財務省OBで、現在、日本ウェルス(香港)銀行独立取締役の金森俊樹氏が、「中国経済の実態」を探る本連載。今回は、中国の人口構成、投資効率の変化などについて見ていきたい。

高齢化が進む中国の人口構成

労働力については、高齢化が急速に進み賃金が上昇、いわゆるルイス転換点(注)が既に到来し、労働力需給が逼迫し始めていること、資本については、過剰設備を抱え、投資効率が傾向的に低下していることから、これまでのように、安価な労働力を武器に投資主導で高成長を維持することはできなくなっている。

(注)工業化の初期段階では、余剰労働力を抱えた農業部門から工業部門へ安価な労働力が移転されるが、工業化の進展に伴い、農業部門の余剰労働力が底をつき、労働需給が逼迫、賃金が上がり始める。この転換点を指す。

 

中国の人口構成は、直近のいわゆる“普査”、国勢調査(2010年時点、図表1)によると、0-14歳のシェアが1980年代の30%程度から10年は16.6%にまで低下する一方、50歳以上のシェアは16%程度から25.3%にまで上昇、11年以降もこの傾向は加速している(図表2)。

 

【図表1 中国の人口構成推移】

出所:中国第6次人口調査より作成
出所:中国第6次人口調査より作成

 

【図表2 全国年齢階層別人口】

(注)2011,12年は、0-14歳、15-59歳の区分、カッコ内はシェア。
(出所)中国国家統計局「国民経済社会発展公報」各年版
(注)2011,12年は、0-14歳、15-59歳の区分、カッコ内はシェア。
(出所)中国国家統計局「国民経済社会発展公報」各年版

高成長の達成に必要な投資額は年々増加

投資効率については、中国のGDP統計から限界資本係数(GDP1単位を生み出すのに必要な投資額)を算出すると、2000年以降加速度的に上昇、投資のGDPに占めるシェアも4割を超えており、高成長を達成するために必要な投資額が増え、それが資源の浪費、ひいては環境汚染が悪化させる要因になっている(図表3)。今後、資本と労働両面の大きな寄与が見込めないとすると、TFPの上昇がどの程度期待できるかが鍵となってくる。

 

【図表3 限界資本係数で見る投資効率】

出所:中国国家統計局統計より著者作成
出所:中国国家統計局統計より著者作成

 

 

本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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