物流のBtoC化…倉庫が直面している「3つの問題」とは?

インターネット通販が浸透することで「物流のBtoC化」が進み、倉庫の負担はますます増えています。現場には様々な問題が起きていますが、それらをまとめると、「誤出荷」「在庫差異」「入荷・出荷遅延」の3つに集約されます。本記事では、それらの問題が起こるプロセスと、商品の出荷がスムーズに進まないことで企業が被るダメージについてくわしく見ていきます。

消費者からのクレームに直結する「出荷ミス」

物流のBtoC化で倉庫の負担が強まることで、具体的にどのような問題が現場で起きているのでしょうか。さまざまなケースが考えられますが、まとめると「誤出荷」「在庫差異」「入荷・出荷遅延」に集約できます。

 

●誤出荷

 

読んで字のごとく、出荷指示に対し誤った出荷をしたことを指します。平たく言えば「出荷ミス」です。

 

誤出荷は消費者にとって〝自分が注文した商品がきちんと届かない〟ことを意味するわけですから、即クレームにつながる可能性が高いのです。長年倉庫業を営んできた当社にも、「誤出荷によるクレームが頻発して困っている」という相談が全国から相次いで寄せられています。

 

なかでも傾向として多いのは、新たにEC小売業に参入して問題を抱えるようになったケースです。ネット通販を始めた途端に未熟な倉庫管理が露呈し、誤出荷によるクレームの嵐でどうにもならなくなってしまうのです。

 

例えば昨年に相談が寄せられた企業様の場合、産業機器をネット通販で販売するビジネスモデルを構築し、事業を展開されています。

 

話を伺うと、1日に80件以上も誤出荷を出してクレームが頻発しているといいます。物流部長の方も「どうすればいいか分からない」とお困りの様子。トラブルの原因を調査すると、どうやら前任の物流担当者が導入した倉庫管理システムに問題があることが分かってきました。現場の実態に即したシステムになっていないため、うまく機能していないのです。

 

そこで、倉庫管理システムの改善を提案したところ、「前任者が入れたシステムなので触ってもらったら困ります」との返事。詳しくは後述しますが、物流現場ではこのように目的と手段を履き違えた設備投資が当たり前のように行われている実態があります。

 

同じく昨年に問い合わせをいただいた企業様(地方の有力メーカー)は、業績も右肩上がりで順調に商売を展開されています。ところが、業務委託をしている物流業者の倉庫管理に課題が多く、誤出荷が止まらないというのです。「とにかく早くなんとかしてほしい」と再三のご要望があり、現在も物流改善に取り組んでいるところです。

 

このように倉庫でトラブルを抱える企業に共通するのは、物流担当者が意識していたか否かは別として、「倉庫管理くらいできるだろう」と軽く考えていた点でしょう。卸売りが主体だった時代は大きなトラブルはなかったはずですから、「なぜネット通販を始めたくらいで倉庫管理が混乱するのだ」と疑問に思うのも無理はないかもしれません。ところが消費者からのクレームが多発し、ようやく事の重大性に気づくのです。

 

しかしながら、物流担当者は消費者を相手にしたBtoC物流の経験がないため、何をどうすればトラブルを改善できるのかが分かりません。

 

そこで安易に手を出しやすいのが高価なマテハン機器や倉庫管理システムなどですが、現場の実情を理解しないままにこれらを導入してしまうと、逆に現場が混乱してしまうケースもおおいにあります。

 

そして、物流品質がさらに悪化し消費者からのクレームも倍増し、その結果EC事業が行き詰まってしまうのです。

一度発生すると取り戻せない「在庫管理のミス」

●在庫差異

 

帳簿上の在庫数と実際の在庫数が合わないことをいいます。

 

例えば月末や決算期末などに実地棚卸を行い、在庫が合わずに苦労した経験のある方も多いのではないでしょうか。スタッフ総出で膨大な在庫を数え、帳簿上の在庫数と突き合わせた結果、数が違ったときの精神的なダメージたるや・・・あの徒労感や虚無感は経験者でなければ理解できないものです。

 

在庫が合わない場合は改めて点検し直す必要がありますが、〝数を数える〟というアナログ作業は簡単なようで、実は人が行うからこそミスが生じやすいのです。そのため、限られた時間に追われて実地棚卸をしても「数えるたびに合計が違う」といった結果が繰り返され、ピタリと一致することはほぼないというのが実態ではないでしょうか。

 

在庫差異が頻繁に生じると、「本当にこの数は合っているのか」「在庫が合っているはずがない」といった不信感が現場に広まる危険性もあります。そうなると「多少のミスは仕方がないだろう」と現場の意識は緩み、ヒューマンエラーや誤出荷事故が起きやすい環境になってしまうのです。

 

本来、在庫管理は難しい作業ではありません。在庫とは「入荷−出荷」であり、入荷と出荷をきちんと管理している限り、狂うはずはないのです。ですが、言うは易く行うは難し。人が管理する限り、ヒューマンエラーは必ず起こります。

 

例えば入荷時の検品ミスで、数量間違いの商品を受領すれば在庫差異につながります。また次項で説明するように、出荷指示の出た商品とは別の商品を間違ってお客様に発送すれば、システム上は「1」在庫があるはずの商品が棚からなくなります。一方、システム上は「1」減ったはずの商品が倉庫内のどこかに存在するという、ちぐはぐな在庫差異が生じるのです。あるいは単純に、事務作業で入力間違いや数字の読み間違いをしても在庫数は狂います。

