NY連銀が算出する12ヵ月後の米国景気後退確率指数が29.6%に達しました。確率自体は低く見えますが、この確率が過去30%を超えた時点から12ヵ月後に景気後退入りしているケースが多く、米国経済の先行きについては警戒する必要があると考えます。
米国の景気後退確率が上昇中
ニューヨーク(NY)連銀は12ヵ月後の米国景気後退確率を指数として毎月算出しています。このNY連銀米国景気後退確率指数(以下、景気後退確率)は、米国10年国債利回りと米国財務省証券3ヵ月物利回りとの長短金利差をもとに計算されています。図表1は、この景気後退確率と実際の米国景気後退期を比較したものです。ご覧の通り、足元の景気後退確率は、長短金利差の縮小/逆転を反映し29.6%まで大きく上昇しました。
![[図表1]NY連銀米国景気後退確率指数 月次、単位:%、期間:1960年1月~2020年5月 ※NY連銀景気後退確率指数は12ヶ月先の日付で表示 ※米国景気後退期はNBER(全米経済研究所)に基づく 出所:NBER、ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成](https://ggo.ismcdn.jp/mwimgs/2/4/500/img_2476680398dbad406d3def71a3282bf051846.jpg)
月次、単位:%、期間:1960年1月~2020年5月
※NY連銀景気後退確率指数は12ヶ月先の日付で表示
※米国景気後退期はNBER(全米経済研究所)に基づく
出所:NBER、ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
この景気後退確率が30%を超えると、実際12ヵ月後に景気後退入りしているケースが多かったことが分かります。図表2は、景気後退確率が30%を超えて上昇した時点から、実際12ヵ月後に景気後退入りしていたかを判定した表です。

期間:1960年1月~2020年5月
※景気後退確率が30%を超えた時点から12ヵ月後に景気後退入りしたかを判定。1978年11月、1989年6月、2006年8月は12ヵ月後に景気後退入りしていないが、その1-4ヵ月後に景気後退入りしたため「△」と判定
出所:NBER、ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
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図表のとおり、景気後退確率が30%を超えた過去8回のケースでは、その12ヵ月後に景気後退期に入っていたケースが4回ありました。残り4回のうち、3回は12ヵ月より1-4ヵ月遅れて景気後退期に入っていたので、精度としてはそれほど悪くない指標だと言えます。この景気後退確率が直近29.6%まで上昇したため、いよいよ警戒水域に入ったと考えられます。
今後の米中貿易戦争次第で景気後退入りが早まる可能性も
米国の長短金利差が足元で逆転した背景には、米中貿易戦争の激化があります。年初から4月にかけては、米中貿易協議が進展しているとの報道が相次いだことから、長短金利差は概ねプラスを維持していましたが、今年5月に米国が制裁関税第3弾を発動し、制裁関税第4弾の発動も示唆してからは、長短金利差が一気に逆転しました。
今月28日-29日の20カ国・地域(G20)首脳会議(大阪サミット)で米中合意がなされる可能性は低く、今後は米中貿易戦争がエスカレートするリスクも警戒する必要があります。仮に米中貿易戦争がエスカレートした場合、米国の景気後退期が想定よりも早く訪れる可能性もあるため、引き続き米国株式市場の先行きについては慎重なスタンスが求められると考えられます。
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米国株式投資戦略 ~米国景気後退確率が上昇~』を参照)。
(2019年6月18日)
田中純平
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト
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