「ステロイド剤」が白内障や緑内障を発症させる理由
白内障手術を受ける人のほとんどは、加齢が原因と考えられる「加齢性白内障」です。しかし加齢性白内障のほかに、アトピー性皮膚炎や糖尿病などの合併症で、白内障を患うことがあります。現在、白内障手術を受ける人の平均年齢は70歳前後ですが、加齢性白内障以外は年齢に関係なく、30代、40代でも発症して手術を受ける患者さんがいます。水晶体が濁って白内障を発症させる原因は、次のようなものが考えられます。
◆加齢性白内障
白内障にかかっている人の約90%は加齢性白内障です。発症する年齢や進行のスピードに個人差はありますが、前述したとおり、60代で半数以上、70代で80%以上、80歳を超えるとほぼ100%の確率で発症します。白内障は病気ですが、誰もが避けて通ることのできない「老化現象の一種」ともいえます。
◆糖尿病白内障
糖尿病は、さまざまな合併症を引き起こしやすい病気です。特に目は、糖尿病の影響を受けやすい器官の一つに挙げられます。糖尿病網膜症が糖尿病腎症、糖尿病神経障害と並んで「糖尿病三大合併症」に数えられていますが、眼疾患では糖尿病網膜症以外にも、糖尿病白内障が有名です。
◆アトピー白内障
白内障とアトピー性皮膚炎の関連性は、まだはっきり分かっていません。しかしこれまでの研究によると、アトピー性皮膚炎にかかっている期間が長い患者さんほど、また顔の皮膚症状が重い患者さんほど白内障を合併する率が高いといわれています。目を頻繁にこすったり、眼球に爪が当たって傷をつけてしまったりすることが何らかの影響を及ぼしているのかもしれません。
◆外傷性白内障
目のケガなど、外的な力などによって起きます。例えばテニスやゴルフのボールが目にぶつかった場合、水晶体が混濁することがあります。ボクシング選手や力士など、格闘技系のスポーツ選手にも多い白内障です。
針や刃物などの異物が角膜を貫通し、水晶体に直接傷をつけたときも白内障の発症につながりやすくなります。
また、過去に目にケガをしたことのある人、目の手術を受けたことのある人は、白内障の進行が早まる傾向にあります。
◆併発白内障
ほかの目の病気が原因となって起きる白内障で、併発白内障を招く可能性がある病気は、ぶどう膜炎、網膜色素変性症などです。
◆薬剤性白内障
ほかの病気で投与された薬が原因となって起きる白内障です。代表的な例は「ステロイド白内障」です。
副腎皮質ホルモンの一種であるステロイド剤は、強い抗炎症作用を持つ治療薬として、リウマチ性疾患、アレルギー性疾患、ぜん息発作など幅広い分野の疾病の治療に使用されます。反面、長期にわたって使い続けると感染症、骨粗鬆症、糖尿病などさまざまな副作用を引き起こす危険性があり、眼科では白内障や緑内障を発症させることがあります。
◆先天性白内障
ここまでの白内障は「後天性白内障」とまとめられますが、先天的に水晶体が濁り白内障を発症してしまうケースもあります。遺伝によって起きるもの、胎児の頃に母親が風疹に感染したことによって起きるものなどが考えられます。
◆その他
ほかにも放射線、紫外線などが白内障を発症、または悪化させる原因と考えられています。
「自覚がない」まま白内障が進行しているケースも…
白内障の自覚症状は、必ずしも進行の段階に応じて現れるものではありません。白内障は主に「皮質白内障」「核白内障」「後嚢下白内障」の3種類に分けられます(3主病型白内障)。少し専門的になりますが、自覚症状の現れ方に違いがあるので触れておきましょう。
◆皮質白内障
最も多いタイプの白内障です。水晶体の周辺部にあたる皮質の部分から濁り始めます。混濁が皮質部にとどまっている間は視力に支障はありませんが、中心部(核)のほうへ広がっていくと、だんだん「目がかすむ」「まぶしい」「ダブって見える」「視界が黄色っぽい」などの症状を感じるようになります。言い方を変えれば、自覚しないうちに白内障が進んでいるケースも少なくありません。
◆核白内障
水晶体中心部の核から濁りが広がっていくタイプの白内障です。比較的、初期段階から「目がかすむ」「視界が黄色っぽい」といった自覚症状が出ます。核に濁りが積み重なってくると、核の硬さや大きさが増し、目に入ってくる光の屈折を変化させます。これが「近くのものが見やすくなった」と感じる段階です。
◆後囊下白内障
水晶体囊という水晶体の後ろ側から濁ってくる白内障です。症例はそれほど多くありませんが、早めに治療しないと重篤化するタイプです。自覚症状としては初期段階から強いまぶしさを感じやすく、急激に視力が低下することもあります。
以上のような自覚症状や、もしかして白内障かも?と感じたら、まずはすぐに眼科へ行きましょう。眼科の病院・クリニックへ行くと、まず問診と検査が行われます。
藤本雅彦
医療法人敬生会フジモト眼科 理事長兼院長