株式投資のやり方を変えようとするときに問題になるのが「過去の失敗の精算」。新しい一歩を踏み出すため、どのように対応すればよいのでしょうか?
新しい株式投資の手法に切り替えるときに生じる問題とは?
筆者はこれまで、数多くの個人投資家と話しをする機会がありました。その中には、筆者の実践している株式投資の手法に共感していただき、今までやっていた手法を見直していきたい、といううれしいお声もあります。
その時に話題となるのが、「過去の失敗をどう精算するか」。その典型例が、すでに保有している「塩漬け株」をどのように処理するかです。
「塩漬け株」っていったいなに?
「塩漬け株」とは、買った株が大きく値下がりし、損切りするのも躊躇してそのまま保有を続けた結果、含み損を抱えた状態になっている株のことを言います。
売るに売れず、そのままずっと持ち続けるしかないことを、漬物に野菜をずっと漬けておくことになぞらえて、「塩漬け株」と呼んでいます。
個人投資家が株式投資で失敗してしまう典型的なパターンが、この塩漬け株を数多く保有してしまっているという点なのです。
塩漬け株の大きなデメリットは、塩漬け株へ「投下した投資資金が換金されず固定化してしまう」という点です。個人投資家の投資資金には限りがあるので、そのうちの一部が固定化され有効に活用できないというだけで、トータルでの投資成果に大きなマイナスの影響があります。
そこまで大きく値下がりしていない塩漬け株は?
実は筆者の投資手法を使うと、塩漬け株が発生することは一切ありません。25日移動平均線を割り込んだら売却・損切りをしてしまうからです。そのため、塩漬け株の処理について聞かれると、正直なところ結構困ってしまいます。
塩漬け株が生じてしまうような投資手法から、筆者が実践している投資手法に切り替えるにあたり、すでに所有している塩漬け株を何とかしたい、というニーズに応えるべく、筆者なりに塩漬け株への対処法を考えてみました。
◆含み損の割合がそれほど大きくない場合(マイナス20%程度まで)
思い切って売却してしまうことを勧めます。なぜなら、塩漬け株を売却してもそれほど大きい損失とならず、その一方で売却により新たにキャッシュを得ることができるからです。
塩漬け株の最大のデメリットは、資金を拘束してしまうこと。それほど損失が大きくないのであれば、そのデメリットを売却により解消し、新たなキャッシュを手に入れることがメリットとなります。
なお、今すぐ売ってしまってもよいですが、もし現時点で上昇トレンドにあるのであれば、それが下降トレンドに転じるまでは売却を見送ってもよいと思います。
含み損がかなり大きい場合はどうするか?
含み損がまだ小さい場合、早めの売却をすることで新たにキャッシュを得ることができるというメリットのほかに、そのまま保有を続けることによる含み損の拡大を回避する目的があります。
◆含み損がさらに大きくなりマイナス40~50%の場合
基本は売却により新たなキャッシュを得ることが得策です。
ただ、売却の時期については一考の余地があります。塩漬け株をなくしてすっきりしてしまいたいのであればすぐ売却してもよいと思います。当面は売却しても他に新規投資資金として使う予定がないのであればそのまま保有を継続し、投資したい銘柄が出てきたときに塩漬け株を売却し、新規投資銘柄の購入資金に充てるということもできます。
塩漬け株の株価が今後上昇するのであれば、しばらく保有を続けた方が有利ですし、逆に塩漬け株の株価が下落するならば、できるだけ速やかに売却した方が有利です。
しかしながら、塩漬け株の株価が今後どうなるのかを予想することはできません。今すぐ売るか、新しい株を買うときに売るか。ご自身が抵抗の少ない方法を選べばよいと思います。
含み損が極めて大きいときは「節税メリット」も考えて
さらに含み損が大きいケース、例えばマイナス70%とか80%の場合は、新たなキャッシュを得ることによるメリットがかなり小さくなってしまいます。売却しても手元に残るキャッシュがかなり少額になるからです。
かつ、売却による損失も大きなものになっていきます。
したがって含み損が極めて大きな場合は、今すぐに売却する必要性は高くありません。それよりは、売却のタイミングを見計らって節税効果を得る方が良いと思います。
具体的には、株式投資の売却益や配当金などにより利益が生じた年に塩漬け株を売却します。これにより、売却益や配当金と塩漬け株の売却損を相殺し、税金の額を減らすことが可能です。
今は日経平均株価が2万円を超える水準をキープしていますが、もし今後金融危機などにより株価が大きく値下がりすることになれば、塩漬け株の含み損がさらに拡大してしまいかねません。
塩漬け株を抱えていて、何とか解決したいという方は、株価の大きな下落でさらに含み損が拡大する前に、売却してキャッシュを確保するという選択肢を考えてみてください。
足立 武志
足立公認会計士事務所
※本記事は、2019年7月11日に楽天証券の投資情報メディア「トウシル」で公開されたものです。