テレアポ、セミナー…「不動産投資」営業の手口
上場企業のサラリーマン、公務員や医師といった、世間一般から「エリート」と呼ばれ、高収入を得る人たちが不動産業者のセールスのターゲットとなりやすいのは、皆さんも想像がつくと思います。
ところがそれ以外に、普通のサラリーマンもターゲットになっているのが最近の傾向です。
不動産に興味のない人が、どのようにして区分マンションのセールスと接点を持つのかというと、いきなり職場へ電話をかけてくるようなケースが多いようです。
「○○社にお勤めの方限定で、資産形成に関するご提案を行っております」
こんな営業文句からスタートして、詳しく話を聞いていくと新築の区分マンションの営業を始めるのです。古典的なテレアポですが、今でもよく使われています。
営業するための電話番号は、ネットや電話帳で公開されている番号はもちろん、過去に何かのアンケートで回答した内容がリストとして出回っている場合もあります。開業医や弁護士事務所の番号は簡単に調べられるので、営業のターゲットになりやすいです。
セールスの流れとしては、まずは相手の家族構成や勤務形態など、できるだけ多くのパーソナルな情報を聞きだして、実際に会う方向に話を進めます。
余談ですが、この営業電話をかけてくる営業担当者には厳しいノルマがあって、1件もアポイントが取れないと満足に給与が支払われないこともあります。彼らも生活がかかっているだけあって必死です。
そのほかには、職場の上司や同僚からの紹介、資産形成セミナーへの参加をきっかけに新築区分マンションを購入するケースもあります。
不動産会社は営利企業ですから、回収の見込みがなければそもそもセミナーを開催しません。では、どこから回収するのかといえば、新築ワンルームマンションの販売利益にほかなりません。
セミナーに参加したその場で2000万円以上の買い物を決断するなどと言うと、不思議に思うかもしれません。しかし相手は販売のプロです。その場で買付申込書に記入してもらうか、それが難しい場合は次のアポイントを取るくらい朝飯前です。
相手の口調やしぐさ、声のトーンから営業担当者は「押せばいける」というのを本能的に感じ取っているのです。悪質なセミナーであれば、終了後は出口に営業担当者が立ちふさがってしまい、なかなか退出できない雰囲気になる・・・という場合もあります。
中年層だけでなく、20代の若者もターゲットに…
続いて、年齢の視点で見てみると、かつては30~50代といった社内では中堅社員や管理職にあたる層がターゲットでした。
しかし、最近は20代の若者でも新築区分に投資しているケースがあります。将来への不安から幅広い人が資産運用に興味を持っていることが背景にあるのでしょう。そのなかで一定数の人が不幸にも区分マンションに手を出してしまい、毎月の収支が赤字になる状態に陥っています。
特に社会的に地位のある仕事に就いて、高収入を得ている人は、ときに自身のプライドが損切りの邪魔になります。エリート人生を歩んできたがゆえに、自分の失敗をたやすく認めることができない人は意外と多いのです。結局、赤字を垂れ流して傷口を広げるだけです。
新築区分マンションの失敗から抜け出すには、まずは自分の判断ミスを素直に認めて、軌道修正を行う必要があります。
そのほか、「まわりに相談できる人がいなかった」という人も新築区分マンションに手を出して失敗しやすい傾向があります。投資家仲間がいればベストですが、そういった人がいなければ、別の業者の考え方やアドバイスを、セカンドオピニオン的に取り入れてもよいでしょう。
また結婚している人の場合、配偶者に相談すれば反対される可能性が高いという理由で、自分一人で決断しようとしがちです。しっかり勉強をしてから不動産投資を始めた人でさえも、パートナーの理解を得ることには苦労をしています。
だからといって、家族に内緒で投資物件を買うようなことは絶対にしないほうがよいです。これだけ大きな買い物を秘密にしていて後でバレたら、間違いなく家庭不和の原因となります。家族の幸せのために踏み出した不動産投資が原因で、家庭がギクシャクしたら本末転倒です。