贅沢せずに毎月それなりの貯蓄をすれば、老後はきっと大丈夫――もしそんな考え方を持っていたら、早急に改める必要があります。低金利、消費増税、年金受給額の減額…と、老後資金の不安要素は枚挙に暇がありません。これからは、お金は貯めるだけではなく「増やす」という発想が大切です。本記事では、海外経験が豊富でグローバルな視点に定評のあるファイナンシャルプランナーの山中伸枝氏の著書『書けばわかる!節約・預金だけではもったいない わたしにピッタリなお金の増やし方』(翔泳社)から一部を抜粋し、お金の増やし方のノウハウを初心者にもわかりやすく解説します。

教育・住宅・老後資金は、トータルで1億円以上必要

人生の三大資金と呼ばれるお金があります。「教育資金」「住宅資金」「老後資金」の3つです。これらは、普段の家計のやりくりとは別に、しっかり計画を立てながら積み立てないと間に合いませんよ、というお金です。

 

例えば教育資金は、子ども1人につき大学を卒業するまでに2,000万円ほど必要といわれていますが、高校までは家計の中で賄える範囲で教育進路を考え、大学の費用として600万円程度を貯蓄で準備するというのが現実的でしょう。子どもが2人だと1,200万円です。

 

住宅資金は、金利の動向に左右されます。同じ4,000万円を35年ローンで借りたとして、金利が8%だったころは、月の返済額28万4,104円、返済総額1億1,932万3,827円と住宅だけで1億円超えでした。しかし、現在の35年ローンの金利は2%程度ですから、月の返済額13万2,505円で返済総額は5,565万2,145円と以前と比べると、約半分の負担で済みます。それでも借りたお金4,000万円に対して利息が1,565万2,145円ですから、やはり大きなお金です。

 

老後のゆとりある暮らしには年金だけでは夫婦で月15万円不足といわれていますから、60~100歳の老後資金は7,200万円足りません。現在年金暮らしをしている方の平均モデルでも、年金だけでは月5万円生活費が足りないといわれていますから、60~100歳の老後資金として夫婦で2,400万円は最低限必要です。

 

ここまでざっと計算しても、人生の三大資金は少なく見積もって、夫婦で約9,000万円、ゆとりを考えると約1億1,400万円も必要です。

 

仮に30~60歳の30年間で9,000万円のお金を準備しようとすれば、年間300万円の貯蓄、つまり月25万円の積立てが必要だということです。

 

[図表]60歳までに少なくとも夫婦で約9,000万円の貯蓄が必要
 
60歳までに少なくとも夫婦で約9,000万円の貯蓄が必要

「節約すれば、人生はなんとかなる」は間違いなく誤解

2018年の総務省の家計調査によると、現役世代の平均勤労月収は51万5,729円。そこから税金や社会保険料が差し引かれて、可処分所得は42万8,519円となっています。その中で日々の暮らしに使っているお金が31万5,433円ですから、多くの勤労家庭は月10万円くらいを頑張って預金している情景が目に浮かびます。

 

ですが、それでもやはり月15万円の将来への貯蓄が「足りない」のです。消費税は10%に上り、確実に生活費は上がるため、節約でさらに25万円との差額10万円を埋めていくのはさすがに厳しいでしょう。「節約すれば、人生はなんとかなる」は間違いなく誤解です。

 

もしかしたら、「月25万円の貯蓄が必要」と聞いただけで、本記事を読むのをやめてしまいたくなった方もいるかもしれません。もちろんこの数字はあくまでも一例で、将来に向けて必要な貯蓄額は個々人で違います。よく「私の年齢だとどのくらい貯蓄がないとダメですか?」とか、「年収の何割、貯蓄に回せばいいですか?」と聞かれますが、これはまったくナンセンスな質問。なぜなら、自分がいくら将来のために貯蓄をしたらよいのかを決めるのはあなた自身だからです。

 

本書『書けばわかる!節約・預金だけではもったいない わたしにピッタリなお金の増やし方』では特に老後資金づくりに焦点を当てていますが、考え方自体は、人生に必要なお金全般の増やし方の参考になるでしょう。まずは、将来のために今行動を起こそう! そんな決意をしてください。

 

 

□ 人生に必要なのは、教育・住宅・老後資金です

□ 節約は、かつての王道と理解しましょう

□ 将来のためには月25万円の積立てが必要です

まずは「収入を増やす・支出を減らす・金利を稼ぐ」

必要な貯蓄額は人それぞれですが、上記を読んで、いずれにしても大きなお金が必要なことに驚いたことでしょう。お金を増やすためには、次の3つのやるべきことがあります。

 

①収入を増やす

②支出を減らす

③お金に金利を稼いでもらう

 

金利が高く、上りのエスカレーターだった1980年代ごろまでの時代は、24時間がむしゃらに働くこと、これがお金を増やすためにもっとも重要なことでした。

 

当時は、賃金が良かったので、暮らしぶりも良くなりましたが、その中でもコツコツ預金をすれば高金利でお金が倍々に増えていきました。年功序列で賃金が上がり、終身雇用で定年まで勤めあげれば退職金もありました。厚生年金基金に代表される企業年金は、5.5%で運用した年金を定年退職後は終身で受け取れました。

 

つまり、かつては「働くこと」=「お金を増やすこと」だったのです。時代が変わり、収入が増えにくくなった社会になって意識され始めたことが、支出を減らすことです。節約で支出を抑えるというのはとても賢明な方法です。しかし、それだけでは足りない! だからお金に働いてもらうことが必要なのです。ただし、低金利時代のお金の働き方は、預金ではなく投資です。

お金が2倍になるまでの期間がわかる「72の法則」とは

お金を増やすには、適切な金利が必要です。金利は複利と時間という力を加えることで、さらにお金の成長率が高まります。複利とは、利息が利息を生む仕組みで、貯めたお金を引き出さず、時間をかけてじっくりと増やすことにより得られる果実です。

 

お金は金利により成長のスピードが異なります。このスピードを計るために用いて、お金が2倍になるまでの期間が簡単にわかる計算式が「72の法則」です。算式は簡単で、「72÷金利=お金が2倍になるまでの期間」で求めることができます。

 

実際に計算してみると、現在の預金金利ではどうやってもお金が増えないということを実感してもらえるので、次にいくつかの問題を掲載してあります。
 

[図表1]「72 の法則」
[図表2]「72の法則」で計算
[図表]72の法則

 

 

□ 今の時代、お金に働いてもらうことが必要です

□ 「3つのやるべきこと」を理解しましょう

□ 「72の法則」はお金を増やすための便利な式!

 

 

山中 伸枝

株式会社アセット・アドバンテージ

代表取締役

 

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