、明日はたくさんやろう」というのは、あまり効果的ではありません。英語の耳をつくるには英語を聞くのを習慣化することが大切です。日々少しずつでもよいので、頻繁に聞かせるようにしてください。

 

3〜4歳になると、親が与えたものをただ聞いている、見ているというのではなく、自分のお気に入りの歌やテレビ、アニメができてきて、CDやテレビのチャンネル、DVDなどを自分で選ぶようになります。それまで素直に親の選ぶ英語のものを受け入れていたのが、次第に日本語のものを好んで聞くようになると、「今日は英語のを聞いてね」と干渉したくなるかもしれませんが、それはあまり得策とはいえません。子どもは親が無理強いしようとしていることを敏感に感じ取り、英語を聞くことに反発を感じてしまいます。

 

「英語だから」聞くのではなく、「好きだから」「楽しいから」聞くという姿勢が大切です。子どもが自分の好きな歌やテレビを選ぶようになる前に、子どもが自分にとってお気に入りの英語の作品を見つけることができるようにしておきましょう。ときには2〜3日英語から離れて不安になってしまうこともあるかもしれませんが、幼いころに好きになった作品は、体の中に自然にしみこんでいるものです。身の回りにいつも英語の歌やテレビ、DVDなどがあれば、いつかまた英語の作品に戻ってくるでしょう。

 

小学校に上がってからも、英語のアニメ、テレビ、インターネットの動画、歌などできれいな英語を聞き続けるようにしましょう。ただし強制はせず、食事の時間にさりげなく英語の歌を流しておくようにするのがポイントです。

 

また、日英両言語の本を多読させることをお勧めします。英語に強くなっても、日本人であるからには、日本語も美しくなければ本末転倒です。英語を拒否するようならば、少し英語から遠ざかる時期を設けることを恐れてはいけません。子どもの心は大人の都合どおりにはいかず、想像以上に繊細なのです。

 

子育て中は、意外と忙しいものです。ミルクやおむつ替えの時間がしょっちゅうやってきて、その合間に掃除、洗濯、買い物を済ませるとなると、あっという間に1日が終わってしまいます。そんな中、子どもに英語を聞かせる時間をどうやって確保すればいいか、悩んでしまう人もいるのではないでしょうか。

 

英語力を鍛える土台となるヒアリング力は、改まって机に向かって取り組むようなものではなく、すきま時間をうまく使えば身につけやすい能力です。子どもに英語を聞かせるだけであれば、そのために時間をつくる必要はなく、普段の生活の中のちょっとしたすきま時間を活用しましょう。

 

食事のしたくをしている間、子どもに英語のDVDを見せたり、昼寝の前に英語の子守歌のCDを流すなど、少しの時間を積み重ねることで、全体としてかなり長い時間英語に触れることができます。

 

私は娘と車で移動するときはいつも英語の歌を流していました。定番の童謡のほか、掃除をするときの歌、お風呂に入るときの歌など、歌詞がそのまま日常の中で使えるような曲もあります。スマートフォンのアプリとしてダウンロードしたりストリーミングで利用したりすることができるので、例えばウェブで「Super Simple Songs」を検索してみてください。スマートフォンやタブレットを持ち歩けば、レストランで順番を待っているときなど、外出時のすきま時間にも英語の歌に触れることができます。もちろん、状況や場面に応じて周囲の迷惑にならないよう、音もれのしないイヤホン、ヘッドホンを使うといった配慮も忘れないようにしてください。

胎児のころから日常的に英語を聞く環境をつくっておく

赤ちゃんが胎内にいるときに聞く音は、人が話している会話よりも音楽のほうが届きやすく、また男性よりも女性の声のほうが伝わりやすいという研究があります。子どもをバイリンガルに育てたければ、妊娠期間中のリラックスタイムや、家事の最中に聞く音楽に、英語の音楽を取り入れてみるとよいでしょう。特に母親自身とお腹の中の赤ちゃんが落ち着いた気持ちになれるよう、リズムやテンポがゆるやかな洋楽の曲や、女性が歌う童謡、子守唄などがお勧めです。

 

