投資にはリスクが伴いますが、きちんと学べば怖くありません。今回は、リスクコントロールについて考えていきます。本記事では、リスクとリターンについて考えていきます。老後の資金は不安だけれど、貯蓄をしていれば問題ない。その考え方は危険かもしれません。本記事では、多数のメディアに出演し「心とお財布を幸せにする」がモットーのファイナンシャルプランナーである山中伸枝氏の著書『書けばわかる!節約・預金だけではもったいない わたしにピッタリなお金の増やし方』(翔泳社)から一部を抜粋し、節約だけでない必要なお金の準備方法について説明します。

リスク・リターンは投資先によって異なる

お金の世界におけるリスクとは、「不確実性」という意味です。不確実性も、投資先により大きさが異なります。価値が上がるかもしれない、下がるかもしれないという不確実性の幅が大きいものを「リスクが高い」といい、不確実性の幅が小さいものを「リスクが低い」といいます。

 

このリスクの大小は、これまでの統計を見ることで比べることができます。例えば、下の図表1は、過去20年間の投資先ごとのリスクを表したものです。

 

[図表1]20年間、投資先(資産)ごとの年率平均した リスクとリターンの分布図 [出典]myINDEX
[図表1]20年間、投資先(資産)ごとの年率平均した リスクとリターンの分布図
[出典]myINDEX

 

上の図表1では新興国のことを「エマージング」と呼び、不動産への投資のことを「REIT(リート)」と呼んでいます。上の図のように、投資先をリスクとリターンで分布すると、ずいぶんとばらつくことがわかると思います。右上に行くほどリスクとリターンが高くなります。左下はリスクもリターンも低い投資先です。これで見ると、現金(預金)はリスクが限りなくゼロ、リターンも限りなくゼロということがわかります。減らないけれど増えないという意味です。

 

日本の債券だと、現金よりもリスクが高くリターンも高くなりますが、それほど収益は期待できないことが読み取れます。一方、次の図表2のように日本の株はリスクが18%もあるのに、リターンは日本の債券とそれほど変わらない4%です。日本株と比較すると先進国の株や日本のREITに投資をした方が、同じ程度のリスクでも期待できるリターンが高いということがわかります。

 

[図表2]リスクとリターンの分布図を抜粋
[図表2]リスクとリターンの分布図を抜粋
[出典]myINDEX

 

下の図表3は、20年前に100万円を投資したら今いくらになったのかを示しています。リターンの大きさは違えど、どこの投資先も成長していることがわかります。

 

[図表3]100万円を投資したら、いくらになった? ※20年前に100万円を投資していたら、現在いくらになったかの試算。 ※配当は、すべて再投資し、売買コスト・税金は考慮しない。 ※試算ごとの「リターンの大きさ」を直感的に知ることができる。
[図表3]100万円を投資したら、いくらになった?
※20年前に100万円を投資していたら、現在いくらになったかの試算。
※配当は、すべて再投資し、売買コスト・税金は考慮しない。
※試算ごとの「リターンの大きさ」を直感的に知ることができる。
[出典]myINDEX

どこが儲かるかは誰にもわからない

次の図表4は、2009~2018年の10年間における投資先別のリターンの比較です。ある年では新興国の株式が約80%も上がり、下がった年ではマイナス約20%にもなっています。日本の株式も、良いときは50%以上のリターンがありましたが、悪いときはマイナス約20%。変動があまりない日本の債券であっても、最高で3.4%のリターンがあった年もあれば、マイナス0.8%の年もありました。

 

[図表4]投資先別のリターンの比較 [出典]モーニングスター ※太線は、年間のリターンがプラスだったことを示す境界線。
[図表4]投資先別のリターンの比較
※太線は、年間のリターンがプラスだったことを示す境界線。
[出典]モーニングスター


とにかくどこがもっとも儲かるかなどわからないということ、リターンの順位は毎年入れ替わるのだということが理解できれば大丈夫です。

投資先を組み合わせてリスクを下げる

ではここで、投資信託を組み合わせて複数の投資先に同時に分散投資をしたらどうなるのかを見てみましょう。下の図表5は、金融庁が示している日本、先進国、新興国の株と債券に6分の1ずつ投資をした例です。図表にある「ポートフォリオ」というのが、分散投資をした結果です。

 

