増える「子連れ再婚」…ステップファミリーにまつわる法知識

結婚、離婚、親子、養子、扶養など、個人と家族に関する法律を対象とする「家族法」。私たちの日常生活と密接に関係した法律であり、その理解は欠かせません。本連載では、書籍『知って役立つ! 家族の法律――相続・遺言・親子関係・成年後見』(クリエイツかもがわ)より一部を抜粋し、結婚・離婚と親子関係にまつわる法律をわかりやすく解説します。

家族のあり方が多様化し、ステップファミリーは増加

◆多様化する家族①~血縁関係のない親族「ステップファミリー」

 

●増える離婚

 

婚姻件数:63万5,000組、婚姻率:5.1(人口1,000対)

離婚件数:22万6,000組、離婚率:1.81(人口1,000対)

※厚生労働省「人口動態統計2015年」

 

単純比較では、婚姻件数:離婚件数の比はほぼ3:1ですが、これは結婚した3組に1組が離婚しているということではありません。また、夫婦の一方あるいは両方が再婚であるのは17万組であり、婚姻全体の26.8%を占めています。親が離婚した未成年の子は22万9,000人、10.52(20歳未満人口1,000対)となっています。

 

●多様化する家族のあり方

 

ステップファミリーとは、離婚・再婚によって血縁関係のない親子関係が1組以上含まれる家族関係のことを言います。言い換えると、再婚する男女のどちらか(あるいは両方)に子どもがいる場合(すなわち、子連れ再婚)の家族のことです。

 

前婚が法律婚の場合も事実婚の場合もあります。また、離婚した場合と死別した場合があります。結婚・離婚・再婚については、さまざまなケースを取り上げていますが、ここでも少し考えてみましょう。

 

●厚労省調査

 

ちょっと古いですが、厚労省が2006年に発表した結果です。

 

(ア)離婚経験者が5年以内に再婚した割合(1997年〜2002年)

・男性……30% 女性……27%

 

(イ)婚姻(結婚)した男女のうちどちらかまたは両方が再婚だったケース

・25.3%(1980年の調査では12.7%)

・上に示したように2015年ではさらに増えて26.8%となっています。

・結婚する4組に1組が再婚だということです。

 

このうち何割が子連れ再婚だったかは明らかにされていませんが、再婚の割合が増えているということはステップファミリーも増えていると考えてよいでしょう。

 

●初婚家族との違い

 

初婚でも「生まれも育ちも違う」者同士が一緒に生活することになるのですから、戸惑うことが起きることは当然考えられます。再婚の場合はその可能性はもっと大きくなります。ましてや「子連れ再婚」となると、何も問題が発生しない方が珍しいと覚悟しておいた方がよいでしょう。

 

それでも結婚する当人同士は「自らの意思」で選択しますが、子どもは離婚も再婚も自分の意思で決めたことではないので、ストレスやトラウマがあるのが普通です。また、「生活習慣の違い」も大きな問題になります。

 

※「子連れ再婚」「ステップファミリー」については、わかりやすく役に立つ本が出版されていますので参考にしてください。

 

◆多様化する家族②~子は親の付属物ではありません

 

●ステップファミリー

 

日本では結婚の4組に1組が再婚と言われています。過去の結婚で子どもがいて、再婚で結ばれる家族を「ステップファミリー」と呼びます。ステップファミリーのステップ(step)は、接頭辞で、「継」という意味です。継父、継母、「ままはは」などの「継」です。

 

●さまざまな形

 

ステップファミリーにもさまざまな形があります。そして、それぞれに考えなければならない特有の事情(問題点)があります。これらは今回のテーマではありませんので、別の機会に譲ります。

 

(1)夫のみに子がある場合で、妻が初婚の場合と再婚である場合。

(2)妻のみに子がある場合で、夫が初婚の場合と再婚である場合。

(3)夫婦双方に子がある場合。

(4)(1)〜(3)で、元の配偶者と死別した場合と離婚した場合。

(5)(1)〜(3)で、法律婚であった場合と事実婚であった場合。

 

●養子縁組

 

※(1)(2)で、法律婚であった場合→再婚(法律婚)

 

このケースでは「婚姻届」だけ出して、「養子縁組届」を出していない方がよく見受けられます。この場合、夫の子は妻の子とはなりません。逆も同じです。一番誤解が多いケースと言えるでしょう。

 

意図して(意識的に)「養子縁組」しない場合はよいのですが、「親が結婚したのだから、子も当然親子」と思っていると後で問題が起きる場合があります。子が60代になってから気づいてあわてて「養子縁組」された実例がありました。

