マニュアル作成のポイント⑤注意を喚起する工夫
倉庫現場は個別色が強いため、改善例を挙げ始めるときりがありません。そのため、ここではどの倉庫にも当てはまる共通項を7つ挙げ、解説したいと思います。今回は、マニュアル作成のポイント⑤として、「現場の注意力喚起の工夫」について取上げます。
倉庫管理マニュアル「7つのポイント」
ポイント①:作業環境を整備する
ポイント②:入荷管理を徹底する
ポイント③:ロケーション表示を簡略化する
ポイント④:確認作業を処理作業化する
ポイント⑤:注意力を喚起する工夫を随所に盛り込む
ポイント⑥:バーコードを活用し、リアルタイムで正確な在庫管理を行う
ポイント⑦:バーコード管理の環境を整える
↑今回は「ポイント⑤」と「ポイント⑥」!
● 文字、音、色を利用して注意を促す
ミス防止には作業者が注意力を自然と喚起できる工夫が有効です。必要のない情報は極力排除する、重要な情報は文字を大きくする、作業性を考慮して文字やバーコードのレイアウトを行う・・・などです。
これをシステム会社にお任せしてしまうと、現場を最優先に考えた愛情こまやかな工夫を盛り込むことはできません。
そのほか、現物表示のシールや看板も工夫し、類似表示品と区別しやすいよう該当箇所を大きくしたり、色を変えたりするなども効果的でしょう。さらに数字やアルファベットではなく「平仮名」を使うのも効果があります。
●「色」を活用して出荷時の伝票誤貼付を防ぐ
送り状などの伝票類と、出荷準備をした商品がテレコの状態になるミスを防ぐ対策も必要です。この場合は「色」を有効活用するのも効果的でしょう。
例えば、「出荷場に各出荷先の色看板を設置し、看板と同色の台紙に送り状を挟み込んで作業者に手渡す」「出荷時には看板と同色の同梱テープを使用する」などです。出荷先ごとに色分けすればテレコのミスを減らせます。
もしくは、当社が運営代行する物流倉庫では、商品をケースに投入する際に店舗看板の色とタブレット画面の色を合わせています(図表)。小さな工夫と思われるかもしれませんが、色を活用することで無意識に注意を促すことができるのです。
直感的に理解できる「色」は確認作業を処理作業化する際の有効な手立てになります。
マニュアル作成のポイント⑥バーコードの活用
● ヒューマンエラーをシステムで食い止める
検品作業の箇所でも触れたように、バーコードを導入すれば倉庫管理の効率と品質を飛躍的に向上できます。例えば、次のような倉庫管理の問題があるとしましょう。
<問題点>
•常に在庫差異がある状態で、正確な在庫管理ができていない
•誤出荷により、在庫差異がさらにひどくなってしまう
こうした場合、すべての商品にバーコードを表記し、入出荷や倉庫内での移動時に必ずバーコードを読み取るという対策を取ることで、次のようなメリットが生まれます。
<改善結果>
•人の手による商品の取り間違えを防ぐことができる
•誤出荷や在庫差異の発生を防ぎ、商品を正確に管理することができる
•タイムラグのないリアルタイムな在庫状況の把握ができる
● リアルタイムな在庫管理が可能
改善結果の三つ目にもあるように、在庫状況をリアルタイムで把握する際にもバーコード管理は有効です。
特にネットショップでは、正確な在庫状況をリアルタイムで把握する必要があります。バーコードを導入すれば、入出荷の際に商品のバーコードを読み込むだけで簡単にデータ入力ができ、在庫情報を即座に把握することができます。また、バーコードの読み取りはスキャナーをかざすだけなので、作業の効率化にもつながります。
●「情報の一元管理」が大前提
ただし、バーコード管理を機能させるためには「情報の一元管理」と「ジャスト・イン・タイムの情報提供」が必要不可欠です。
まずは「情報の一元管理」について説明します。複数のネットショップに出店している場合、ショップごとに異なるシステムで受発注や在庫管理を行っていては、在庫状況を正確に把握するのが難しいものです。
例えば「Rモール」「Yショッピング」「Bオークション」に出店し、倉庫の実在庫数が「2」ある商品Aが「Rモール」で「1」売れた場合、「Rモール」のシステム上の在庫データは「1」に減る一方で、他の2ショップの在庫データは「2」のままです。
そのタイムラグの間に、「Yショッピング」経由で商品Aが2つ売れた場合、実際の在庫は1つしか残っていない旨を購入者に説明し、謝罪しなければなりません。
もしくは、すでに商品Aの実在庫数は「ゼロ」になっているにもかかわらず、各ショップの在庫データはまだ「2」のままになっている・・・。
こうした不透明な運営が長期化すると、仕入れ、出荷、返品・・・などと日々移り変わる状況下で、実在庫数と管理画面上の在庫データはどんどんずれていってしまいます。そうなると販売チャンスを逃すばかりか、お客様の信頼を損なってしまうでしょう。
このような状況では、バーコードを導入しても正確な数を把握できません。複数のネットショップのシステムを一元管理するシステムに、新たに構築する必要があるのです。
そして、いずれかのショップで商品が「1」売れると、その出荷指示が一元管理システムに瞬時に飛び、実在庫数とすべてのショップの在庫データが「1」減る仕組みにしなければなりません。複数ショップを運営している場合は、システムの一元管理とバーコードの導入が両方必要であると考えてください。
● 返品不可ではEC市場から退場を迫られる
「情報の一元管理」が可能となり、バーコード管理が機能するようになっても、返品対応という別の問題があります。
エンドユーザーから返ってきた返品商品は、即リバイバルするとともに、すぐに在庫データに反映し、次の出荷に備える必要があります。それができなければ、未処理の返品の山が倉庫に築き上げられてしまいます。
「リバイバル作業」は、業務フローの工夫と事前準備でいかようにも対応できます。しかし「在庫データ」については、システム上の連携が不可欠です。リバイバル後にデータに即反映する仕組みがない場合、せっかく良品在庫に戻すことができたとしても、出荷指示がかかることなく販売チャンスを逃してしまうからです。
ネットショップでビジネスを拡大するためには、いかに返品対応をスムーズに行えるかが重要です。
山田 孝治
株式会社三協代表取締役社長