[図表5]世界中の株と債券に 6分の1ずつ投資をした例 ※ポートフォリオは、毎月リバランスを実施したと想定(コストや税金は考慮しない)。 [出典]myINDEX
[図表5]世界中の株と債券に 6分の1ずつ投資をした例
※ポートフォリオは、毎月リバランスを実施したと想定(コストや税金は考慮しない)。
[出典]myINDEX


上の図を見ると、ポートフォリオは❶の日本債券に比べてずいぶんリターンもリスクも上がっていることがわかります。しかし❷の日本株や❹の先進国株と比較するとリスクはずっと低いです。注目すべき点は、リスクがそれらに比べて抑えられているにもかかわらずリターンが高くなったことです。つまり「分散」したことにより、リスクはコントロールされるということがわかります。
 

[図表6]投資先を組み合わせることでリスク・リターンは改善する
[図表6]投資先を組み合わせることでリスク・リターンは改善する

 

□どこに投資するかは悩まないでOK
□現金はリスクもリターンも限りなくゼロ
□「ポートフォリオ」とは、投資先の組み合わせのことです

世界中に投資した場合の確率

ここでは、ポートフォリオ(投資先の組み合わせ)の意味をもう少し見ていきます。上記に掲載したポートフォリオでは、❶日本債券、❷日本株、❸先進国債券、❹先進国株、❺新興国(エマージング)債券、❻新興国(エマージング)株に、それぞれ6分の1ずつ分散投資した場合、リターンが6.1%、リスクが11.7%となりました。この「%」とは、確率のことを示しています。投資は将来の成果が予測できないものですが、過去のデータから傾向を把握して、確率を割り出すということです。

 

どういうことかというと、世界中に分散投資を行うこのポートフォリオのリターン6.1%とは、1年間投資をすると平均で6.1%のリターンが出るという意味です。つまり100万円を投資すると1年後は106万1,000円になるということです。

 

一方、リスクは11.7%となっています。これはリターン6.1%を中心に、プラスに11.7%、マイナスに11.7%、約70%の確率でブレ幅があるということです。6.1%に対するプラス11.7%とは17.8%であり、マイナス11.7%はマイナス5.6%です(図表7を参照)。

 

[図表1]世界中に分散投資した場合のリスクとリターン ※1年間、元本100万円を投資した例
[図表7]世界中に分散投資した場合のリスクとリターン
※1年間、元本100万円を投資した例

 

具体的には、このポートフォリオに100万円を投資したら、70%の確率で、94万4,000円から117万8,000円になる、という調査結果なのです。

 

なおこの70%とは、リターンの6.1%を真ん中にして、左右に35%ずつの起こりうる確率という意味で、さらにその右にも15%、その左にも15%の起こりうる確率が存在します。結果94万4,000円以上になる確率が85%という意味です。

日本株だけの投資した場合の確率

一方、日本の株式だけに投資をしたらどうなるのでしょうか? 図表8「❷日本株」にあるようにリターンが3.5%で、リスクが17.6%となるので、100万円を投資すると、平均のリターンが103万5,000円で、85万9,000円から121万1,000円までになる確率が70%です。

 

[図表2]投資先を組み合わせることでリスク・リターンは改善する
[図表8]投資先を組み合わせることでリスク・リターンは改善する


さらに、起こりうる確率15%を加えて、85%の確率で85万9,000円以上ということを考えると、できるだけお金が減らないようにするには、マイナスのブレ幅が大きい日本株に投資をするより、やはり世界中に分散した方がよいことが明らかですね。

 

[図表2]日本株だけに分散投資した場合のリスクとリターン ※1年間、元本100万円を投資した例
[図表9]日本株だけに分散投資した場合のリスクとリターン
※1年間、元本100万円を投資した例

 

□分散投資のリスクとリターンを理解しましょう
□リスクやリターンの「%」は、確率のことです
□世界中に分散する方が、確率が良いことは明らかです

 

 

山中 伸枝

株式会社アセット・アドバンテージ

代表取締役


 

本連載は、特定の金融商品の推奨や投資勧誘を意図するものではありません。また、投資にはリスクがあります。投資はリスクを十分に考慮し、読者の判断で行ってください。なお、執筆者、製作者、翔泳社、幻冬舎グループは、本連載の情報によって生じた一切の損害の責任を負いません。

書けばわかる!節約・預金だけではもったいない わたしにピッタリなお金の増やし方

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