 

※(3)で、法律婚であった場合→再婚(法律婚)

 

夫の子は夫の子であり、妻の子は妻の子です。自動的に夫婦の子となるわけではありません。子が成人である場合、全員ではなく特定の子とのみ「養子縁組」される方もあります。

 

●離婚のとき

 

夫の姓を名乗っていた夫婦が離婚すると、子は夫の戸籍に残ります。元妻は結婚前の戸籍に戻るか新しい戸籍を作ります。

 

(1)子を母親の戸籍に入れるときは、家庭裁判所の許可が必要です(民法791条1項)。母親が親の戸籍に戻っている場合は新しく戸籍が作られます。

 

(2)元妻が新しい戸籍を作り、未成年の子の親権者になっているが、子は父親の戸籍に残っている場合。父親が再婚しようとすると「子が邪魔」になるときがあります。このときも(1)の手続きをします。子が15歳未満である場合は、法定代理人(親権者である母親)が手続きをします(民法791条3項)。

 

(3)子が成人である場合は「分籍」して自分だけの戸籍を作ることもできます。これにもいくつかのパターンがありますが、煩雑になりますので別の機会に譲りましょう。

親が再婚しても、子が姓を変えたくない場合の対処法

◆多様化する家族③~ステップファミリーの例

 

●ケース1……初婚の夫と子連れの再婚の妻

 

前園雄二さんは24歳、独身です。職場の先輩である市田朋子さんに一目惚れして猛アタックしました。朋子さんは3年前に夫と死別して、1年生の長女と4歳の二女を育てながら働いていました。朋子さんは32歳であり再婚する気はありませんでした。

 

しかし半年にわたる雄二さんの真剣でまじめな求婚と、二人の子どもが雄二さんになついていたことから、ついに再婚を決意しました。

 

それからが大変でした。8歳年上で二人の子連れであること、雄二さんは初婚であることから、雄二さんの親兄弟の大半は反対、朋子さんの母親も反対、職場の上司や関係者もほとんどが反対という中でまじめに付き合う二人に対して応援してくれる人も現れ、新学期に合わせて婚姻届を出し、反対していた関係者も出席して結婚式を挙げたのです。

 

長女の学校のことも考えて市田姓を選ぶことも考えましたが、話し合いの結果、前園姓を選びました。婚姻届と同時に養子縁組届も提出し、前園雄二、朋子夫妻と二人の子というステップファミリーが誕生しました。この養子縁組に家庭裁判所の許可は要りません(民法791条2項)。二人の子どもは15歳未満ですから、親権者である朋子さんが二人の子どもに代わって養子縁組届を出したのです(民法791条3項)。

 

●ケース2……養子縁組していなかった

 

大西恵一さんには前妻との間に、晴美さん(長女)と茂夫さん(長男)の二人の子があり、親権者として育てていました。その後、川田真由美さんと再婚し大西を名乗ることにしました。

 

再婚後、恵一さんは真由美さんと共同で住宅を購入し、4人で暮らしていました。住宅は持分各2分の1です。夫妻には長女利子さん、長男紀行さんが生まれ、やがて晴美さん、茂夫さんは独立していきました。紀行さんも独立しました。

 

利子さんが岸本正司さんと結婚したのを機に、大西恵一・真由美夫妻は長女夫妻と同居することにして引っ越しました。元の家はしばらくそのままにしていましたが、今は長男である大西茂夫さん夫妻が住んでいます。

 

このたび、その家を茂夫さんに贈与するということになり「相続時精算課税制度」を利用しようと思い、調べてみると真由美さんと茂夫さんは養子縁組していないことが分かりました。父恵一さんの持分である2分の1に対してはこの制度が使えますが、継母真由美さんの持分に対しては使えません。

 

真由美さんと茂夫さんが養子縁組すればこの制度を使うことができますが、贈与税対策のためだけに養子縁組するというのは考え物です。関係者でよく話し合って結論を出すべきでしょう。なお、大西恵一さんには長女が二人、長男が二人います。ステップファミリーの場合にはこんなことが起きます。

 

 

◆多様化する家族④~親の再婚で子が姓を変えたくないとき

 

●彼女は子連れ

 

上山篤史さんは鈴木聡美さんと結婚することになりました。彼は初婚ですが、聡美さんは再婚で8歳の息子浩平くんがいます。聡美さんは離婚して3年経っています。最近こんなケースが増えています。

