中国で月中頃に集中する経済統計の公表が、週末から週初に行われました。今月はGDP成長率も公表されたこともあり、単月データだけでなく、四半期の数字からも中国の経済動向を見つめる機会となりました。全体的な印象として、中国経済は当面回復が鈍い展開が想定され、当局の対応への依存が深まるものと思われます。
中国経済統計:4-6月期GDP成長率は貿易などの減速を背景に前期を下回る伸びに
中国税関総署が2019年7月12日に発表した6月の輸出はドル建てで前年同月比マイナス1.3%と、市場予想(マイナス1.4%)にほぼ並びました(図表1参照)。輸入はマイナス7.3%と、市場予想(マイナス4.6%)を下回りました。米国からの輸入は前年同月比マイナス31.4%、対米輸出はマイナス7.8%と、貿易摩擦の影響が見られます。
中国国家統計局が7月15日に発表した4-6月期のGDP(国内総生産)は、前年同期比6.2%と、市場予想(6.2%)に一致し、1-3月期の6.4%を下回りました(図表1参照)。内需、外需ともに減少し、少なくとも1992年以来、27年ぶりの低い伸びとなりました。
どこに注目すべきか:4-6月期GDP、輸出、追加関税、小売売上高
中国で月中頃に集中する経済統計の公表が、週末から週初に行われました。今月はGDP成長率も公表されたこともあり、単月データだけでなく、四半期の数字からも中国の経済動向を見つめる機会となりました。全体的な印象として、中国経済は当面回復が鈍い展開が想定され、次の理由から当局の対応への依存が深まるものと思われます。
中国の輸出の伸び(12ヵ月移動平均)とGDP成長率は連動する傾向が見られます。ただ、15~16年頃の軟調な景気動向を受けた輸出減速と、その後に反動で回復した、18年頃までの回復局面ではGDPと輸出に乖離が見られました。
足元中国の輸出に注目すると、再び低下に向かう兆しが見られます。背景として、対米輸出の悪化が挙げられます。
米中貿易戦争は、追加関税は延期となったとはいえ、基本的に解決には程遠い状況と見ています。貿易(輸出)は当面、中国経済の下押し圧力要因と思われます。なお、6月の単月データである、固定資産投資、小売売上高、鉱工業生産はいずれも市場予想を上回る結果となっています。ただ、回復の持続性に疑問が残ります。
例えば、小売売上改善の背景には、7月からの排気ガス規制を前にした自動車販売の駆け込み需要の影響が考えられることや、固定資産投資は過熱気味な不動産投資がけん引する一方、製造業やインフラ投資は伸び悩みが続いているなど投資の内容に改善が必要と見ています。
内需に懸念が残り、外需への期待が後退する中、中国経済を下支えする要因は、当局の金融(もしくは財政)政策次第と思われます。12日に公表された6月の中国経済全体のファイナンス規模は2兆2600億元(約35兆6300億円)に達し、市場予想の中央値(1兆9000億元)を上回りました(図表2参照)。移動平均(6ヵ月)で見ても上昇傾向です。当局の景気下支え手段が細る中、今後も中国人民銀行(中央銀行)は、利下げを強くアピールする局面では預金準備率の引き下げ、一方、通常はオペレーションを通じた資金供給姿勢の維持が見込まれます。なお、中国経済全体のファイナンスの項目を見るとシャドーバンキング関連は減少する一方で、社債による資金調達等は増加しています。資金調達の質を改善する方針は維持されているように見られます。
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当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『27年ぶりの低成長…金融政策に頼るしかない中国経済の実態』を参照)。
(2019年7月16日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
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