米国は予定通り、9月1日に対中制裁関税の第4段を発動、対する中国も即座に報復関税を実施した。これを受け、2日の東京株式市場では日経平均株価が反落し、84.18円安の20,620.49円で終えた。関税発動後、ニューヨーク株式市場より前の取引となったこともあり、市場の不透明感から5年ぶりの薄商いとなり売買取引は1兆3,299億円と低水準であった。日本時間の今夜、ニューヨーク株式市場はどのような値動きを見せるのだろうか。今後の展開を予測する。

制裁関税第4段は「消費者」にも影響してくる

加熱する米中貿易摩擦ではあるが、トランプ米大統領は「クリスマス商戦のために」スマホや玩具などについては12月の発動とするなど、自国の不利益とならないように柔軟な姿勢も見せている。9月1日の関税発動に関しては、市場は既に織り込み済みであり、大きな下落はしないだろうとの見方も強い。


ただし、それらの製品に重い関税がかけられるとなると、米国の消費者への影響は少なくない。関税分が価格に上乗せされ、インフレに振れる可能性もある。これは需要が増えたことによる物価上昇ではないので、たとえ再びFRBがインフレ抑制策として「利上げ」に舵を切ったとしても、その効果は限定的となる可能性が高い。

 

トランプ大統領の執拗な「利下げ」要求は、上記の状況を見越してのものだったという見方もできる。市場にとっては不透明な米中貿易摩擦の先行きであるが、トランプ大統領の頭の中では、中国側の出方という不確定要素はあるものの、何パターンかの方向性が決まっているだろうからだ。

 

第4段の制裁関税は、消費者にも影響が?
第4段の制裁関税は、消費者にも影響が?

 

消費者にも影響を与える「第4段」の関税で物価が上昇し、インフレとなると、中長期的には、景気が下降し、スタグフレーションに陥るリスクさえある。その見通しがあるならば、早期に利下げを敢行し、なるべく景気を高めておく「予防策」の奨励は腑に落ちるものである。

総力戦の様相を呈してきた貿易戦争…米はまとまるか?

そこまで考えると、トランプ大統領が8月30日に、

 

“....We don’t have a Tariff problem (we are reigning in bad and/or unfair players), we have a Fed problem. They don’t have a clue!”

 

と連邦準備制度(Fed。FRBはFedの最高機関)を攻めるツイートした気持ちもなんとなくわかる。また、同日、

 

“If the Fed would cut, we would have one of the biggest Stock Market increases in a long time. Badly run and weak companies are smartly blaming these small Tariffs instead of themselves for bad management...and who can really blame them for doing that? Excuses!”

 

「弱い企業たちが下手な経営を棚に上げて、関税を責めるのは言い訳だ!」ともツイートしている。

 

ここで気がつかされるのは、トランプ大統領が、米国の他の機関や市場が考えている以上に、「総力戦」の構えをとっていることだ。中国との貿易「戦争」に勝利するためには、FRBや米企業の協力が不可欠であることを暗に表明しているのである。

 

トランプ大統領が「GDP1位の米国と2位の中国の覇権争いであり、今、少々痛んでも、確実に勝利することが自国の利益に繋がる。なぜ協力しないのだ!?」と考えているのであれば、攻撃的な言動もわからないことはない。

トランプ米大統領は「勝つ」ことができるのか?

現状の戦い方を続ければ、最終的には米国は勝つ底力はあるだろうが、ひとつ死角があるとすれば、2020年に控えた大統領選挙である。トランプ米大統領は、ここでの勝利も視野に入れた戦略を余儀なくされる。戦略・戦術的に優れていなくても、人気を取り続けられる政策を取るしかないのだ。

 

例えば、トランプ大統領は、関税で得た収入から、ばら撒きで国民に還元するかもしれないが、大統領選には多少の影響はあっても、経済的には解決に至らないだろう。

 

トランプ大統領がとっている政策が正しいかどうかの判断は別にして、民主主義における政治家の「人気取り」が、経済政策の効率性を失わせるのであれば、本末転倒な話である。トランプ大統領の本当の手腕は、米中貿易戦争と大統領選挙の両方に勝てるかどうかに問われることになるだろう。

 

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