ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

今回のFOMCでは声明文から政策金利の据え置きを暗示していた「辛抱強くなる」との表現が削除された一方で、(経済状況次第ながら)利下げを示唆したと思われる「適切に行動する」との表現が見られます。FOMCが政策金利引き下げ方針に明確に舵を切ったと見られます。ただ、利下げ時期などを巡り煮詰まっていない部分もあるようです。

6月FOMC:市場予想通り政策金利を据え置くも、近い将来の利下げを示唆と市場は解釈

米連邦準備制度理事会(FRB)は2019年6月18、19両日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を市場予想通り2.25~2.50%のレンジで据え置きました。

 

ただ見通しの「不確実性」を指摘するなど、過去10年余りで初めて政策金利引き下げの準備があることを明確に示唆したことなどから、米国債利回りは低下しました。

どこに注目すべきか:FOMC、適切に行動、設備投資、米中交渉

今回のFOMCでは声明文から政策金利の据え置きを暗示していた「辛抱強くなる」との表現が削除された一方で、(経済状況次第ながら)利下げを示唆したと思われる「適切に行動する」との表現が見られます。FOMCが政策金利引き下げ方針に明確に舵を切ったと見られます。ただ、利下げ時期などを巡り煮詰まっていない部分もあるようです。

 

今回のFOMC声明文やパウエルFRB議長の記者会見をみると利下げへの準備を進めていることが伺われます。

 

資産を「守る」「増やす」「次世代に引き継ぐ」
ために必要な「学び」をご提供 >>カメハメハ倶楽部

 

例えば、声明文の表現を見ると、経済活動について、前回の声明文の表現である「着実なペース」から、今回は「緩やかなペース」に下方修正されています。より明確なのは企業の設備投資で、関連する指標は「軟調」と指摘しています。期待インフレ率も、前回の「低水準に留まる」から、「低下した」と表現を強めています。

 

最も明確なのは、冒頭で(2%近くのインフレ率と景気拡大を維持するために)「適切に行動する」と述べている点と思われます。

 

なお、パウエル議長は会見で、仮に金融緩和となれば、バランスシート政策を微調整する可能性にも言及しています。

 

このような変化を反映して、FOMC参加者の政策金利予想(19年末)は前回の「利上げもしくは据え置き」から、「利下げもしくは据え置きに」大きく変化しています(図表1参照)。しかも年内利下げを2回との予想が7名というのは、恐らく市場の想定よりやや多いと思われ、米国国債利回り低下のひとつの背景と見ています。

 

図表1:FOMC参加者の19年末までの政策金利予想 時点:前回2019年3月(左)、今回2019年6月(右) ※政策金利の変更の1回分を0.25%と仮定して、FOMC参加者が予想する政策金利の分布から利上げ、利下げなどの回数を表示 出所:FRBのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]FOMC参加者の19年末までの政策金利予想
時点:前回2019年3月(左)、今回2019年6月(右)
※政策金利の変更の1回分を0.25%と仮定して、FOMC参加者が予想する政策金利の分布から利上げ、利下げなどの回数を表示
出所:FRBのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

なお、政策金利の予想分布の解釈では中位数(この場合は据え置き)が便利なので使われることがありますが、今回の分布では適当でなく、「据え置き」と「2回引き下げ」のグループに分かれた点を踏まえた解釈が必要と思われます。

 

そこで疑問の1つに、何故据え置きが半分程度いるのに声明文などで利下げの方向が示されたかがあげられます。この点については議事要旨等で据え置きの理由を確認する必要はありますが、米中通商交渉の先行きが不透明な中、(交渉が更に悪化し)必要となれば利下げに賛成だが、今は様子を見たいという意味での据え置きなのかもしれません。

 

 

別の解釈は、来年の経済予想は前回から上方修正されたものもあるなど(図表2参照)、経済指標に目立った悪化がないことから今回は据え置きとした可能性があります。経済データ次第の条件付利下げ容認姿勢と解釈しています。

 

[図表]FOMC参加者の経済指標や長期政策金利の予想 時点:前回2019年3月(左)、今回2019年6月(右)、経済指標は20年予想 出所:FRBのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]FOMC参加者の経済指標や長期政策金利の予想
時点:前回2019年3月(左)、今回2019年6月(右)、経済指標は20年予想
出所:FRBのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『FOMC声明文「適切に行動する」…利下げ方向に舵』を参照)。

 

(2019年6月20日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【12/10開催】
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
―税務調査を録音することはできるか?

 

【12/10開催】
不動産「売買」と何が決定的に違うのか?
相続・事業承継対策の新常識「不動産M&A」とは

 

【12/11開催】
家賃収入はどうなる?節目を迎える不動産投資
“金利上昇局面”におけるアパートローンに
ついて元メガバンカー×不動産鑑定士が徹底検討

 

【12/12開催】
<富裕層のファミリーガバナンス>
相続対策としての財産管理と遺言書作成

 

【12/17開催】
中国経済×米中対立×台湾有事は何処へ
―「投資先としての中国」を改めて考える

 

 

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録