財務省OBで、現在、日本ウェルス(香港)銀行独立取締役の金森俊樹氏が、「中国経済の実態」を探る本連載。今回は、中国の政治サイクルが景気に与える影響を見ていきたい。

1986年以前は約5年、それ以降は約10年の周期性

景気のサイクルを重視する観点からは、中国を代表する経済学者の一人であった成思危(全人代常務委員会元副委員長、昨年死去)の議論がある。それによると、中国経済には1986年以前は約5年、それ以降は約10年の周期性がある。

 

2013年11月の第3回共産党中央委員会全体会議(略称、三中全会)で示された一連の改革が深化し、また指導層が経験を積み重ねてくることが期待されること、17年に第19届共産党大会が開催、18年の全人代を経て指導層の交替・一部若返りが予想され、同年の秋に新政権での三中全会が開催されることから(注)、19年頃に向けて成長率が加速し、20年までにGDP、および一人当たり収入を10年比倍増するという目標が達成され、その後は、“基数効果”(GDPの規模自体が大きくなること)、およびその他種々の環境変化から成長率は7%、6%と次第に低下するとの中長期見通しを示した。

(注)「三中全会」は、5年に一度開催される共産党大会で選出された中央委員らによる3回目の全体会議。直近では2012年に第18回党大会が開催され、現在は「第18届」の期間と呼ばれる。したがって、各届期間に三中全会がある。通常、第1回の全体会議(一中全会)が選出の際、第2回(二中全会)が、翌年の全人代の際、政府指導部人事との関係で開催されることから、第3回の全体会議が、新指導層になってからの実質的に最も重要な会議と位置付けられており、主として、経済政策面の議論が中心になる。こうしたことから、三中全会は各政権の基本的な経済方針を決める重要会議として注目されている。

今回の局面は90年代後半のアジア金融危機時に類似

こうした観点から、過去の三中全会前後の成長率を見てみると、概ね三中全会の翌年に成長率が下がった後、2年目以降成長率が高まり、三中全会直前年にピークを迎えるという政治的サイクルが見てとれる(図表1)。

(注)たとえば2013-17年は、2013年に三中全会が開催されたサイクルを表している。
(出所)ANZリサーチ他

これから類推すると、今回の局面は、13年の三中全会の後、2年目になる15年もなお成長率は下がり続けており、90年代後半のアジア金融危機時のパターンに似ている。新常態への移行という局面転換も勘案し大胆に予測すると、16、17年とさらに成長率は鈍化した後、次の三中全会が開催される18年頃から反転、しかしそれでもせいぜい6-7%程度の成長率に止まり、20年までの倍増目標がなんとか達成されるというのが、ひとつのシナリオとしてあり得よう。

 

 

本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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