基本的に、好きな曲を聞くということでかまいませんが、できるだけ気持ちが穏やかになるような曲目や、子どもに聞かせても問題ないようなテーマや内容のものがよいでしょう。母親がゆったりした気持ちで聞くと、その気持ちが赤ちゃんにも伝わります。

 

例えば、ビートルズの「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」やカーペンターズの「イエスタデイ・ワンス・モア」などは使われている単語が比較的平易で、幅広い層にお勧めできる曲です。そのほかにも、映画『サウンド・オブ・ミュージック』の「サウンド・オブ・ミュージック」「ド・レ・ミの歌」「エーデルワイス」などは、童謡としてなじみのある曲目です。

 

そのほか、『メリー・ポピンズ』やオードリー・ヘプバーンの『マイ・フェア・レディ』など、名作ミュージカル映画もお勧めです。アルフレッド・ヒッチコック監督の映画『知りすぎていた男』でヒロインのドリス・デイが歌う「ケ・セラ・セラ」も、今では古典的名曲として人気があります。

 

英語の童謡・子守唄では、一定のパターンの歌詞が繰り返されるものがお勧めです。例えば「Five Little Monkeys」は、次のような歌詞が基本となります。

 

Five little monkeys jumping on the bed

One fell off and bumped his head

(5匹の子ザルがベッドに飛び乗り、1匹が落ちて頭を打った)

 

子ザルの数が4匹、3匹・・・とだんだん減っていき、最後には1匹になってしまいます。ネイティブの子育てにおいてポピュラーな童謡で、こういう歌を聞いているうちに、英語のフレーズとともに数の概念を覚えることができます。同様の歌に、「Ten in the Bed」、「Ten Green Bottles」といったものもあります。

 

英語の童謡・子守唄では、日本語訳でもよく知られている曲を選ぶと英語が苦手な母親でも聞きやすいでしょう。例えば、日本語で「おやすみ、赤ちゃん」というタイトルで知られている歌「Hush, Little Baby」は、英語圏の童謡マザーグースの一つです。日本の子ども向け歌集の定番「きらきら星」も、元は「Twinkle, Twinkle, Little Star」という英語の童謡です。こうした英語の童謡ばかりを集めたCDは書店やミュージックショップで入手することが可能です。インターネットの動画配信サイトYouTubeでも聞くことができます。

 

英語の童謡は、メロディーラインが同じで歌詞が異なるものもたくさんあります。さらには、英語指導に有用だとESL(英語を母語としない人たち)向けの歌もベースが昔からある童謡のメロディーであることが多いので(著作権が切れているという理由もあるのでしょう)、耳慣れておくだけで後から別の歌詞の歌に触れても覚えが早いという利点もあります。「きらきら星」と「アルファベットの歌」は、メロディーが同じです。そうした歌が沢山あります。

 

子どもが生まれてからも、生まれる前に聞いたのと同じ曲を聞かせてあげましょう。胎内にいたときの安心感や居心地のよさを、歌声とともに思い出して落ち着いた気持ちになるはずです。それとともに、英語の音が、子どもの耳にしっかり定着していくのです。

 

私自身、娘がお腹の中にいたころには、英語の歌を聞いたり、海外ドラマが好きでよくテレビやDVDで見ていたので、きっと娘もその英語のセリフを聞いていたはずです。

 

 

三幣 真理

幼児英語教育研究家

 

幼児英語教育研究家

ヒューストン生まれ。4歳で日本に帰国したのち、12歳でカナダへ。慶應義塾大学理工学部入学後、環境情報学部へ転籍。フランス語(第一外国語)、イタリア語(第二外国語)を学び、語学への理解を深める。卒業後は、日本アイ・ビー・エムシステムズ・エンジニアリング株式会社勤務、フリーランスで翻訳・通訳の仕事に携わるほか、日本の英語教育学者の第一人者である東京大学名誉教授の岡秀夫教授に師事。
現在は、敬愛大学でSkype英会話の講師を務めるほか、幼児英語教育研究家として子どもたちの英語教育に携わる。日本人男性との間にもうけた一女をバイリンガルに育て上げた。

http://life-produce.jp/

著者紹介

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