日本人の「おもてなし文化」に、外国人が悪印象を抱くワケ

東京オリンピックまで1年を切り、ますます活気に湧く日本。「外国人観光客」の到来にそなえ、準備をすすめる地方自治体も多いですが、文化の違いを把握せずにいると、「見当違いのおもてなし」でガッカリさせてしまうことも。「おもてなし」は日本の誇るべき文化ですが、まずは立ち止まって、外国人観光客のニーズを知っておきましょう。

外国人の求める情報が何かわかっていない

私は長年にわたり多言語での情報発信サービスに携わっています。そのため、社内には外国人のスタッフが数多くいますし、外国人の翻訳者や学生と接する機会も少なくありません。彼らが口を揃えていうのは、「日本の観光サイトは不親切!」というセリフです。

 

日本の海外ウェブサイトは、どこに情報があるのか見つけづらいし、ほしい情報がいろいろなところに分散している。さらに、せっかく情報にたどり着いても言葉遣いがヘンで意味がわからないケースもあるというのです。彼らの意見をまとめると、次の3つに集約されます。

 

(1)外国人の求める情報が何かわかっていない

(2)必要な情報が集約されず、バラバラになっている

(3)言葉の意味が伝わりづらい・ワクワクしない

 

それでは、これらの問題点についてひとつずつ説明していきましょう。

 

たとえば、台湾や中国の人々にとって満足感の高い食事はラーメンです。私たちは、「外国人の一番人気は寿司や天ぷらに違いない」という先入観を抱きがちですが、現実は違います。

 

顧客のニーズを正確に把握することは、サービス業にとって基本中の基本です。たとえば、のどがカラカラに渇いている人にカレーライスを勧めたら、相手はどう思うでしょうか? そのカレーがどんなに高級で美味しいものであっても、きっと相手は嫌がるに違いありません。それよりコップ一杯の冷たい水の方が、何十倍も喜ばれるはずです。

 

外国人リピーターを引き寄せ、インバウンド需要を伸ばしたいなら、まずは彼らの要望をきちんと調べることが大切です。ところが、外国人のニーズをキャッチする仕組みを設けている地方自治体や企業は、それほど多くありません。なぜなら、日本を訪れている外国人にアンケートを実施したり、現地の外国人に調査を行ったりするには、時間と費用がかかってしまうからです。あるいは、外国人から直接要望を聞き取ろうという発想そのものがないのかもしれません。

 

地方自治体の中には「観光プロモーション課」という部署を設置しているところがいくつかあります。一方、「観光コミュニケーション課」を設置しているという話は聞いたことがありません。「プロモーション」という表現の裏側にあるのは、情報を発信するという意識の強さで、外国人の求めるものを届け、知ってもらおうという「コミュニケーション」意識は欠如しています。

 

プロモーションとは、こちらが持っている情報を一方的に伝えることです。一方、インバウンド需要を伸ばすために欠かせないのは、外国人とやりとりをして相手のニーズをつかみ、それに合ったサービスを提案する「コミュニケーション」なのです。

「おもてなし」の過大評価を払拭せよ

外国人のニーズをつかまず、見当はずれのおもてなしをしてしまうケースは、枚挙にいとまがありません。

 

たとえばある観光地は、空港やターミナル駅からのアクセスを改善するため、大手旅行会社やバス会社と提携しました。交通の便をよくすることで、多くの外国人旅行者を呼び寄せようとしたのです。この施策によって確かに、短期的には客足が伸びました。ところが、しばらくすると外国人リピーターが減っていったというのです。

 

原因は、その地域が持っていた魅力が失われたことにありました。多くの外国人旅行者は、「ひなびているが、日本らしい雰囲気」にひかれていたのです。ところが、団体客をたくさん乗せたバスが何台も乗り付け、商業的なにおいが強くなったことで、従来の魅力は薄れてしまいました。

 

よかれと思って提供したサービスが、外国人に不評だったというケースはほかにもあります。日本人が一番陥りやすいものが「過剰サービス」です。

 

外国人旅行者に好印象を与えようと、過度なサービスを提供する地方自治体・企業は珍しくありません。たとえば、一般家庭に外国人を無料招待して食事を振る舞い、さらにおみやげまで持たせるという事例があると聞きます。恐らく、「せっかく遠くから来ていただいたのだから、できるだけおもてなしをしよう」という日本人らしい思いがあるのでしょう。しかし、こうしたやり方は、あまりに外国人に媚びすぎています。

 

旅行者に質の高いサービスを提供することは、もちろん素晴らしいことです。しかし、あまりに過剰なサービスは、顧客を居心地の悪い気持ちにさせます。

 

たとえば、買い物を終えた後、あるいは髪の毛を切った後に、スタッフが店外までお見送りをする店があります。多くの人は、「そこまでしなくてもいいのに……」と感じているのではないでしょうか。それと同じで、度を超えたサービスは、媚びへつらいのように映り、かえって悪印象を与えてしまいます。

 

日本では、無料サービスを当然だと受け止める人がたくさんいます。これに対し、多くの外国人は「質の高いサービス・エンターテイメントに対して正当な対価を支払うのは当たり前」だと考えています。それを裏付ける文化が、外国でのチップ制です。よいサービスに対して対価を支払い、評価するという考え方が一般的なのですが、日本では、そうした対価・見返りを求めることなく、自分の考えたサービスを自発的に行っています。しかし、日本人のあまりに行きすぎた押しつけの「おもてなし」をされると、外国人の多くは違和感を覚えてしまうものなのです。

 

東京オリンピック誘致のプレゼンテーションでもとりあげられたように、「おもてなし」は日本人の美徳であり、日本のサービスは質が高いと日本人は自負しています。しかし、残念なことに実際に私たち日本人が感じているおもてなしと、外国人の感じるサービスには隔たりがあるのです。

株式会社エスケイワード 代表取締役社長

1958年4月6日名古屋市生まれ。
立教大学を卒業後、コピーライターとして広告プロダクション会社に入社。
プランニングオフィス「IMPACT」を設立後、IMPACTをエスケイ欧文写真植字社と統合し、株式会社エスケイワード設立、1991年に代表取締役に就任。グローバル化にいち早く対応し、翻訳業務、多言語ウェブページ制作へと常に新しい視点で業態を変革しつづけ、事業を拡大する。現在では多くの官公庁、グローバル企業のホームページをはじめとするコミュニケーションツールのコンサルティングから制作、運用管理まで請け負う。
中小企業診断士としても活動し、経営の立場から「コミュニケーション」を捉える独特の視点を展開する。

著者紹介

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加藤 啓介

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