読み込むことで企業のイメージを深化させる
四季報は、企業情報ハンドブックとして高い評価を得ています。日本株に投資するなら、常に手元に置いておきたいバイブルのような1冊です。創刊から80年を超えた今でも、株式投資のバイブルとして多くの投資家に愛用されています。
ただし、前もって指摘しておきたいことは、四季報を読破するといっても、漫然と見るのではなく読むポイントがあります。とくにコメントや評価欄、データ、チャートを読むことで、その企業の特徴が見えてきます。私は、四季報を読破するに当たって、これを深化させていくイメージを持っています。深く読み込んでいけばいくほど、企業の未来像がクッキリと見えてくるといったイメージです。
もしあなたも四季報を読み込もうとするとき、最初はページをめくることから始めるだけでも十分です。自然体でページをめくっていると、そのうちいろいろな企業のことがバイアスもかからずに頭に入ってきます。
これは株式投資に限った話ではなく、ビジネスパーソンや社会人としての基本的な姿勢です。なぜなら、誰もが生きていくうえで何らかの形で上場企業と関係があるからです。
私が推奨する四季報の読み込みや読破は、掲載されている上場企業の歴史や現状、未来についてのイメージを深化させていくことです。株式投資をしたい人は、事前に収集した投資指標などから見つけ出した銘柄をスクリーニングしたい場合、「四季報オンライン」のスクリーニング機能を利用したほうがはるかに便利です。
しかし、それでは成長性の高い銘柄や個人的に関心が持てる銘柄などを見落としてしまう心配があります。さらに、一時的な業績悪化によって経営指標が悪化している銘柄も投資の対象外にしてしまいがちです。
この点、時間に余裕のある人は四季報を読み進めていくことで、こうした「成長株」や「大化け株」を発掘できる可能性が高まるのです。すでに株を持っている人は、手元にある四季報に付せんを貼るなどして保有銘柄の情報を再確認するのに活用できます。とくに分散投資で多くの銘柄を持っている投資家は、保有銘柄についての情報をつい忘れてしまいがちです。そこで、保有銘柄の企業情報を再確認するのに便利です。
テロや事故、利上げ、原油価格などの報道に敏感に反応する銘柄については四季報で定期的に事業の概要について読み直し、常に値動きに対処できる体制を整えておくことができます。四季報の読み込みを継続することで、企業に対する評価の変化をチェックすることができます。それを過去数号の四季報と見比べることで、いろいろなことが見えてきます。
たとえば、企業ごとに掲載されているコメント欄を複数号で見比べることによって、その変化をチェックします。コメントが次第に好意的に変化しているのに株価が割安に放置されている銘柄が見つかると、大きな利益を狙える投資先として期待できるはずです。
さらに関心を持っている銘柄について過去の評価をたどっていくと、その企業についてより詳しく知ることができます。分散投資で保有割合を多くしたい銘柄については、最新号だけでなく過去の号もチェックすることで、会社の本質をしっかり把握しておくことが大事になってくるのです。
四季報を読んでいくとわかる4つの「知る」
四季報を読む目的は、次の4つのことに集約されます。
1.企業を知る
2.企業の歴史を知る
3.企業の今を知る
4.企業の未来を知る
四季報読破術のノウハウの特徴は、全上場企業をすべてカバーして分析することです。すべての業界のすべての企業の動きから、世の中全体の流れを把握することができるようになります[図表]。
つまり、ミクロの動きからマクロの動きがわかり、個別企業や業界の今後の見通しについて1歩も2歩も先んじてイメージできるようになるのです。あなたも四季報を読み込むことで、さまざまなシーンで人とはひと味違った投資ができるようになるでしょう。四季報を読み込むと、次のようなことが学べます。
●四季報を使った企業分析手法の基本が学べる。
●自分が選んだ上場企業を、競合他社との比較分析を含めて実践できる。
●株式に投資するときの銘柄選定の基本や、バリュエーションの基礎が学べる。
●四季報の活用方法の基本や裏ワザが学べる。
また、この四季報ウラ読み術は、こんな人にお勧めです。
●企業分析や業界分析を学びたい人。
●株式投資の基本やコツを知りたい人。
●人より一歩先をいく経済シナリオや業界シナリオを知りたい人。
●会社経営のための景気や社会情勢の先行きを学びたい人。
●就職のための会社選びに四季報を活用したい人。
●老後や将来のために資産運用を学びたい人。
では、四季報の各企業欄から読み取れる、ウラ読み術を次回から述べていくことにしましょう。
渡部 清二
複眼経済塾 代表取締役塾長