 

二人は「上山」姓を選びました。戸籍は、筆頭者:上山篤史、配偶者:聡美となります。浩平くんは「婚姻により除籍」となった鈴木聡美さんを筆頭者とする戸籍に残ります。母が結婚しただけでは、子と母の配偶者とは法的な親子関係にならないのです。法的な親子関係になるには、上山篤史さんと鈴木浩平くんが「養子縁組」する必要があります。

 

●養子縁組で法的な親子に

 

「養子縁組」には、前提として、養親となる上山篤史さんと養子となる鈴木浩平くんの「合意」が必要です。浩平くんは15歳未満ですから、親権者である聡美さん(浩平くんの法定代理人)の「承諾」が必要です(民法797条1項)。未成年者を養子にするときは原則として家庭裁判所の許可が必要ですが、配偶者の子であればそれは不要です(民法798条)。

 

この場合、市役所などに「養子縁組届」を出すだけで済みます。これにより、筆頭者:上山篤史、配偶者:聡美、養子:浩平という戸籍ができます。浩平くんは、法的に「実子」と同じ扱いになります。

 

なお、浩平くんの実父との親子関係は消えません。相続権もそのままです。浩平くんには2人の父親がいることになります。

 

●「鈴木のままがいい」

 

浩平くんが15歳以上であれば、上山篤史さんとの養子縁組に親権者の「承諾」は不要です。当事者間の「合意」だけで届けを出せます。母の結婚には賛成の浩平くんが、自分は「鈴木のままがいい」と主張するとどうなるでしょう。養子は養親の姓を称することになっています。上山篤史さんと鈴木聡美さんが「上山」姓を選択し、篤史さんと養子縁組すれば浩平くんも「上山」姓にならざるを得ません。

 

●両親が「鈴木」姓になる方法

 

方法の一つは、上山篤史さんと鈴木聡美さんが「鈴木」姓を選択することです。養子縁組した浩平くんも「鈴木」のままです。戸籍は、筆頭者:鈴木聡美、長男:浩平、配偶者:篤史となります。そして浩平くんと篤史さんの欄に「養子縁組」した旨が記載されます。

 

もう一つは、鈴木聡美さんの両親が「鈴木」姓で健在の場合、まず上山篤史さんが鈴木聡美さんの両親と養子縁組して「鈴木篤史」になり、その上で婚姻届と養子縁組届を出す方法です。これは、筆頭者:鈴木篤史、配偶者:聡美、養子:浩平という戸籍になります。

 

●養子縁組しないという選択

 

もう一つは「養子縁組しない」という選択です。上山篤史さんと鈴木聡美さんが結婚して「上山」姓を選んだ場合、浩平くんは「鈴木」姓のまま元の戸籍に残ります。「家族」になっても篤史さんと浩平くんに親子関係はなく、「配偶者の子」すなわち姻族1親等です。この場合、篤史さんの相続だけを考えるなら、遺言書を書く、または死因贈与契約を結ぶという方法が考えられます。

 

 

長橋 晴男

長橋行政書士事務所

 

長橋行政書士事務所 特定行政書士
宅地建物取引士
相続コンサルタント

1948年生まれ。兵庫県朝来市(旧:朝来郡生野町)出身。立命館大学法学部卒業。憲法(社会保障と国家)専攻。

<職歴>
社団法人(現:公益社団法人)京都保健会勤務
 同法人理事、総務部長
長橋行政書士事務所開設
*相続・遺言など「家族法」関係を専門とする

<現在>
京都府行政書士会会員
 会報編集委員長、第3支部副支部長等歴任
一般社団法人コスモス成年後見サポートセンター会員
長橋行政書士事務所

著者紹介

連載行政書士がわかりやすく解説!結婚・離婚にまつわる「家族法」の基礎知識

本連載は、2017年12月20日刊行の書籍『知って役立つ! 家族の法律――相続・遺言・親子関係・成年後見』(クリエイツかもがわ)から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

知って役立つ! 家族の法律 相続・遺言・親子関係・成年後見

知って役立つ! 家族の法律 相続・遺言・親子関係・成年後見

長橋 晴男/著
浅野 則明/監修

クリエイツかもがわ

1テーマ見開き2頁×98項目+コラムで、家族のための身近な法律をわかりやすく解説。 「普通の市民」が、「普通の生活」をする上で、知っておきたい「家族法」の基礎知識が満載。 日常生活に密接に関係した法律。でも案外、…

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