本記事では、年間1000件以上の日帰り白内障手術を手掛ける、医療法人敬生会フジモト眼科・理事長兼院長の藤本雅彦氏が、術式、費用、手術の最適なタイミングなど、一生に一度の「白内障手術」で後悔しないための基礎知識をわかりやすく解説します。今回は、白内障初診時の問診で聞かれることについて見ていきます。

「ものの見え方にゆがみはありますか?」

初診時の問診で症状を客観的にチェック

 

初診時は、診察前に問診票を渡されますので、質問事項に沿って記載してください。問診では、以下の項目を質問されます。

 

◆初診時、問診の主な内容①

自覚症状の詳細を確認する

 

例えば患者さんが「ものが見えにくくなった」という場合、医師は「それは遠くを見たときに感じますか? それとも近くを見たときに感じますか?」「明るい屋外と暗めの部屋では、どちらが見えにくいですか?」「ものの見え方にゆがみはありますか?」「視野が狭くなった気はしますか?」などと質問をして、見えにくさの種類をより詳しく把握します。

 

また、白内障では一時的に近視化するケースもありますから、それを想定して「最近、老眼鏡が要らなくなったようなことはありませんか?」というように、当てはまる可能性の高い質問を行います。

 

来院までの経緯を聞く「その自覚症状はいつごろ始まりましたか?」「今は強くなっていますか? それとも弱くなっていますか?変わらない状態ですか?」など、症状の経過を聞きます。

 

症状の進行スピードを知ることは、すぐに手術が必要か否かを判断する材料になります。

 

気になることや困っていることがあれば、何でも医師に伝えましょう。

 

医師や看護師は、患者さんが診察室に入ったときから様子を観察しています。歩く速さや歩き方、姿勢、しぐさなどに、病気を推測するヒントがあるからです。患者さんから得られる情報が多いほど、より適切な治療をするための参考になります。

 

見方を変えれば、患者さん側もこのとき医師を観察することができます。もしも白内障手術を受けることになれば、眼内レンズの選定などで、医師との意思疎通が、手術後の満足度を左右するかもしれません。医師や看護師をはじめ、病院やクリニック側のスタッフと信頼関係を築くことが、良好な治療結果を得るための第一歩になります。きちんと話を聞いてくれるか、コミュニケーションをとりやすいかなどを把握しておきましょう。

 

患者さんが高齢で診察の受け答えに不安な場合は、付き添う方がサポートをしてあげてください。また、白内障手術に備えて既往歴や使用中の薬も質問されます。

手術前後に感染等の危険性が高くなる「糖尿病」の患者

◆初診時、問診の主な内容②

既往歴を聞く

 

・緑内障

眼圧や使用している点眼薬の本数にもよりますが、緑内障を患っている場合は、白内障と緑内障を同時に手術する可能性も検討します。

 

・糖尿病網膜症

白内障手術によって手術後に黄斑浮腫(おうはんふしゅ)が出現、悪化することがあります。事前に分かっていれば、白内障手術の前に網膜光凝固術を行うなどの対策を講じることができます。

 

・加齢黄斑変性

加齢黄斑変性は、網膜の「黄斑」という部分に異常が現れる病気です。いくつかの種類がありますが、病状が落ち着いていないまま白内障手術を行うと、水晶体の混濁を除去しても視力が回復しない場合があります。

 

・屈折異常の内容

白内障を発症する前は遠視であったか、近視であったか、乱視であったか、患者さんの過去の屈折異常について聞きます。眼内レンズを選ぶときの参考になります。

 

一般的には、手術前の度数と類似した度数の眼内レンズを選ぶと、手術後の生活も快適に感じられます。

 

・眼底出血

過去に患った眼底出血の種類によっては、白内障手術をしても視力が十分に出ない場合があります。

 

・網膜剥離手術

はがれた網膜を元に戻す網膜剥離手術には「強膜バックリング術」と「硝子体手術」の2種類があります。いずれかによって、白内障手術の際に注意すべき点が異なります。

 

全身状態について聞く

多くは手術全般を受ける際に共通の注意事項ですが、中には白内障手術特有の理由を持つものもあります。

 

・アレルギーの有無

特に薬剤アレルギーがある方は、手術を受けるとき注意が必要です。薬の名前を覚えていなければ、どのような病気のときに使った薬なのかだけでも医師にお伝えください。

 

・糖尿病の有無

糖尿病の患者さんは、手術前後に感染等の危険性が高くなったり、手術後に糖尿病網膜症の病態が悪化したりすることがあります。特にHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の値が高い場合は内科医と連携して、血糖値をゆっくり下げてから白内障手術を行う必要があります。

 

・心疾患・脳卒中の既往歴

心疾患や脳卒中で血液抗凝固薬を服用している場合は医師にお伝えください。

 

・高血圧の有無

手術時は緊張で急激に血圧が上昇することがあります。高血圧の薬を服用している人は、手術当日の朝もきちんと服用するなど、注意事項が伝えられます。

 

・前立腺肥大症の有無

前立腺肥大症でα1遮断薬を投与されていると、白内障手術の際、虹彩に合併症が起こる可能性が高まります。手術の難易度が上がり、手術中に使用する器具も増えるため、前立腺肥大症の患者さんは使用中の薬のすべての提示をお願いします。

 

・精神疾患の有無

白内障手術は特殊な場合を除き、局所麻酔で行われます。患者さんの意識ははっきりしていますので、必要以上に不安を感じたり、手術中に過換気症候群を起こす危険性に備えて既往歴を尋ねられます。

 

・腰痛の有無

白内障手術は、手術台に仰向けに寝た状態で行われます。その姿勢を無理なく維持できるかどうか、確認しておく必要があります。

「白内障手術」で絶対に後悔しないための本

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藤本 雅彦

幻冬舎メディアコンサルティング

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