ほめ方のコツ…「能力よりも努力をほめるべき」は本当なのか?

性格や考え方が異なる人が集まる企業やチーム。これらをまとめなければいけないリーダーの苦労は図りきれません。そこで本連載では、組織マネジメントを行う際に利用できる、心理学の基礎知識を紹介していきます。本記事では、人のやる気を誘発させる方法を心理学の観点から見ていきます。

「報酬を約束される」とやる気を失う

好きなことで暮らしていきたいと考える人は多いかもしれません。趣味が利益を生むようになり、それで生活できるようになれば、たしかに最高の気分で暮らせそうですね。

 

しかし、実は仕事になった途端、すべての趣味が色あせてしまうことはよくあることです。

 

営業の歩合給や資格手当てなど、企業は成果を報酬に換算するシステムを工夫しています。「当たり前だろ。仕事なんだから」と考える人がほとんどでしょう。ただ、こうした報酬がやる気をそいでしまう可能性があることを、心理実験が証明しているのです。

 

心理学者のレッパーとグリーンは、保育園に通う園児を対象にマジックで絵を描いてもらう実験をしました。ただしグループを3つに分けます。1つめのグループは描く前にシールとリボンがついた賞状をあげると約束します。2つめのグループは、事前に何も言わず絵が描き終わったところで賞状を渡します。そして3つめは描き終わっても何も渡さないグループです。

 

賞状を渡すグループの園児たちには、自分の名前が書き入れられた賞状を掲示板に張り出しました。後日、教室にマジックと紙を置き、自由に絵が描ける状態にして3つのグループの園児を観察しました。面白いことに、3つのグループのうちリボンがついた賞状をあげると約束した園児たちだけが、絵を描く時間を減らしていきました。注目は事前に賞状をあげることを言わなかったグループには、変化が見られなかったのです。

 

これはどうしたことでしょうか?

 

レッパーとグリーンは、この実験結果について「事前に報酬が約束されていたこと」が、やる気に影響を与えたと説明しています。

 

そもそも園児にとってのお絵描きは、遊びの1つで、自らやりたいと感じる「内発的動機づけ」にあふれた行為です。そのため何もしなくても、3つめのグループのように絵を描きます。ところが1つめのグループのように、事前に「賞状」という外部からの報酬を期待するようになると、「内発的動機づけ」が影響を受け、絵に対する興味が薄くなってしてしまうのです。

最悪なのは約束した「報酬を下げていく」こと

この心理学実験を応用すれば、部下や子どものやる気をそぐことも容易にできてしまいます。最初に報酬を約束しておいて、徐々にその報酬を下げていけばいいのです。

 

たとえば、テストで70点以上取ったら1000円上げると約束し、「事前に報酬が約束された」状況を作り出します。その上で数回の成功のうちに、「ちょっとお金が厳しくなったから」と、1000円を800円に、800円を500円に下げていけば、「外発的報酬」に支えられていたやる気は消えてなくなってしまいます

 

「外発的報酬」がプラスに働くこともあります。それは興味を抱いていない事柄に取り掛かるきっかけとなるような場合です。「知らない資格だけれど、取得したら会社から2万円ももらえるのか! じゃあ、とりあえず勉強してみるか」といった具合です。

 

問題は「外発的報酬」でわきあがった「やる気」を、持続可能な「内発的報酬」に変化させるのかでしょう。仕事で言えば、その面白さに気づくということになるのですが、仕事の面白みを感じるのが難しいケースもあります。

ほめ方によっては「無気力」を誘発する

そこで注目してもらいたいのは言葉です。心理学の論文では、ほめ言葉が内発的動機付けと関連性が高いという論文もあります。ただしほめ方にもコツがるので注意が必要です。

 

スタンフォード大学のキャロル・ドゥエック教授は、実験では能力をほめられた子どもは、他者からの評価にとらわれるようになり、失敗のリスクがともなう課題に手をつけなくなったと報告されています。

 

つまり「内発的動機」を高めるためには、「地道な努力が実を結んだな。おめでとう」と声をかけるべきなのです。

 

上司の立場であるなら、部下の仕事を観察し、その過程を時々にほめていくことで、部下のやる気は高まっていくでしょう。その過程をしっかり見て評価しているというメッセージは、たとえ取り組んでいる仕事が失敗したとしても部下が無力感にさいなまれる可能性を低くしていくはずです。

 

「内発的動機づけ」を持って仕事に取り組めるのかは、当人にとっても、会社にとっても大きな問題です。部下を持ったら、しっかりと「内発的動機づけ」をサポートしてみましょう。

 

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