どうしようもない「困難から抜け出す」テクニック
仕事をしていれば、困ったことに遭遇することも少なくありません。もうダメだと思うことだってあるでしょう。しかしカウンセリング理論を知っていれば困難を好機に変えることができます。
ノースカロライナ大学のバーバラ・フレドリクソン教授は、ポジティブ心理学の権威です。彼女のポジティブな感情をいただいたときと、ネガティブな感情にとらわれているときで、人がどのように考えるのかを実験で明らかにしています。
実験参加者をグループに分け、ネガティブな感情(恐怖と怒り)とポジティブな感情(喜びと安らぎ)がわくような動画を見せました。その後、動画と同じような気持ちになるような場面に遭遇したとき、自分だったらどうしたいのかを尋ねました。
そして「私は〇〇したい」という文章の穴埋めをしてもらったのです。
結果、多くの文章を穴埋めしたのはポジティブな感情を引き出す動画を見た人たちだったのです。
この実験が明らかにしたのは、喜びや安らぎといったポジティブな感情に浸ると、人は多様な可能性を見出し、逆に恐怖や怒りを持っていると、限られた可能性しか見いだせないということでした。
つまり多様な可能性を追求することが有利に働くようなビジネスシーンでは、ポジティブ思考の持ち主の方が成功しやすいということです。
しかし、いくらポジティブな思考が重要だとしても、困難にぶつかったときにいつもポジティブな感情が引き出せるものでしょうか。ただ、そうした困難をチャンスに変える「技術」があります。さっそく紹介しましょう。
逆境を好機に変えるための方法の一つは、ABCDモデル学ぶことだと、心理学者ショーン・エイカーは言っています
A=Adversity/困難な状況
B=Belief /信念
C=Consequence /結果
D=Disputation/反論
まず、Aの「困難な状況」は変えようがありません。しかしAを評価するBの「信念」は変えようがあります。「信念」と考えるとやや重いので、このBは「考え方」ととらえると理解しやすいでしょう。
たとえば、見積りが高いと、クライアントが言ってきた場合を考えてみましょう。契約は絶望的のように感じるかもしれませんが、そのBである「信念」=「考え方」は正しいでしょうか?
・クライアントはなぜ見積りが高いと言っているのか
・クライアントの発言が自分の将来にどんな意味を持つのか
・この出来事は一時的なものではないのか
・解決法がないのか
そんなことを考えて、状況を捉え直してみましょう。見積りが高い原因が自社からの外注費にあるのであれば、外注先を見直すことで契約が取れるかもしれません。あるいはクライアントの担当者が変わることがわかっているなら、その時期まで粘ればクライアントの方向性が変わるかもしれません。また安全性など、一見削りやすい項目であるように見えても、削ると大問題に発展する可能性のある金額への不満なら、その部分が安い見積りこそ危険だと説明する必要があるでしょう。
そうやって現実を見直してみれば、Bの「信念」を変えられるかもしれません。当然、「信念」が変わることによって、「結果」であるCも大きく変わっていくでしょう。
自分の「思い込み」に「反論」してみる
しかしBの「信念」について、どれだけ検証しても悲観的な状況しか思い浮かばないとするなら、Dの「反論」を実行します。そのとき、まず「信念」が単に自分が信じていることに過ぎず、事実そのものではないことを自分に言い聞かせます。その上で、実際に誰かと議論するかのように声に出して反論します。
「そう信じる根拠はあるんですか」
「その信念は完ぺきに証明されているんですか」
「他にもっと説得力のある解釈はないんですか」
声に出しながら、Bを検証してみましょう。ネガティブな思い込みで、現状を打開できる可能性に目を向けていないことだってあります。そうしたマイナスの思い込みは、声に出して反論することで崩れていくことがあります。
もちろん、それでも好機を見つけられないかもしれません。じつは、それでも道が閉ざされたわけではありません。やっぱり打開策がないと感じたら、反論する前の感じと比べてみましょう。確かに状況は悪いとはいえ、前の状況より良くなってしませんか?
じつは心理学では、「ものごとは自分が思うほど悪くない」ことが大半だとわかっています。それも心理学の実験で確かめられています。つまり最悪だと思い込んでも、改めて見直せば道は存在し、そこに少しでも目を向けらえる方法が「ABCDモデル」の見直しなのです。
同じ状況でも、まったくへこたれない人もいれば、絶望の真っ只中に落ち込んでしまう人もいます。そして同じ状況であっても、未来を信じて現状を打開するために動いた人の元に明るい未来が待っています。
さあ、落ち込んでいるなと感じたら、「ABCDモデル」を見直してみましょう。