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豪中銀の今回の利下げは、事前に当局から明確な示唆があったためサプライズは限定的です。ただ、今回の声明には次回以降の金融政策の方針について、理事会のコメントは市場を注意深く見守るという(前回同様の)文言にとどまっています。しかし、今回の利下げの背景を考えると、再度の利下げの可能性も見込まれます。

豪中銀:市場予想通り、政策金利を0.25%引き下げ1.25%へ

オーストラリア(豪)準備銀行(中央銀行)は2019年6月4日、主要政策金利のオフィシャル・キャッシュレートを0.25ポイント引き下げて1.25%としました。豪中銀の利下げは16年8月以来2年9ヵ月ぶりです(図表1参照)。

 

[図表1]豪政策金利と豪ドル(対米ドル)の推移 日次:2016年6月6日~2019年6月4日(日本時間正午) 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]豪政策金利と豪ドル(対米ドル)の推移
日次:2016年6月6日~2019年6月4日(日本時間正午)
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

豪中銀のロウ総裁は先月に講演で、今回の理事会で利下げを検討する方針を示唆していました。

どこに注目すべきか:豪GDP、豪インフレ率、住宅市場、中国人投資

豪中銀の今回の利下げは、事前に当局から明確な示唆があったためサプライズは限定的です。ただ、今回の声明には次回以降の金融政策の方針について、理事会のコメントは市場を注意深く見守るという(前回同様の)文言にとどまっています。しかし、今回の利下げの背景を考えると、再度の利下げの可能性も見込まれます。

 

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まず今後1~2年程度までの動向として豪GDP(国内総生産)成長率を見ると、豪中銀は今年と来年の成長見通しを2.75%とし、前回の理事会(5月)時点の見通しを維持しました。しかし、グローバル経済のリスクについては、貿易紛争を背景に、今回下向きであることを明確にしています。

 

インフレ率については4月後半に公表された1-3月期消費者物価指数(CPI)の前年同期比1.3%が前回も、今回もCPIとしては最新の数字です。その中で、豪中銀のインフレ率見通しとして、19年が1.75%、20年が2%を今回も維持しました。しかし、1.75%に向けた年内のインフレ率上昇の要因に原油価格の上昇を挙げています。今後の動向次第ながら、足元の原油価格に、豪CPIを上昇させる力があるのか、やや疑問もあります。

 

声明で明確に指摘されている利下げ要因は、以前力強かった労働市場に弱さの兆しが顕在化しつつあることと、住宅価格の下落により家計消費の見通しが悪化しているためと説明しています(図表2参照)。

 

[図表2]豪GDP(国内総生産)と住宅価格指数の推移 四半期、期間:1980年1-3月期~2019年1-3月期、住宅価格は前月比 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]豪GDP(国内総生産)と住宅価格指数の推移
四半期、期間:1980年1-3月期~2019年1-3月期、住宅価格は前月比
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

特に気になるのは住宅価格の下落です。そこで長期的に豪経済成長と住宅市場(価格)動向を振り返ると、豪経済は通常の景気後退の定義(2四半期連続のマイナス成長)を経験していない期間が27年超となり、経済成長率は91年を最後にプラス成長を維持しています(図表2参照)。

 

 

豪経済が80年以降で明確にマイナス成長となった90~91年の頃、並びに83年頃の2回の局面では、住宅価格の伸び率も大幅なマイナスとなっています。豪経済に限らず、住宅市場が不振となると、家具や家財などの消費停滞も伴うため、経済に強い下押し圧力がかかる傾向が見られます。

 

現在の豪住宅価格も大幅に下落しています。背景としては景気の先行きに不透明感がある一方で、過去の住宅供給増の反動、外国人投資家の需要減少(印紙税増税による住宅価格抑制策や中国の海外投資減少)など住宅市場固有の下落要因もあり、経済成長と住宅価格の足元の開きがある程度説明されるかもしれませんが、それでも先行きに注意は必要と見ています。再度の利下げ観測にある程度の説得力があるように思われます。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『豪中銀利下げ、今回のサプライズは限定的…再度利下げもあるか』を参照)。

 

 

(2019年6月4日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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