キャッシュレス業者に対する監督体制強化へ
金融庁は、キャッシュレス送金・決済を行う資金移動業者に対して、立入りを含めた集中検査を始める。キャッシュレス業者に対する監督が本格化する見通しだ。
実施時期については、2019事務年度(19年7月から20年6月)を予定している。日経新聞が報道した。
検査内容は、システムの安全性や利用者保護、マネーロンダリング対策などの内部管理体制を重点的に点検するものであるといい、不備があった業者に対しては行政処分が行われる可能性がある。
これまでも業者に対して検査は行われていたものの、顧客資金を保全するために十分な供託金を有しているかなどが中心にみられ、セキュリティ項目などを含めた網羅的なものではなく部分的な検査に留まっていた。
検査対象の業者数は数十社を予定しているという。現在金融庁に登録されている、資金決済法に基づく資金移動業者や前払い式支払い手段(プリペイドカード)の発行業者は、LINEやメルカリの金融子会社など計64社に及ぶ。
これまでとは異なる多角的な調査から、急速に普及するキャッシュレスサービスの監督に金融庁が本腰を入れて動き始めた様子がうかがえるだろう。
◆相次いだキャッシュレス関連トラブルが背景
今回行われる検査は、キャッシュレスサービスにおいて複数のトラブルが生じたことを受けたものであるという。
昨年12月には、ヤフーとソフトバンクが出資する「PayPay」で、クレジットカードの不正利用が相次いだ。支払い元となるクレジットカード情報の登録のしやすさや、本人確認の緩さが原因であったとみられている。
また今年には、セブンイレブンのスマートフォン決済「7pay」において、7月1日の開始直後、約800人の利用者が不正アクセス被害を受けた。セブン&アイ・ホールディングスは被害額を約3860万円と報告している。
その事案を受け、登録者150万人の同サービスは、9月末で提供を終了することとなった。
◆FATFの日本審査も意識か
各国の資金洗浄(マネーロンダリング)対策などを審査する「金融活動作業部会(FATF)」の日本審査の日程が、今月6日に正式に発表された。
10月28日から11月15日の3週間にわたって行われる予定であり、銀行を含む国内金融機関に加え、暗号資産交換業者や資金移動業者も調査対象となる。
2008年に行われた前回のFATF第3次対日審査では、銀行を含む金融機関全体のAML/CFT(マネーローンダリング/テロ資金供与対策)で、49項目中25項目で要改善(不備10項目、一部履行15項目)という評価を受けるなど、ほかの国と比較しても厳しい結果(27ヵ国中18位)に終わっている。
日本の金融業界が、2008年と同様に再び低評価を受けると、邦銀などの国際取引にも影響を及ぼすリスクがあるとされることから、今回の調査は非常に重要となる。なお審査結果については、2020年6月の総会を経て、同年夏に発表される。
キャッシュレス業者に対する監督体制の強化は、FATFの調査を意識したものであることも考えられるだろう。
※本記事は、2019年8月12日に「CoinPost」で公開されたものです。