親の再婚…継父の子にはならずに「再婚後の姓」を名乗れるか?

結婚、離婚、親子、養子、扶養など、個人と家族に関する法律を対象とする「家族法」。私たちの日常生活と密接に関係した法律であり、その理解は欠かせません。本連載では、書籍『知って役立つ! 家族の法律――相続・遺言・親子関係・成年後見』(クリエイツかもがわ)より一部を抜粋し、結婚・離婚と親子関係にまつわる法律をわかりやすく解説します。

離婚と戸籍:離婚しても子は元の戸籍に残っている

●旧姓に戻らない場合

 

福井順二さんと啓子さん(旧姓:大島)が離婚することになりました。二人の間には長女美晴さん(12歳)がいます。話し合いで、美晴さんは啓子さんが引き取り、親権者・監護者になることになりました。啓子さんは、離婚しても大島には戻らず、福井を名乗り続けようと思っています。

 

この場合の戸籍は、

 

(ア)筆頭者:福井順二、配偶者:啓子(離婚により除籍)、長女:美晴

(イ)筆頭者:福井啓子

 

の二つになります。

 

●同じ福井だけれど

 

啓子さんと美晴さんは、どちらも「福井」で、住民票も同じです。でも考えてください。世間には同じ苗字の他人がたくさんいます。二人はこれと同じで、見かけは同じ「福井」でも「戸籍」が違うのです。

 

●母の戸籍に移す

 

この場合、家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立書」を提出すれば、簡単に許可の「審判」が出ます。その上で、市役所などに子の「入籍届」を出せばよいのです。ここが、一般の方に理解されにくいところです。「福井」から「福井」になるのに、なぜ家庭裁判所の許可が要るの?というわけです。ここは、「福井①」から「福井②」に移る、と考えてみたらどうでしょうか。

 

いずれにしても、この手続きを経て、

 

(ア)筆頭者:福井順二、配偶者:啓子(離婚により除籍)、長女:美晴(母の戸籍に入籍につき除籍)

(イ)筆頭者:福井啓子、長女:美晴

 

の二つの戸籍ができます。

 

●旧姓に戻ったが

 

先の例で、啓子さんが旧姓の大島に戻り、美晴さんも母の戸籍に移り大島になった場合のことを考えてみましょう。美晴さんが18歳になり、「やっぱり父と同じ福井になりたい」と思った場合は、もう一度、家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立書」を提出して許可されれば、父の戸籍である「福井」に戻れます(民法791条1項)。

 

美晴さんが成人した場合は扱いが変わります。20歳になれば、家庭裁判所の許可は不要で、届出だけで「福井」に戻れます。この場合、

 

(ア)父である福井順二さんの「戸籍」に戻る方法

(イ)自分を筆頭者とする「新しい戸籍」を作り、福井美晴になる方法

 

があります。ただし、これは20歳になってから1年以内に限り認められていますから、届出期限に注意しましょう(民法791条4項)。

離婚と戸籍:子を母親の戸籍に移したい

●子は父の戸籍に

 

離婚した場合、子は父の戸籍に入っているのが一般的です。松嶋友香さんは離婚して、3歳の一人娘彩乃さんを育てています。これは子の監護者が母であることを示していますが、それ以上のことはわかりません。親権者は母である松嶋友香さんだけれど、戸籍は父である長岡満さんのもとにある場合が、多く見受けられます。

 

●母の戸籍に移す

 

松嶋友香さんは、吉井恵一さんとの結婚を考え、彩乃さんを自分の戸籍に移そうと思っています。この場合は、家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立書」を提出すれば、簡単に許可の「審判」が出ます。その上で、市役所などに子の「入籍届」を出します。

 

ただ、親権者が父である長岡満さんであるときは、母側から「審判」の申立てができず、もうワンステップ必要です。親権者である長岡満さんからこの「審判」の申立てをしてもらうか、「親権者変更の審判」を先にして、その許可を得てから先と同じように、「子の氏の変更許可」の申立てをし、それから「入籍届」を出します。

 

●婚姻ならびに養子縁組

 

