まずは「証券コード・社名」欄を眺めてみる
四季報は、企業ごとの記述がAブロックからNブロックまで分かれています。たとえばAブロックには、証券コードが振られた企業名と設立の年月、上場の年月、事業内容などが紹介されています。このAブロックを見ているだけでも、その企業のさまざまなことを知ることができます。
私は当時、とりあえずAブロックを中心に最初のページから読み進めていきました。そうすると、Aブロックを読んでいるだけでも「こんな会社があるんだ」といった感じで面白かったのです。
四季報に掲載された企業を銘柄コード順に追っていくと【水産・農林】から始まり、次に【鉱業】や【建設】など「重い」イメージの業種がズラッと並んでいます。建設会社は今でこそ業績もいいのですが、当時は業績も悪くイメージも「重かった」感じでした。
四季報も掲載されている銘柄コードが2000番台になってくると、【食料品】などが登場し、日頃から目にする企業が数多く登場してくるので、多少はホッとした気持ちになります。3000番台に【小売業】【繊維製品】、4000番台が【化学】、4500番台に【医薬品】、5000番台に【石油・石炭製品】【鉄鋼】、6000番台に【機械】や【電気機器】などの関係企業が顔を出してきます。
7000番台に入ると、自動車などの【輸送用機器】【精密機器】などが登場します。私がもっとも読み進めるのがつらかったのは、地方銀行(地銀)などが記載されている8000番台【銀行】のページでした。その際、都道府県別にどういう地銀があるのかを整理しながら読み進めていきました。
読破作業に取り組んでみると、こうした苦労もあって〝過酷〟な作業でした。最終的に生まれて初めて完全読破した四季報は、1998年新春号(1997年12月発売)でした。今では慣れもあって2、3日で読破できますが、このときは読破するのに1週間以上も費やしました。
4冊目の四季報読破でついに見つけた「成長株」
四季報の読破では、初めはいろいろな企業を知ることから始めました。読み進めていくうちに、この情報誌の奥深さがわかってきました。それ以来、各号の読破を21年間にわたって継続しています。
今では、2日半で1冊を読破できるようになりました。これを継続できた秘訣は、読破すること自体を目的としてこなかったからです。代わりに、いかに読破した四季報を仕事や生活に活かすかを考えていました。
四季報の読破を仕事に活かしたケースでは、今でも忘れられないものがあります。それは1998年、四季報読破の4冊目(同年秋号)で見つけたシートゥーネットワーク(現在は上場していない)という企業を見つけたときでした。同社は当時、上場したばかりの成長株でした。加工食品のディスカウントストア「つるかめ」などを展開する企業で、たとえば、マヨネーズはトップブランドの「キユーピー」ではなく、値段は安いがマクドナルドで使われ、味は確かな「ケンコーマヨネーズ」を置くなど、ユニークな品揃えで差別化を図っていました。
同社株を見つけ出す少し前に、ドンキホーテホールディングス(7532)が上場していました。当時、デフレが進行していて、ディスカウントストア業態はまだめずらしく、こうした時代にマッチした銘柄が注目を浴びていたのです。
この銘柄を見つけ、顧客に同社の株式の購入を推奨していました。結果的に、同社の株価は、なんと1年ちょっとで20倍以上に大化けしたのです。ちなみに、同社は2003年、イギリスのスーパーマーケット最大手のテスコに買収され、テスコグループの一員(テスコジャパン)として事業展開を行い上場廃止。
その後、テスコが日本市場から完全撤退を表明し、イオングループの完全子会社(イオンエブリ)となりました。しかし、店舗を閉鎖してイオングループに譲渡、1年余りでイオンエブリとしての事業を終了しています(以上、フォレスト出版株式会社編集部注)。
銘柄コードの一定の番台に固まっている「大化け株」
四季報から見つけた銘柄を個人的に初めて買ったのが、ベビー・子供衣料小売りの西松屋チェーン(7545)でした。この企業の株価は、あっという間に2倍になっています。おそらく「ビギナーズラック」だったとは思いますが、それでも無意識のうちに、当時「デフレ」というテーマをとらえていました。
つまり、デフレに合致する銘柄で「上場したての成長株」をたまたま見つけていたのです。四季報読破を目的としないでページをめくっていなければ、こうした「大化け株」を見つけることができなかったのも事実です。
もちろん、シートゥーネットワークの件は顧客からは大いに感謝され、四季報読破が仕事の結果にも直結することを実感しました。西松屋チェーンは、証券不況のあおりを受けて山一證券が自主廃業(1997年)した「山一ショック」のあとで、大半の投資家がこのような「大化け株」が眠っていることに気づいていませんでした。
時代は、デフレという厳しい状況下で中小型の「大化け株」候補を探していた1998年後半から1999年にかけて、IPO(新規公開株を購入する権利)が上場したら軒並み10倍、20倍に値上がりするような「ITバブル」(2000年)が近づいていました。その先頭を走っていたのは、ソフトバンクグループや光通信(9435)で、ほかの中小型の「大化け株」候補も実際、10倍、20倍は当たり前のように高騰を続けていたのです。四季報はこうした銘柄を探し出すうえで、欠かせない情報を提供してくれます。
しかし一方で、1冊2000ページをすべて読破するというのは非現実的なことも確かです。掲載されている膨大な銘柄の中から、本当に成長株を見つけることができるのかと疑問に思う人もいるでしょう。ですから、ウラ読み術の第一歩としては、たとえば、現在の世の中の流れを考えて、次の3つの条件に見合った銘柄を見つける方法があります。
①AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、スマホ、人材など、時流のテーマに乗っている。
②最近、上場している(直近5年程度)。
③成長株である。
実は、これら3つの条件に見合った銘柄は、いわゆる大型株よりも中・小型株に多く見られます。おそらく多くの人が知らないような企業があり、そうした業種には【情報・通信業】【サービス業】【卸売業】【小売業】【不動産業】【その他製品】などがあります。
最近のIPOは今までの業種の順番とは別に、コードが空いているところに振り分けられるため【業種】とコードがリンクしていません。そこで3つの条件の銘柄は次のような番号に振られています。
【3つの条件に合った業種の証券番号】
●3400番台
●3900番台
●4380番~
●4420番~
●6000番台
●6165番~
●6530番~
●7148番~
●9260番~
ですから、あまり四季報に接していない方は、このあたりのページから見始めるとビギナーズラックに遭遇できるかもしれません。これなら、完全読破に要する労力の10分の1から15分の1ほどですむでしょう。とにかく、まずは四季報をめくって、そこにどんな企業があるのかを知ることが、ウラ読み術の第一歩と考えてください。
渡部 清二
複眼経済塾 代表取締役塾長