 

このような在庫差異のケースも、ネット通販に参入した途端に商売が成り立たなくなります。システム上は「1」あるはずの商品をお客様が注文後、その在庫が倉庫にないことが分かった場合、お客様にその旨を説明して謝罪しなければなりません。在庫差異が増えるほどお客様に迷惑をかける機会は多くなり、トラブルに発展するリスクが増えてしまうのです。

 

トラブルの程度によっては、出店しているモールからペナルティを受けることもあります。一定期間の販売停止や、場合によってはモールからの退出を迫られることもあります。集客力のあるモールへの出店を閉ざされてしまえば、商売の根幹に影響を及ぼしかねません。大きな機会損失につながるのです。

 

在庫差異は一度発生してしまったら、二度と元に戻せません。一つの商品を追うためだけに膨大な時間と手間がかかるのです。それがどんどん広まってしまえば何が何だか分からなくなります。

 

在庫差異を引き起こすリスクの芽は無数にあります。その芽を摘んでいくための泥臭い対策を、全社員・全スタッフの共通認識のもと地道に徹底的に行い、誤出荷を絶対に出さないことが大切なのです。

倉庫管理が正しく機能しなければ、入出荷に遅れが発生

●入荷・出荷遅延

 

季節の売れ筋商品を他社よりもいかに早く仕入れるか。仕入れた商品をいかに素早く出荷するか。販売戦略上、商機をものにできるかどうかを左右する重要な課題です。ところが倉庫管理がうまくできていなければ、入荷や出荷の遅延を引き起こしてしまうのです。

 

入荷量が多い時期は、決まって出荷量も多いタイミングです。急な増員が間に合わず、出荷作業を優先すれば入荷作業が後回しになり、気がつけば入荷した商品を一週間も放置してしまった・・・そんなことが現実的に起きています。

 

せっかく仕入れたにもかかわらず、倉庫で何日も眠らせて入荷計上が遅れれば販売機会の損失そのものです。出荷に関しても同様です。倉庫管理がうまく機能していなければ、出荷指示を受けてからの工程が遅れがちになります。

 

例えばシステム上「在庫1」となっていて、出荷指示書が出ているにもかかわらず、その商品が保管されている棚に行くと目的の商品がないとしましょう。この場合、可能性として考えられるケースは2パターンです。一つは、実際に何かの手違いで実在庫が倉庫からなくなっているケース。そしてもう一つは、その商品が行方不明となり、倉庫内のどこかにあるケースです。

 

取りに行った商品がない場合、ピッキングを担当している作業員が感じるのは精神的な負担です。その場所にあってしかるべき商品がないわけですから、ただでさえ忙しいなか、対応する手間も増え苛立ちを覚えます。

 

次に作業員の頭に浮かぶのは、「探せばどこかにあるかもしれない」という期待です。しかし「探しても見つかるわけがない」という現実的な推測が、その期待を即座に打ち消します。

 

なくなった商品が倉庫のどこかにあったとしても、広い倉庫内を隅から隅まで探すことはできません。すでに倉庫に存在していないとすれば、探す手間と時間が徒労に終わるということも考えられます。

 

そうしたトラブル発生時の行動指針をまとめたマニュアルがない場合、行動や対処法に個人差が生じるリスクもあります。場合によっては問題を放置し、社員に報告すらしないかもしれません。商品がないと分かった時点で現場責任者にすぐ報告できればよいのですが、忙しいときほど、つい後回しにしてしまうものです。そうなると、お客様にとっては注文した商品が届かないわけですから、間違いなくクレームに発展するでしょう。

 

入荷した商品がすぐに出荷できる──当たり前のことだと思われるかもしれませんが、倉庫管理の仕組みが機能していない限りこれは非常に難しいことなのです。

 

 

山田 孝治

株式会社三協代表取締役社長

株式会社三協 代表取締役社長

1958年生まれ。神戸大学工学部卒業後、三井ホームに入社。その後退職し、1982年株式会社三協に入社。1999年株式会社三協代表取締役社長に就任。
従来の物流倉庫のスタイルを一掃し、社内にシステム室、デザイン室を開設。総合物流の効率化を図ると共に、ネットショップ物流に特化したSANKYO-ECを立ち上げるなど、30年間現場一筋。
「地に足物流」すなわち「物流事故が起きるのは会議室ではなく物流現場。机上の空論ではなく、地に足をつけて取り組む」をモットーとし、数ある物流倉庫の「誤出荷ゼロ」「在庫差異ゼロ」「入出庫遅延ゼロ」を実現させてきた。

著者紹介

連載誤出荷ゼロ!中小・零細企業の「自社倉庫管理」の極意

誤出荷ゼロ!自社倉庫管理術

誤出荷ゼロ!自社倉庫管理術

山田 孝治

幻冬舎メディアコンサルティング

自社倉庫を持つ中小企業が抱える、あらゆる倉庫管理の喫緊の課題・・・ その解決策は、現場一線で〝物流品質〟(正確さ、スピード、コスト)を追求し続ける東大阪の倉庫業にあった! 「誤出荷ゼロ」「在庫差異ゼロ」「入出庫…

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