富裕層の家庭の多くが、子どもの将来を想い、中学受験をさせています。しかし、子どもがお金に困らない生活を送るためには、ただ闇雲に勉強させるのではなく、「北極星(=将来のビジョン)」を見据えて教育をする必要があります。そこで本連載では、公認会計士林總事務所・林總氏の著書『年収1000万円 「稼げる子」の育て方』(文響社)より一部を抜粋し、学歴だけにとらわれずに、令和時代を生きぬく子どもの育て方を解説します。

「マネープレッシャーのない暮らし」のための中学受験

◆中学受験をさせるべきか

 

本連載では、わが家の経験してきた受験や学校選びのコツ、学歴と収入の関係などについてお話ししていきます。

 

わが家では4人の子ども全員に中学受験をさせました。最初から受験をさせようと決めていたわけではありません。私は地方の県立高校の出身ですし、妻も公立でしたから、中学受験にいまひとつなじみがありませんでした。しかし、長男と同い年の姪っ子が小学校受験を経験し、はじめて「そういう道もあるのか」と意識し始めたのです。

 

そこで、

 

① マネープレッシャーのない暮らしができる

② 好きな仕事ができる

③ 教養が身についている

 

という北極星をかなえる3つの条件に立ち返り、「中学受験はこの北極星を達成するために必要か」を考えてみました。

 

人より少し多くお金を稼ぐためには、挑戦して一歩先を行く知識や技術を身につけなければ達成できません。となると、合否はさておき、受験のための勉強は決してマイナスにはならないと感じました。そこで、中学受験にチャレンジさせてみることにしたのです。

 

◆塾は試験業界のプロ

 

こうして息子たちの中学受験生活がスタートしました。長男は小学4年の終わり、次男は小学4年のはじめ、三男、四男は小学5年から、中学受験塾に通わせ始めました。

 

中学受験には試験業界というものがあり、入試対策のノウハウを持っているプロがいます。塾に行かずに自宅学習や通信教育で、というやり方もありますが、私はおすすめしません。

 

試験は人がつくるものですから、攻略法が必ずあります。試験業界のプロである塾に任せるのがいちばんです。何年にもわたる受験ノウハウが蓄積されているのですから、それを利用しない手はありません。もちろん費用はかかりますが、自己流で取り組むより何倍も効率的です。

 

塾に通うべきといっても、私の経験から言うと、受けるのは基本のコースだけでじゅうぶんです。受験直前の6年生になると、志望校別の対策講座や夏期・冬期講習とは別におこなわれる科目ごとの特別講座など、やたらとオプション講座が多くなります。

 

長男のときは、事情がわからなかったので塾からすすめられるままに受講していたのですが、出費がかなりの額になったにもかかわらず、明確な効果は見られませんでした。

 

オプション講座とはいえ、生徒集めのノルマが課せられている先生から「受講しないと、ほかの生徒さんより遅れてしまいますよ」とやんわりと言われたりして、断りにくくなってしまうこともあるかもしれません。しかし、成果が得られないことにお金を出すのは、ムダ以外の何ものでもありません

中学受験の「価値」をどこに見出すか?

◆中学受験の価値

 

子どもたちを通わせていた塾は入塾テストがありますが、成績上位の子に限らず受け入れてくれる、間口の広い大手中学受験塾です。

 

御三家と呼ばれるいわゆる難関校のカリキュラムだけを用意しているような、成績上級者のみをターゲットにしている塾は避けました。その理由は、わが家では中学受験の価値を「受験勉強」そのものに置いていたからです。

 

小学校中学年から高学年にかけて、集中的に「稼ぐ力の土台となる読み・書き・そろばんの力を徹底的に強化できること」が、中学受験の大きなメリットです。

 

御三家の試験問題は、男子、女子ともに、難解な大学受験レベルの力が必要とされる、難易度はそこまで高くないが大量の問題をテクニックと要領で解く力を要求される、複数の分野を結びつける教養がないと解けないなど、ひと癖もふた癖もあるものばかり。とても普通の子どもに歯が立つものではありません。

 

こうした応用力を試す試験への合格を目指す「御三家用カリキュラム」には、その前提として「読み・書き・そろばん」の力が必須です。こうした基礎学力がなく御三家を狙っても失敗は明らかです。わが家はまず、基礎学力をつけさせることに全力を注ぎました。

 

そこで親としての成果の定義は、

 

●国語でよく出題される作品を本で読む

●漢字を覚える

●計算力がアップする

●日本の歴史に詳しくなる

●星の名前を正確に覚える

 

