相続対策は税制や社会状況に応じた軌道修正が必要
昔から相続税の節税対策として主流となっているものが、いくつかあります。「賃貸物件の建築」などは、その代表格といってもいいでしょう。
相続税を払うのは、一部の資産家のみであった時代、税額は莫大なものになることが多々ありました。特に地主などは、課税される遺産の大半を土地が占めるため、莫大な税金を払う資金がなく、泣く泣く先祖代々の土地を売却し納税するといったケースもあったのです。そのような事態を回避するべく、さまざまな節税対策が提唱されることとなりました。
お気付きの方も多いと思われますが、節税対策の多くは、それ自体ビジネス市場に組み込まれていますので、必ず得をする業界があります。例えば賃貸物件の建築をする際には、ハウスメーカーが利益を得ることとなります。
本来、相続税対策というものは、長期的な視点に立って考えて、税制や社会状況の変化に応じて軌道修正していく必要があります。ところが実際は、利益ばかりを優先した対策を勧めるだけで、その後のフォローやケアに欠けている業者が多いというのが現実です。
自分の立場に有利に動くように話を進めることを「ポジショントーク」といいますが、業者のそういった営業戦略がまかり通っているのが、相続税対策の世界なのです(もちろん、筆者自身にもポジショントークというものはあります。不動産会社やハウスメーカーといったほかの業界と提携をしているわけではありませんが、相続税専門の税理士という立場でお話をするということです)。
自分の資産をどう残したいかを考える
業者に何らかの相続税対策を勧められた場合、まずは対策が本当に必要なのか、ご自身で考えてみる必要があります。相続税の節税が目的なのですから、専門的な知識のある税理士に相談することも重要です。
大切なのは目先の利益にとらわれず、自分の資産をどう残していきたいのか、自分の資産に合った運営方法は何なのかを追求することです。本連載では、従来の節税対策の「リスク面」に特に焦点を当ててご紹介します。大事な財産のことですから、焦らず、正しい知識を身につけて相続に備えましょう。