海外メディア、日本の暗号資産税率に苦言
豪に拠点を置く暗号資産メディア「Micky」が、各国の暗号資産の税制について記事を掲載。各国の税制を列挙した上で、日本の税率について「極めて高い」と問題点を指摘した。
現在、国税庁が公開する文書「仮想通貨に関する所得の計算方法について」では、暗号資産の区分を以下のように記載している。
ビットコインをはじめとする仮想通貨を売却又は使用することにより生じる利益については、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分され、所得税の確定申告が必要となる。
「仮想通貨に関する所得の計算方法について」
2017年4月に施行された改正資金決済法で、暗号資産が正式に「通貨」として定義されたことにより、暗号資産を決済利用した際の消費税こそ非課税になったものの、暗号資産トレードによる利益の所得区分は「雑所得」に振り分けられ、最大で所得税45%、住民税10%の55%という、損失も伴うマーケットの税率としては極めて高い状況にある。
これが、今回のMicky社の記事で問題視されていた点だ。そして、これらが起因となり、暗号資産取引に関する納税申告の割合が低迷しているのではないか、との見解を示した。
こうした問題を受け、暗号資産税制改正に関する請願書が衆議院議長および参議院議長に提出されるなど、改善を求める動きもみられるが、大きな変化が起きていないのが現状だ。
他国の暗号資産税制
日本国内において様々な課題を抱える暗号資産税制であるが、他国の暗号資産税制はどのようなものだろうか。同メディアは、主要国の税制の概要を以下のように列挙している。
●ドイツ
ビットコイン取引は付加価値税(VAT)が免除される。1年以上、暗号資産を保有し続けた場合、譲渡所得税も免除される。全てのヨーロッパ市民は、資産をドイツへ移転し税の控除を受けることが可能。
●シンガポール
暗号資産に長期投資を行う企業及び個人は、譲渡所得へ課税されない。
●ポルトガル
暗号資産は付加価値税や所得税が課されない。ただ企業が行う暗号資産取引により得られた収益には課せられる。
●マルタ
暗号資産のデイトレードでは、法人税として税金が課されるが、個人投資家による暗号資産の購入および保有資産には税金がかからない。
●マレーシア
譲渡所得税がかからない。
●ベラルーシ
暗号資産マイニング及び暗号資産への投資に税金が課されない。
●スイス
プロの投資家による暗号資産取引には法人税が課せられる。マイニングは自家営業所得として扱われるが、個人投資家による投資及び取引は譲渡所得税がかからない。
●アメリカ
アメリカ合衆国内国歳入庁(IRS)によれば、暗号資産は資産とみなされ、株と同様の扱いがなされる。暗号資産を購入し、1年以上保有した場合、0%〜20%の範囲で所得のレベルに応じ税金が課せられる。
●オーストラリア
全ての取引を譲渡所得とみなし、オーストラリアドルへ換金した際の、全ての正確な取引記録の保存が要求される。暗号資産投資による利益には、個人所得課税と同じレートの税金が課せられる。ただし、1年以上暗号資産を保有し続けた場合は、課税額は50%減税される。
●イスラエルとスウェーデン
イスラエルとスウェーデンにおいては、納税者が購入した暗号資産の購入額を証明できない場合は、数百パーセントの税金が課せられることになる。その理由としては、税務当局は、購入時の暗号資産の金額をゼロとして計算するため、売却時の暗号資産の値段がそのまま利益として見なされるためだ。
※本記事は、2019年7月23日に「CoinPost」で公開されたものです。