といった基礎の強化であり、いつもと同じ風景のはずなのに、その裏側にある物事の成り立ちが見えてきて、次々と新しい世界が広がっていくことに重点を置きました。

 

問題は受験に失敗したときです。そのときのショックがあとあとまで尾を引いてしまう例は、決して少なくありません。公立に行くのがつらくて不登校になったり、落ちた自分を恥じて学歴コンプレックスを持ってしまったりする子どもを、これまでたくさん見てきました。

 

受験はいわば「試験の攻略に成功した人」が勝ち抜く世界であって、決して頭のよさや人格が優れていることではありません。いわんやお金を稼げることなどとは、関係ありません。もっと言えば、勉強ができる、できないというのは、あくまで相対的なものです。

 

失敗したとき必要以上にショックを受けないためにも、結果ではなく、学ぶことの重要さを、ふだんから子どもに話すことが何より大切だと思います。成果をきちんと定義して臨めば、中学受験にデメリットは一切なく、むしろメリットしかありません。

 

これは妻も同様の意見で、メリットとして、

 

●目標を達成することの大切さを知ったこと

●父親が忙しいなか、受験に関心を持って関与したこと

 

のふたつをあげていました。デメリットは特にないそうです。結果的に4人それぞれが異なる中高一貫校に入学しましたが、それぞれ特色がありました。

 

長男は駒場東邦で6年間をすごしました。個人的な感想になりますが、この学校は子どもだけでなく親も大切にするすばらしい学校でした。

 

次男は、淑徳。仏教校だったのでそこで覚えたお経はいまだに暗唱できるほどです。やさしい性格の次男にはぴったりの学校でした。交換留学制度があり、高校時代は1年間アメリカへ留学しました。

 

三男は巣鴨に入りました。ここは夜通し大菩薩峠を歩く行事があるなど、男子校らしいスパルタ教育が特徴的で、規律を重んじる一本筋の通った校風でした。最近人気がなくなってきたと知って、残念でなりません。

 

四男は筑波大学附属です。ここはガツガツ勉強する学校ではなく、塾も行かずに東大に受かるといった地頭のよい子が集まっていました。

 

こう振り返ってみても、中高一貫校は校風も教育内容も個性的でバラエティに富んでいます。受験勉強で基礎力を身につけるという成果を得ながら、特色ある環境のなかで向上心あふれる仲間に出会うことができる。それが、「中学受験の価値」だと私は思っています。

 

◆アベレージの意識が上がる

 

「お祭り効果」が期待できるから、というのも中学受験をさせた理由のひとつです。勉強ができる子、人間的にも尊敬できる子、志が高い子が大勢いる環境に子どもを放り込むと、みんなで一緒にワイワイやっているうちに、おのずと周りに引き上げられ、スムーズに、「人間性」「教養」「仕事」にまつわる「カースト」を上げていくことができるのです。

 

子育てで考えるべきカースト
子育てで考えるべき「カースト」

 

長男は駒場東邦に行ったからこそ医者になれたと思っています。それは、まさに「お祭り効果」です。

 

長男は生物クラスを選びましたが、実にクラスの40人中30人が医者になりました。現役で国立の医学部に入ってしまうような子がゴロゴロいたのです。かといって成績に一喜一憂して蹴落としあうようなギスギスした雰囲気は一切なく、人間性も優れた子が多いのも特徴的でした。淑徳はほかの3校と比べれば学力で劣るものの、次男のクラスからは早稲田、慶応、上智に複数名が現役で合格しました。

 

巣鴨も3割ほどが医者になる環境でしたし、筑附も授業を受けているだけで家ではまったく勉強しないのに東大に合格してしまう子がたくさんいました。また、レベルの高い中高一貫校に通う子どもたちは、精神的にも早熟で、中学生のうちから「弁護士になる」「医者になる」と、将来の目標が明確なこともめずらしくありません。わが家の子どもたちは、必ずしもトップ集団にはいませんでしたが、周りに刺激され、切磋琢磨しあうなかで、次第に志が磨かれていきました。

 

子どもに稼ぐ力を身につけてほしいなら、口うるさく親がいろいろ言うよりも、

 

「目標を持って努力するのが当たり前」

「人を思いやるのが当たり前」

 

という環境を与えてあげるのがいちばんなのです。

 

 

林 總

公認会計士林總事務所 公認会計士/明治大学特任教授

 

年収1000万円 「稼げる子」の育て方

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林 總

文響社

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