本記事では、『正しく評価してくれないこの会社に限界を感じたとき読む本』(ぱる出版)より一部を抜粋し、サラリーマンが職場や転職市場で自分を上手くアピールし、評価を上げる方法をレクチャーします。今回は、自分の評価を下げないための、上司への効果的な「ホウレンソウ」について解説します。

ホウレンソウは「コスト」として認識すべき

新入社員として働き始めて報告・連絡・相談(ホウレンソウ)を徹底するように指導をされた方も多いと思います。

 

もちろん右も左もわからない新入社員であれば、どんな細かいことであってもしっかりとホウレンソウを徹底することでトラブルを未然に防ぐことができます。しかし、2年目3年目になっても同じようにホウレンソウを徹底しているだけでは評価の低い人になってしまいます。それは、なぜでしょうか。

 

誤解をしないでいただきたいのですが、これはホウレンソウを行なうべきでないということではありません。「ホウレンソウをするべき内容をしっかりと見極める必要がある」ということです。実は、不必要なホウレンソウは、事実として会社に損害を与えているのです。

 

たとえば、あなたが上司に10分の報告を1日に6回しているとします。年間の労働日数を250日と想定した場合、あなたは、上司を250時間拘束していることになります。上司の年収が1000万円とすると、時給5000円×250時間=125万円のコストになります。もしチーム全体の会議だった場合はどうでしょう。1時間で数十人分の時間を拘束することになるため、更に大きなコストインパクトになるとご理解いただけると思います。

 

実際にホウレンソウをコストとして認識することで、どのようにしたら効率的にコミュニケーションをとるべきかを考えることができます。

 

案件によっては、時間をとってFace to Faceの打ち合わせをする必要があるかもしれませんし、電話やメールで済ますことのできる案件かもしれません。それぞれの案件の重要度と緊急度に合わせて判断することが必要です。

最低限の説明に留め、細かい経緯や補足説明を割愛する

ホウレンソウを効果的に行なうためには、まずは情報を咀嚼して整理することです。これだけで、ホウレンソウに必要な時間をギュッと圧縮することができます。また共有すべきか悩んだ際は、「相手にとって、知っていないとリスクがあるか?」を自分自身に問うてみるとよいでしょう。

 

たとえば、相手が上司であれば、業務上のトラブルや他部署からの突発的な依頼などはなるべく早い段階で共有しておいたほうが望ましいです。一方で業務上の細かい内容や庶務的な内容については、割愛しても支障ないでしょう。

 

もう一つ意識すべきなのは、ホウレンソウの粒度感(細かさのレベル)です。あなたは、ホウレンソウをする際に物事の背景を含めてすべて丁寧に説明していますか? これは、正解の場合と不正解な場合があります。すべては、相手が既に知っている情報量に依存するのです。

 

あなたの上司を例に考えてみましょう。あなたの上司は、あなた以外にその他のチームメンバーの業務についても見ています。見えないところで、他部署とやりとりをしているかもしれません。あなたが思う以上に色々なことについて知っているかもしれません。もし、あなたが報告した内容が既に上司の知っている情報であったとしたらどうでしょう。お互いにとって時間の無駄となってしまいます。一方で、知らない内容であれば詳細を聞かなくては内容を理解できないかもしれません。それでは、どのように対応したらよいのでしょうか。

 

答えは、非常にシンプルです。「情報の粒度(細かさ)については、相手に決めてもらう」のです。最低限の説明に留めて、細かい経緯や補足説明を割愛してホウレンソウをなるべく簡潔に行なうことを意識してください。

 

相手が既に知っている内容であれば、会話はそこで終わります。もし知らない内容であれば、相手に質問をされた際に詳細を話すように心がければスムーズに話を進めることができます。あらかじめ、詳細や補足説明を別紙としてメールで送付しておくのも良い方法です。

 

この手法は、会社の社長や役員など時間が限られている方と話すときにも有効です。重要なポイントのみを話し、相手からの質問に即座に回答できる用意がしっかりとできていれば相手から絶大な信頼を得ることができます。ぜひ、試してみてください。

 

ミスコミュニケーションを生む「自分基準」という要因

「電車の中でお年寄りに席を譲らない人」や「大音量で音楽を流している車」を見てイライラした経験は、ありますか? なぜこのような行為をする人を見たときにイライラするのでしょうか。

 

それは、恐らく自分だったらしない、不適切な行為だという「自分基準」があるからです。

 

一方で、実際に迷惑行為を行なっている人の立場になると、ご自身は問題ない、許容範囲だと認識しているかもしれません。これもその人の「自分基準」です。

 

人は、それぞれ異なった価値観や考え方を持っています。普段、意識しないと「自分基準」がすべて正しいと誤認してしまうことがあります。それがミスコミュニケーションを生む要因になっているのです。

 

「この程度ならわかるだろう」「知っていて当然」などの思い込みを持っていると誤解が生じたり、話が平行線のまま前に進めることが困難になってしまったりする場合があります。

 

長年連れ添った夫婦や師弟関係のようなビジネスパートナーであれば、阿吽(あうん)の呼吸で物事を進めることができるかもしれませんが、すべての人と同じレベルで親密になるのは不可能です。

 

そこで意識していただきたいのが、「話をする前に相手と目線を合わせる」ことです。お互いの考え方、基準や理解度に違いがあるのを認めた上で、ギャップを埋める作業を意図的に行なうのです。

 

具体的には、重要な言葉の定義、前提や目的といった内容をあらかじめ確認しておくのです。こちらは、毎回毎回行なう必要はありません。話をしたことのない方に初めて話をする際や大人数での打ち合わせを実施する際に行ない、二回目以降はその経験を元にレベル感を調整していけば問題ありません。

「簡略化した全体像」から話をすることを意識する

子どもを相手に説明をするのをイメージしていただけると非常にわかりやすいです。

 

子どもに「飛行機は、なぜ飛ぶことができるのか?」と質問をされて、物理の法則や空気抵抗の話をしたとしても理解できるはずがありません。子どものレベルに合わせて説明するのであれば、「ジェットエンジンが加速してそのスピードで空を飛ぶ」程度の説明で十分です。

 

一方で、大学の理工学部に通う学生に対して説明するのであればこの回答では不十分です。複雑な計算式や物理理論で説明する必要があるかもしれません。

 

この例では、子どもと理系の学生の理解度のレベルは客観的にわかりやすい状態でした。しかし一般社会では、理解度を瞬時に判断することは容易ではありません。

 

相手と同じ目線で話をするためには、どうしたらよいのでしょうか。

 

答えは、簡単です。

 

いきなり詳細から話すのではなく、まず簡略化した全体像から話をすることを意識することです。詳細の内容は複雑な場合が多いので、比較的簡単な大枠から話を進め相手の理解を確認しつつ前に進めていきます。

 

この手法は、理解度の異なる方が多く出席している会議等でも有効です。全員で大枠の内容を共有したのちに本題に入ることで、全員の目線がそろった状態でスムーズに議論を進めていくことができるのです。

 

コミュニケーションがうまくとれていないと感じたら、相手と自分の目線が合っているか一度確認してみるとよいでしょう。

正しく評価してくれないこの会社に限界を感じたとき読む本

正しく評価してくれないこの会社に限界を感じたとき読む本

江田 泰高

ぱる出版

誰でもできるただ処理するだけの仕事を、あなたはいつまで続けるのですか?評価されないこの会社に、いつまで耐えられますか? 出世や転職を成功させるための「自分の値段」を上げる技術を伝授します。

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