「なぜ会社は、自分にチャンスを与えてくれないのか」
1年前の自分から見て現在の自分は成長しているでしょうか。それとも、ほとんど変わっていないでしょうか。自分の「期待値」を超えることができているでしょうか。
新しい仕事を始めるとすべてが新鮮で覚えることが多く、大変ではありますが自分の成長を日々実感することができます。しかし、2年、3年と同じ職場で働いていると業務がパターン化されてしまい仕事を始めたときと比べ新しいことを学ぶ機会が減り、成長のスピードは鈍化していきます。
ある程度の仕事を淡々とこなすことができるようになり、気がつくと自分に指導をしてくれる人は誰もいない状態になっています。刺激のない毎日のなかでモチベーションが下がり、「今の職場では、もう成長できない」「今の職場でやれることは、全部やった」「なぜ会社は、自分にチャンスを与えてくれないのか」と考える人が増えてきます。実際に転職を希望する方からよく聞く転職理由です。
しかし、私はこの考え方は見直すべきだと強く思います。
人は、どんな環境であってもつねに成長し続けることができます。
最初は、誰もが上司や先輩から指導してもらう生徒の立場からスタートします。いずれ、生徒は先輩や上司になり生徒を指導する立場になります。教えるなかで学びもありますし、自らも仕事のなかで課題を見つけて解決策を模索していく必要があります。
「今の職場では、もう成長できない」と感じている方は、指導してもらう生徒の立場で時間が止まってしまっているのです。本当の学びや成長は、ある程度知識を身に付けてから始まるのです。
自発的に課題を見つけて解決策を模索できる人であれば、「今の職場でやれることは、全部やった」と思うことはないはずです。プロセス改善や新規の提案など、やりたいことがたくさんあり、新しい取り組みを成功させるためにワクワクしているはずです。
「新しいことにチャレンジしてみたいけど、マネージャーじゃないからできない」
「意見を出しても通るわけがない」
と思っている方もいるかもしれません。しかし、新しいことにチャレンジするのに役職は関係ありません。マネージャーに積極的に提案することもできますし、リーダーシップを発揮してチームメンバーを巻き込みチーム全体の意見として提案することもできます。
社内の提案が100%通ることは、ほとんどありません。意見が通らないのであれば、どうやったら通すことができるかを真剣に検討することに意味があります。
自発的に課題を見つけて、解決策を提案・実行できる人は、決して多くありません。ですから、これができる人であれば社内から評価されるのは間違いありません。それにより、新しいチャンスやチャレンジが黙っていても集まってきます。
仕事ができる人のところに良い仕事は集まってくるのです。与えられた役割(ポジション)のなかで、自分の色をドンドン出していきましょう。誰でもできる仕事をするのではなく、自分にしかできない仕事をすることで付加価値のある人間になることを目指してください。
「達成したい目的と自らの反省点」二つの観点とは?
人は、満たされない生き物であると言われることがあります。そして誰もが現状に対して、何かしらの不満を感じています。職場の同僚、上司や取引先との関係、仕事の内容、プライベートに至るまで不満の形は千差万別です。
これらの不満は、基本的に一人で完結するものではなく他人と関わることによって生じます。自分の「期待値」に相手が達していないから不満を感じるのです。この不満をどのように解決するのが、最も効果的でしょうか。例を見ながら考えてみましょう。
〈例〉
「あなたは、新しく配属して来た新人の教育担当になりました。この新人は、何度も何度も同じミスを繰り返し注意しても改善しません。あなたは、どのように対応するべきでしょうか」
選択肢は、複数あります。直球の対応策としては、「重要なことなので、ガツンと説教をする」になります。部下や後輩の指導をした方であれば、ご存じだと思いますが怒るというのはエネルギーを相当に使います。しかも、相手のことを思って指導したとしても意図が伝わらずモチベーションを下げる要因となり、ヘソを曲げてしまう可能性もあります。
リスクがある一方で新人が改善する保証はどこにもありません。そのため、この直球アプローチは積極的にお勧めできません。
ここで私がお勧めしたい方法は、「自分を変える」ことです。
このケースでは不満の対象は「ミスを繰り返す新人」です。「達成したい目的」と「自らの反省点」の二つの観点で物事を考えていきましょう。
このケースでは、あなたの「達成したい目的」は、新人がミスを繰り返さないように改善することです。モチベーションを下げることでも、彼を叱ることでもありません。
また、何度も同じミスが発生するというのは、直接的には新人の過失ですが同時に指導が適切ではなかったことも考えられます。そのため、「自らの反省点」についても振り返ってください。どんなプロのトレーナーであっても100%完璧な指導などあり得ません。教える生徒が変われば、指導方法も合わせて調整する必要があるのです。
これらの点を踏まえて、自らの指導方法を変えることができれば、新人の業務も改善できる可能性が高まります。また新人の行動に依存するやり方ではなく、自らを変えるやり方であれば確実に実行することができるのです。
指導以外でも「自分を変える」アプローチは、非常に有効です。職場で誰かに仕事を依頼することは、頻繁に発生すると思います。その際に、なかなか対応してもらえず困っているとします。この場合も同様に「達成したい目的」と「自らの反省点」を考えます。
「達成したい目的」は、納期までに依頼した仕事を完了してもらうことです。「自らの反省点」は、自分の依頼するタイミングやお願いの仕方などを見直してみることです。余裕をもって依頼するだけで、受け取る側は仕事の調整が楽になります。最後にありがとうのお礼とコーヒーをご馳走するだけで、またお手伝いしようと思ってくれるでしょう。
相手の不満を口にするだけなら誰でもできますが、状況は、何も変わりません。しかし、自分自身を変えることで周りの人に影響を与えることは可能です。
繰り返しになりますが、何事も100%の人は存在しません。そして、物事を今よりも少し良くすることは誰にでもできます。
ぜひ、一歩下がって自分自身を客観的に見てください。自分を更に成長させてくれるヒントがそこにあるはずです。