
土地と建物を一体で購入した場合、建物に関する消費税や減価償却の計算が必要になるため、土地と建物を分けて帳簿に記載する必要があります。購入した側からすれば、建物部分の金額が大きいほど消費税の仕入控除を多くでき、減価償却費の金額も多めに計上できるため、建物部分の割合を大きくしたいところです。今回は、不動産売買と税務に関連して、売買契約書に記載された金額とは異なる金額を建物の帳簿価額とした結果、税務調査で指摘された事例(平成30年2月7日裁決)を、相続税やその税務調査の実態に詳しい、税理士の服部誠が紹介します。
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不動産売買に関連する税務調査が入るまでの事実関係
・不動産の管理運営業を営むA社は、賃貸用の土地と建物を競争入札で落札した。
・入札の際に受け取った入札結果通知書に記された建物の価格は「0円」で、落札価格の全額は土地の価格と記載されていた。
・その後に締結された売買契約書でも、全額が土地代と記載され、建物は「0円」とされたままであった。
・A社はこの物件に関して、土地の取得割合を25%、建物の取得割合を75%として帳簿に計上し、その価額をもとに、建物の減価償却費を経費として法人税の申告を、建物の取得価格を課税仕入れにかかる支払対価の額として消費税の申告を行った。
・税務調査が行われ、税務署は建物の取得価額は売買契約書に記載された建物の価格によるべきとして、法人税と消費税の更正処分を行った。
・税務署の処分に納得がいかないA社は、国税不服審判所に審査請求を行った。
A社の主張
・建物の価額が「0円」ということは入札の時点では一切開示されておらず、建物の売買価格が「0円」であることを了解して入札したわけではない。
・入札結果通知書で土地と建物の金額を知り、売り主に対して「建物の売買価格が0円であることは不合理ではないか」と質問をしたものの、何の回答も得られなかった。
・契約書の価格設定は不合理なものであり、税務上の売買価額は契約書の金額によらない「特段の事情」がある。
国税不服審判所の判断
・A社は、契約内容に合意できない場合には契約を締結しないことで落札の効力を失わせることができたにもかかわらず、契約を締結したと判断できる。
・その価格は、不動産鑑定士が専門的な知見に基づいて作成した不動産鑑定書によって決定したものであり、決定の経緯に不自然な点は見当たらない。
・売買契約書で土地と建物それぞれの価格が記載されているときには、故意に実体と異なる内容を契約書に表示したなどの特段の事情が認められない限り、契約書の記載内容どおりに契約が成立したものと認められる。
以上のことから、国税不服審判所は税務署の主張を支持しました。
A社が、建物の価格が最終的に「0円」とすることを認識したうえで売買契約を締結している点も、審判所の判断の大きなポイントになっているものと思われます。
契約書の内容を変更するかたちでの税務処理は難しい
今回の事例では、収益物件の建物であり、取得後も家賃収入を得られることを考えると、建物の価額が「0円」というのは確かに不合理とも思われます。ただ、売買契約書に記載された内容の効力はとても強く、税務上の処理でそれを変更するのは難しいのが現実です。
従って、売買契約の内容に疑問を感じた場合には、契約の時点でしっかりと交渉し、お互いが納得のいく内容で契約すべきと考えます。
服部 誠
税理士法人レガート 代表社員・税理士
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