市場が米利下げを織り込む動き、鮮明に

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

緊張高まる米中通商協議が、メキシコに飛び火する様相を見せたことで、景気への影響が懸念され米国債利回りや政策金利の将来の動向を反映するFF金利先物レートが低下しています。レートの低下には様々な要因がある中、今回は米連邦公開市場委員会(FOMC)主要メンバーの発言に注目しました。

米国FF先物市場:年内2回(1回25bpと仮定)の利下げを織り込む動き

トランプ大統領がメキシコからの全輸入品への関税賦課を示唆したことや、米金融当局の発言などを背景に、米政策金利の動向を反映するフェデラルファンド(FF)金利先物が年内利下げの確信度合いを高めました(図表1参照)。

 

[図表1]フェデラルファンド(FF)先物レートの推移 日次:2018年5月31日~2019年5月31日、FF先物価格のインプライドレート 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]フェデラルファンド(FF)先物レートの推移
日次:2018年5月31日~2019年5月31日、FF先物価格のインプライドレート
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

実効FF金利が2.39%程度であるのに対し、FF金利先物による今年末のインプライドレートは5月31日に1.855%となり、年末までに25bpの利下げの約2回分が織り込まれています。

どこに注目すべきか:FF金利先物、クラリダ副議長、NY連銀総裁

緊張高まる米中通商協議が、メキシコに飛び火する様相を見せたことで、景気への影響が懸念され、株式市場は大幅に下落し、米国債利回りや政策金利の将来の動向を反映するFF金利先物レートが低下しています。このレートの低下には様々な要因がある中で、今回は米連邦公開市場委員会(FOMC)主要メンバーの発言に注目しました。

 

 

最初に注目したのは米連邦準備制度理事会(FRB)のクラリダ副議長です。30日にニューヨーク経済クラブの講演などで、景気見通しへの下振れリスクを認識すれば、一段と緩和的な金融政策を必要とする要因になるだろうといった内容を述べました。

 

クラリダ副議長は5月月初のインタビューでは、米国のインフレ率低下は一過性で、利下げの必要性に否定的でした。FOMC参加者の中には利下げに積極的な声もありますが、最近まで米金融政策は年内据え置きが当局の基本的なコンセンサスであっただけに、クラリダ副議長の発言が市場の反応を引き起こしたと見られます。またクラリダ副議長のFOMC内での理論的支柱としての立場も影響した可能性があります。

 

 

もう一つ注目したのはニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁です。31日のウィリアムズ総裁の講演では、公表された原稿でも、米経済や金融政策の短期的な見通しについての発言は見られません。講演はゼロ金利制約における過去の金融政策や論文のレビューが主な内容です。それでも想像力で現在の市場環境に当てはめれば、金融緩和を示唆したとも考えられ、金融政策を反映しやすい2年セクター利回りの大幅低下による利回り格差の拡大という足元の傾向とやや異なる動きが見られました(図表2参照)。

 

[図表2]米国国債の利回り格差の推移 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]米国国債の利回り格差の推移
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

例えば、ウィリアムズ総裁はバーナンキ元FRB議長らのペーパーを参照してデフレないし深刻な景気低迷のリスクが生じた場合には短期金利を積極的に引き下げるべきと述べています。また、ゼロ金利制約に直面する状況では中央銀行による債券購入プログラムは従来の金利による金融政策を補完できると擁護しています。

 

FRBはマイナス金利導入に否定的です。仮に米国が深刻な景気低迷に直面した場合、金利引き下げ余地が限られるため、利下げに消極的との見方もあります。今回のウィリアムズ総裁はマイナス金利には言及していませんし、その準備があるようには思えません。ただ、ゼロ金利制約があっても、短期金利を積極的に引き下げるべきという姿勢は、市場に響いたように思われます。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『市場が米利下げを織り込む動き、鮮明に』を参照)。

 

 

(2019年6月3日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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