雇用者数は7.5万人増
雇用情勢は緩やかに鈍化方向へ
■2019年5月の非農業部門雇用者数は前月比7.5万人増となり、ブルームバーグ集計による市場予想(17.5万人増)を大きく下回りました。また、3、4月分も下方修正されました。
■米中関係悪化などに対する不透明感から新規の雇用が抑制されたとみられ、貿易摩擦の影響を受けやすい製造業だけでなく、サービスなど非製造業の減少が目立ちました。ただし、他の指標は比較的堅調であり、雇用情勢は緩やかに鈍化しているものの急激に悪化しているわけではなさそうです。
非農業部門雇用者数の推移(前月比増減)
失業率は横ばい
賃金の伸びは鈍化
■5月の失業率は前月比横ばいの3.6%となりました。
■一方、賃金は前年同月比3.1%増と4月分の同3.2%増から伸び率が鈍化しました。前月比は0.2%増と前月と同じ伸びでした。
■米国の企業業績の伸びが鈍化すると予想される中、19年の賃金上昇ペースも緩やかになると見られます。
賃金上昇率と失業率
FRBによる早期利下げ観測が高まる
■7日の米国市場では、雇用統計の結果を受けて米連邦準備制度理事会(FRB)の早期利下げ観測が一段と高まり、米長期金利が低下し為替は円高・ドル安が進みました。パウエルFRB議長が4日に「米中通商問題による景気への下方リスクが高まった時点でFRBが予防的に動く準備がある」と、利下げの可能性を示唆していることも踏まえ、7月に予防的利下げが実施されるものと見られます。一方、FRBによる利下げ見通しは既に市場に相当程度織り込まれているため、日米金利差縮小による一層の円高進行は限定的と見られます。
■米政府がメキシコへの追加関税引き上げを見送り、貿易摩擦激化への不透明感がやや和らいだものの、米中の対立は長期化することが予想されるため、米中交渉の行方には引き続き注視が必要です。
(2019年6月10日)
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