権利関係が複雑…一般市場で売却できなかったが?
世の中には権利関係が複雑な物件がたくさんあります。
Sさんから「家を売りに出したのですが、なかなか売れないので何とかしてほしい」という相談のあった鎌倉市の物件も、そんな権利関係が複雑な一軒家でした。
この物件には、次の2つの問題点がありました。
1つ目は、Sさんが売却を予定している建物Aと、Sさんが別に所有している隣接地の建物Bが、登記簿上は1つの建物として登記されていること。2つ目は、隣接地の建物Bの一部が、売却予定の土地に越境してきていることでした。
そこで、私が最初に手をつけたのが権利関係の整理です。まず、登記上、売却する建物Aと、隣接地の別棟の建物Bを分断する登記をしました。次に、境界標の設置に合わせて、越境物(建物の一部)を将来是正するという合意書を作成。この合意書がないと、購入希望者が現れても住宅ローンが組めなくなるからです。
さらに、販売時にお客様に気に入っていただくために、内・外装をリフォーム。このとき、もともとの「和」の建築の良さや趣をそのまま活かす形でリフォームを実施しました。
当初は大手不動産会社でもなかなか一般市場で売却できなかった物件でしたが、権利関係をクリアにし、諸条件を調整し、リフォームをしたことによって、多数の問い合わせをいただき、無事に売却することができたのです。
どこにでも、現状のままでは売れない不動産はあります。特に、権利関係が複雑な不動産は、そのままではなかなか買い手がつかないケースがほとんどです。しかし、何かを少し手を加えるだけで、売却することができようになることは多々あるのです。その「何か」を、不動産会社の営業マンが知っているかどうか。そして、その「何か」をやるかどうか。それが売れる物件と売れない物件の大きな違いなのです。
【ポイント】
・権利関係が複雑でも、きちんと整理すれば売れる!
「マンション買取会社」に相談するという選択肢も
売りにくい物件の一つに、エレベーターのないマンションの上層階があります。若い人でも階段で4階まで上がるのは大変なのに、高齢の方となれば、その大変さは想像以上のものがあるでしょう。
東京都小金井市のKさんから、「母から相続したエレベーターのないマンションの4階の部屋をどうにかしたい」という相談を受けたのは、今から2年前のこと。Kさんは別のマンションに住んでいて、相続したマンションに住むつもりはないので、誰かに貸すか、売却するかしたいということでした。
前述したように、エレベーターのないマンションの上層階は人気がなく、売却するのが難しいため、難航が予想されました。また、貸し出す場合は、築36年の物件ということもあって、リフォーム費用が高額になるという問題がありました。
このような問題点を明らかにしたうえで、Kさんと打ち合わせを行った結果、Kさんは賃貸に出した場合の空室リスクとリフォーム費用の回収時期についての懸念から、売却を選択されたのです。
ただし、まだ室内に大量の家具等があったため、遺品整理を行った後に売却活動を進めることで合意しました。家具がある状態で売却活動をしてしまうと、家具の影響で部屋が狭く見えてしまう可能性があったからです。
遺品整理が完了した後、私は一般市場に販売する前に、独自のルートを駆使して、好条件を提示してくれそうなマンション買取会社を見つけ、そこに打診して購入可能金額のヒアリングを行いました。
一般市場に販売した後に、マンション買取会社に購入希望金額のヒアリングを行っても、売り出し価格以上にはならないため、事前にヒアリングを行ったのです。
その後、一般市場への販売を行う前に、再度Kさんと打ち合わせを行い、マンション買取会社から提示された条件(1800万円)を伝えました。さらに、一般市場で販売する場合のリフォーム費用を考慮した査定金額は、マンション買取会社から提示された金額とほぼ同じであることも伝えました。
そして、いついくらで売れるかわからない一般市場での販売を開始するか、マンション買取会社に売却するかを判断してもらった結果、Kさんはマンション買取会社に売却するという判断をされたのです。
このケースのポイントは、一般市場に出す前にマンション買取会社に打診したことです。誰しも不動産を高く売却したいと思うのは当然のこと。しかし、焦ってすぐに情報を公開すればいいというものではありません。少しでも高い金額で、良い条件で売却をするには、焦らず、市場を調べることが重要なのです。
【ポイント】
・マンション買取会社に打診する場合は、一般市場に出す前に行うこと!