ここから先は、本連載第2回で述べた説明と同じです。もっとも3歳では、第2回の例にあった鈴木浩平くんのように「鈴木のままがいい」とは言わないでしょうけれども(関連記事『増える「子連れ再婚」…ステップファミリーにまつわる法知識』参照)。いずれにしても、「子連れ再婚」は大変です。

 

●男性が子連れ

 

ここまで、子連れで再婚するのは「女性」であるケースを考えてきましたが、男性が子連れで再婚するときも、基本的には同じです。ただ、婚姻に際して、男性の「姓」を選択する割合が高い、子が男性の戸籍に入っている場合が多いなど、女性が子連れの場合よりも若干ハードルが低いかもしれません。しかし、これは「法的な問題」に限っての話で、社会的な関係ではどちらがどうとは言えません。

 

離婚と戸籍:再婚した母の「姓」を名乗りたい

●17歳の息子

 

島田博史くんは17歳の高校生で、11年前に離婚した母、島田優実さん(41歳)と暮らし、母の戸籍に入っています。最近、母が9歳年下の加藤信也さんと付き合っています。博史くんは、信也さんを兄のように慕っていて、母と信也さんが結婚することに大賛成です。でも、信也さんと博史くんは15歳差で、「兄貴」とは思えても、「父親」となると違和感があります。

 

●養子縁組しない

 

世間には、こんな関係で養子縁組するケースはたくさんあります。自分より年上の人を養子にすることはできませんが、成年であれば「養親」になるのに大きな障害はありません。極端な場合、自分より1日でも年下であれば「養子」にすることができます。しかし、博史くんは「養子縁組しない」という選択をしました。母も信也さんも博史くんの判断を尊重してくれています。

 

●自分も加藤になりたい

 

島田優実さんは、結婚すれば「加藤」姓にするつもりです。博史くんは、養子縁組はしないが、母とは同じ苗字を名乗りたいと考えています。さて、どうしたものでしょうか? 養子縁組しなければ、博史くんは、筆頭者:島田優実(婚姻により除籍)、長男:博史として、自分一人だけの戸籍(「島田博史」)になります。

 

●強い味方・・・「子の氏の変更許可」の申立て

 

こんなとき、強い味方になるのが、家庭裁判所です。博史くんは15歳以上ですから自分の判断で家庭裁判所に「子の氏の変更許可」の申立てができます(民法791条1項)。裁判所は、「子の福祉」を基準に審理し、許可の審判を出します。審判が出れば、市役所などに届け出て、筆頭者:加藤信也、配偶者:優実、配偶者の子:博史となります。これでめでたく、加藤博史が誕生したわけです。

 

ただし、加藤信也さんと博史くんには「親子」関係はありません。それではいったいどういう関係なのでしょうか? 簡単に言うと、事実上の「家族」で「親戚」です。配偶者の子で、姻族1親等となるからです。

 

 

長橋 晴男

長橋行政書士事務所

 

長橋行政書士事務所 特定行政書士
宅地建物取引士
相続コンサルタント

1948年生まれ。兵庫県朝来市(旧:朝来郡生野町)出身。立命館大学法学部卒業。憲法(社会保障と国家)専攻。

<職歴>
社団法人(現:公益社団法人)京都保健会勤務
 同法人理事、総務部長
長橋行政書士事務所開設
*相続・遺言など「家族法」関係を専門とする

<現在>
京都府行政書士会会員
 会報編集委員長、第3支部副支部長等歴任
一般社団法人コスモス成年後見サポートセンター会員
長橋行政書士事務所

著者紹介

連載行政書士がわかりやすく解説!結婚・離婚にまつわる「家族法」の基礎知識

本連載は、2017年12月20日刊行の書籍『知って役立つ! 家族の法律――相続・遺言・親子関係・成年後見』(クリエイツかもがわ)から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

知って役立つ! 家族の法律 相続・遺言・親子関係・成年後見

知って役立つ! 家族の法律 相続・遺言・親子関係・成年後見

長橋 晴男/著
浅野 則明/監修

クリエイツかもがわ

1テーマ見開き2頁×98項目+コラムで、家族のための身近な法律をわかりやすく解説。 「普通の市民」が、「普通の生活」をする上で、知っておきたい「家族法」の基礎知識が満載。 日常生活に密接に関係した法律。でも案外、…

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