初診時の検査によってわかることとは?
初診時に受ける主な検査
初診のときは問診と並行して、検査が行われます。白内障かどうかを診断するための検査ですが、同時にほかの疾病の有無も確認します。
◆視力検査
裸眼と矯正レンズ使用の両方で視力を検査します。「急に視力が低下した」「近くのものが見やすくなった」などの自覚症状を客観的に確認することができます。
◆外眼部診察
診察室の椅子に座ると、医師が視診や触診でまぶたや顔貌(がんぼう)の状態を確認します。眼球運動や眼位(目の位置関係)の確認をすることで、手術後の複視の予測につながります。
◆細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査
細隙灯顕微鏡を用いた検査は、患者さんが小さなプレートにあごをのせて位置を固定させ、医師が対面側から顕微鏡のレンズ越しに覗いて目の中を見る検査です。眼科へ行ったことがある人なら、一度は経験しているのではないでしょうか。
この検査では、まぶた、結膜、角膜、虹彩、水晶体などの状態が分かります。特に注目するのは水晶体です。濁りがあるかどうか、あるならその場所や度合いを観察し、患者さんの自覚症状や視力低下との整合性を確認します。この時点で白内障の進行度も正確に診断できます。
◆眼底検査
倒像鏡や眼底カメラなどの器具を使って眼底(網膜のある部分)の状態を見ます。眼底に異常があると、白内障はそれほど進行していないのに視力が出ないというケースも少なくありません。
また反対に、白内障がかなり進行している場合、眼底まで観察できないことがあります。その場合、超音波検査で眼底の状態を確認することが大切です。
問診と検査それぞれの結果を総合判断し、医師は次の内容を説明します。
診察結果の主な内容
•白内障かどうか。白内障であれば、どの程度の進行具合か。
•白内障以外の病気の可能性はあるか。
•白内障手術が必要かどうか。また、それ以外の治療方法はあるか。
•白内障手術を受けることによって、どの程度の改善を期待できるか。
•白内障手術を受けた場合、どのようなリスクが考えられるか。
このとき医師は、状態に合わせて患者さんに細隙灯顕微鏡検査の画像を見せて説明します。また、白内障と診断した場合には、進行の度合いを説明します。詳しく見ていきましょう。
早期手術で生活が不便になる可能性も…
白内障の進行度による分類
◆初発白内障
水晶体の皮質の部分に濁りが現れ始めた段階。ほとんどの場合は自覚症状がない。濁りは白色、または乳白色。
◆未熟白内障
水晶体の核の部分が濁り始めた段階。濁りの場所により「目がかすむ」「光がまぶしい」といった自覚症状が現れやすい。濁りは黄色味を帯びている。
◆成熟白内障
水晶体全体を濁りが覆う。この段階にくると、水晶体の濁りを外から確認できる。視力が著しく低下し、日常生活に支障をきたす。濁りは琥珀色で、硬度が増す。
◆過熟白内障
濁りがかなり進行して危険な状態。ここまで放置すると失明の恐れがある。濁りは茶色または黒色になり、極めて硬く、手術には相応のリスクが伴う。
では、どの段階から白内障手術が必要なのでしょうか。自覚症状がない初発白内障の段階なら、手術はまだ早すぎます。治療を受けるなら、点眼薬を処方してもらいましょう。
白内障の点眼薬は、白内障そのものを完治させることはできませんが「進行スピードをゆるやかにする」ことが期待できます。
成熟白内障、過熟白内障の場合は、早急な手術が賢明です。ただし、これらの段階の場合は、通常の白内障手術より注意すべきことが数多くあります。例えば水晶体の核が非常に硬化しているため、手術時に水晶体囊やチン小帯が弱い場合があります。難易度が高く時間も長くかかりますから、手術前に精密な検査と治療計画が必要です。担当する医師の治療方針に従い、手術時期を考えましょう。
4種類の進行度合いの中で、手術時期を決めるのが最も難しいのは未熟白内障の人です。白内障は遠視、近視、乱視などの「屈折異常」とは異なる目の「病気」です。放っておけば必ず病状が進行しますが、だからといって早期発見、早期治療と急いで手術すると、手術後の生活に以前より不便さや不自由さが増してしまう場合があります。
実際、私のクリニックでは、患者さんに白内障手術をそれほど急がせないほうかもしれません。毎年1000件以上の白内障手術を行っていますが、手術のタイミングについては、患者さんと十分に話し合って決めています。