株式投資で成功している投資家は少数派。そのため「みんなと違う行動をすべし」という教えもあります。でも、それを鵜呑みにしているととんでもない失敗につながるかもしれません。
株式投資で昔から伝わる教え
株式投資の世界では、示唆に富んだ投資格言がいくつもあります。その中の1つが、「総悲観は買い・総楽観は売り」。
これは、多くの人が「株価はますます下落する」と弱気になっている時こそ買い向かい、逆に多くの人が「株価はもっと上がる!」と強気になっているときこそ売るべき、というものです。みんなと同じことをしていては株式投資では成功しない、という教えです。
また、似たようなものに「麦わら帽子は冬に買え」とか、「人の行く裏に道あり花の山」といった投資格言もあります。
いずれも「多数派の人とは異なる投資行動をすることが株式投資で成功するためには重要である」と説いているのです。
投資格言に共通するキーワードは「逆張り」
しかし筆者は、これらの投資格言を盲信するのは、戦略としてはキケンであると強く感じます。それどころか、投資格言どおりに行動することで、逆に大きな損失を被る恐れも高まる点を指摘しておきたいと思います。
上に挙げた投資格言には共通点があることに気がつきましたか? 実は、これらの投資格言はいずれも「逆張り」です、十分注意しなければなりません。
「逆張り」(株価が値下がりしている途中に買い、株価が値上がりしている途中に売る)をしている投資家は多いですが、それが株式投資で大失敗につながる原因になっていることに気がついていない人も多いのが現実です。
「総悲観は買い」だけではリスクが高いと気づこう
例えば、2018年の年末に日本株が大きく下落しました。まさに大多数の投資家が先行きに不安を感じている「総悲観」の状況でした。「総悲観は買い」という投資格言を信じて、積極果敢に買い向かった個人投資家は、2019年に入ってから株価が反発したこともあり、大きな利益を得ることができました。
しかしこれは、株価下落の中、買い向かったことが良い方向に転んだだけの「結果論」であることに気づかなければなりません。
「総悲観は買い」の後、さらに株価が下がったらどうするのか?
筆者は2008年のリーマン・ショックや2000年のITバブル崩壊など、株価急落の局面に何度も遭遇しています。その経験からすると、2018年末の日本株下落の規模は、リーマン・ショックの4分の1程度と感じました。
つまり、2018年末の日本株下落は、結果的には日経平均株価が1万9,000円前後で下げ止まったものの、さらに大きく値下がりする可能性もあったということです。
株価急落・暴落を何度も経験している筆者からすれば、2018年末の株価下落の局面で、「総悲観は買い」と買い向かうことはあり得ない選択肢でした。当時は空売りをしていましたのでそれを買い戻すことはしましたが、新規買いはしませんでした。
「総悲観は買い」を額面通りに受け止めて2018年12月に買い向かった個人投資家は、おそらく今後も同じような行動をするでしょう。その結果、いずれリーマン・ショック級の暴落が起きたなら多額の含み損を抱えた塩漬け株に囲まれ、手も足も出なくなってしまうのです。
実践ではどのようにすればよいのか?
もちろん、株価が大きく値下がりしたときは、株を安く買うことができるわけですから当然有利です。でもその一方で、買った後さらに株価が大きく下がってしまうリスクも考えなければなりません。
筆者は、株価が大きく値下がりして魅力的な水準になったとしても、株価が下がっている途中で手を出すことはありません。下降トレンドの間はさらに株価が下がりやすい傾向にあるからです。
したがって、株価が実際に底打ちをして反発し、25日移動平均線を超えたのを確認できてから買うようにしています。
「総悲観は買い」、でも実際に買うのは底打ちを確認して上昇トレンドに転じてからで遅くありません。これを守っていれば、総悲観で買ったつもりがさらに株価が急落してしまった……という失敗を防ぐことができるのです。
株式投資は何が起こるか分かりません。日経平均株価が10,000円割れになることも十分あり得る、と考えて行動しておけば、いざというときに大きな損失を避けることができます。くれぐれも株価が値下がりしている途中で「ここが底だ!」と決め打ちをしないようにしましょう。
足立 武志
足立公認会計士事務所
※本記事は、2019年7月18日に楽天証券の投資情報メディア「トウシル」で公開されたものです。